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The Tokyo Locals 『Shake Your Hips』/ Mods Mayday Japan 2019

SHAKE YOUR HIPS

1980年代の終わりに伝説的なMODSバンドThe HaiRのボーカリストとして現れ、その後実兄ギムラ没後の東京スカパラダイスオーケストラのボーカルを務めたLui Bluesface (A.K.A杉村ルイ)。これまでセルクルルージュでは、何回か紹介をしているアーチストだ。
結成以来10年の時を経て、Lui率いるThe Tokyo Localsが、遂にデビューアルバムを、LuiのレーベルLocal Production Recordsよりリリースする。
オリジナル1曲を含む収録曲には、ブルーズを中心に、ガーシュウィンやキャブ・キャロウェイのクラシックナンバーからジェームス・ブラウンのR&Bナンバーまで、これまでLuiが演奏してきたルーツミュージックが凝縮されている。
レコーディングには、塚本功(ギター/元ピラニアンズ)、清水一平(ギター・/Soulcrap)、HIROKING(ブルースハープ)などのオリジナルメンバーに加えて、昨年Local Production Recordsからデビューアルバム『Blue Stocking』をリリースしたNatsuko (Vocal, Blues harp)と、盲目のブギウギピアニストジョニーが参加している。
レコーディング・ディレクターは、Taiki Nakamoto (Soulcrap)。オープンリールで録音し、60年代の機材を駆使して、細部まで徹底してこだわったヴィンテージな感触のサウンドを作り上げた。
アルバムジャケットの写真は、ジョー・ストラマー(The Clash)公認のフォトグラファー菊地昇。インナーブックレットには、アルゼンチンのアーティスティックな女性フォトグラファー、セレステ・ウレアーガが撮影したLuiの写真。いずれもThe Tokyo Localsに相応しい、Rudyな写真である。
新元号になって1ヶ月後の6月1日にリリースされる『Shak Your Hips』は、30年間日本の稀有なR&Bシンガーとして異才を放ってきたLui Bluesfaceの音楽的集大成であり、強力なメンバーとスタッフによって構築された、新たな時代に挑む全ての魂の挑戦者達に捧げる音楽的ガイダンスである。

photo by
Sho “Cool” Kikuchi

『Shake Your Hips』収録曲。
1. Shake your Hips
アルバムやイベントタイトルにも使っている1966年スリム・ハーポによるブギナンバー。ローリング・ストーンズが『メインストリートのならず者』でもカバーしている。The Tokyo Localsのバージョンは、ストーンズよりもさらに高速なブギにチューンナップされている。
2. Okie Dokie Stomp /Roll ‘em Pete
1954年クラレンス・ゲートマウス・ブラウンによるインストJive「 Okie Dokie Stomp」から、1939年ジョー・ターナーによるJumpナンバー「Roll ‘em Pete」へのメドレー。
3. And I Do Just What I Want
1960年ジェームス・ブラウンのシングル『Bells』B面。Luiが長年歌ってる強力なダンスR&Bチューン。
4. Don’t Start Me Talkin’
1955年ソニー・ボーイ・ウイリアムソンのブルーズナンバー。オリジナルレコーディングには、マディ・ウォーターズや、ウイリー・ディクソンが参加。
5. They Can’t Take That Away For Me
ガーシュウインが、1937年フレッド・アステア主演『Shall We Dance』の為に書き下ろしたボーカルナンバー。アルバムではLuiとNatsukoのツインボーカルが聴ける。
6. My Babe
1955年ウイリー・ディクソンによる、誰もが一度は耳にしたことのあるお馴染みのブルーズナンバー。ライブでのアンコールに使われる事が多いナンバー。
7. Watch Yourself
1970年ブルーズ・ギタリスト、バディ・ガイのファンキーブルーズチューン。
8. Wang Dang Doodle
1961年ハウリン・ウルフ、1966年ココ・テイラーがリリースした酒場のブルーズ的なチューン。デビューアルバム『Blue Stocking』で同曲をカバーしたNatsukoが参加。
9. Minnie The Moocher
1931年リリースされたキャブ・キャロウェイの代表曲。オーケストラ楽曲を、バンドアンサンブルで再現している。
10. Lime House Blues
1920年代に作られたと思われるインストJive チューン。デューク・エリントン、ルイ・アームストロング、ジャンゴ・ラインハルトなど、名だたる巨人が録音しているスタンダードナンバー。
11. One More Love
アルバム唯一のオリジナル曲。
ソングライターとしてのLuiの実力を、聞いて頂きたいグルーヴ感溢れる1曲。

Photo by Celeste Urreaga

以下はLuiからリスナーの皆様へのメッセージである。

混迷を極める時代の変革期の真っ只中に、普遍的大衆性を兼ね備えたブルーズを主軸としたこのファーストアルバム、『Shake Your Hips』を世に送り出す事ができたことを、何よりも嬉しく誇らしく感じる。
卓越したセンスと個性を持つミュージシャン達の出音や演奏へのこだわり、そして協力スタジオ、録音場所提供者、エンジニア達、機材やアイデア提供を施してくれた、多くの優れた表現者達の発想や閃きの数々。
そして何より、最後まで決して諦める事なく不屈の精神で録音、再録、ミックス、マスタリングに莫大な時間を割き、この作品を世に放つ為に力を惜しむ事無く尽力してくれたTaiki Nakamoto (Soulcrap, GREEN UNION RECORDS)に、絶大なる信頼と敬意を払い感謝を述べたいと思う。

思えば様々な形で、ブルーズをはじめとするジャマイカ音楽、数々のレベルミュージック、ストリートミュージックのグルーブやビートへの表現の熱き想いと可能性に研鑽を重ね、オリジナルを乱造し、挑戦的アイデアを生み、構想、再編と挫折を繰り返してきた。
そして現メンバーとの出会いから再チャレンジと、このアルバムを築き上げるに至るまでの年月の経過には、簡単には筆舌に尽くし難く、紆余曲折を介し様々な道筋を経てきているのは、勿論言うまでもない。
しかし、バンドを結成してから一つの節目にさしかかる10年の歳月を経ようとする今、結成当時は思いもしなかった自身のルーツでもある初期衝動的R&B的解釈と表現アプローチや、オリジナル曲をも含めたあらゆる時代のブルーズミュージックを、国境や文化、様式美や時代を越え、ここまで見事に幅広く表現するに至る事になろうとは、正直想像だにしなかった。

歴代の名曲を演奏再現、再構築し、古の良き時代に思いを寄せ想像してみてわかる事は、下世話で猥雑で卑猥な街頭の風景や暗雲漂う時代背景、そこに繰り広げられる数々の人間ドラマと様々な人生、駆け引きや、騙し合い、裏切り、希望や絶望、泣き、笑い、悲しみ…etcだ。
日々生死の淵に直面する人々が、自由と愛と粋を胸にどう力強く貫き生きたのか、社会最底辺の路地裏に巣食う愛すべき天使や天才達が織り成す事実を基とした、果てしなき等身大の大衆の一大短編叙事詩であると解釈している。
そしてブルーズのような大衆音楽こそ、偉大な先人達の知恵と知識と教訓の伝承であり、この混迷の時代を生きる人々にとって絶対的に必要なガイダンスとなり、回答や打開策への手がかりへと導く道しるべになると言えるのではないだろうか?

この『Shake Your Hips』には、Local Production Recordsのファーストタイトル『Blue Stocking』でおなじみのシンガー兼ブルーズハーピストのNatsukoと、Boogie Woogieでも有名な盲目のRock’n Roll PinanistのJohnnyが、ゲストとして参加してくれた。
Wood BassにTone-ero、そしてElectric BassにMahという全くスタイルの異なるBass Playerの献身的、情熱的サポートも含めて、この4人の協力なくしては決して上りつめる事は不可能であった巓であった事はまぎれもない事実であり、心より感謝をしている。

言うなれば、果てしなき夜明けへと続く夜のいばらの山道を選ぶ、志を共にする全ての美しき魂の挑戦者達に、このアルバムを聴いてもらいたい。
The Tokyo Localsが自信を持ってお届けするファーストアルバム『Shake Your Hips』を、様々な地位や場所に生き、日々怒りや憤りを感じながらも、それでもなお良き世界を築き上げようと、粘り強く努力し生き暮らす全ての人々の人生に捧げたい。

Lui Bluesface (The Tokyo Locals)

NATSUKO『BLUE STOCKING』

The Tokyo Locals
Lui Bluesface (Vo)、塚本功(Guitar),
清水一平(Guitar/)、HIROKING(Blues Harp)
長谷川ナオヤ(Drums), MAH(E Bass), Tone-ero(Wood Bass)
+ゲスト/ Natsuko(Vo, Blues Harp), Johnny(Piano)

『Shake Your Hips』The Tokyo Locals
©Local Production Records LPR-0002

¥2,500+税
2019年6月1日より全国主要レコード店
及びAmazon,Ready Steady Go! Official Online Store
にて、発売予定。

The Tokyo Locals リリースライブスケジュール

5/18 東京MODS MAYDAY @新宿LOFT
5/21 Radical Music Network SP2019春/ Gaz Mayall Japan tour
@下北沢ベースメントバー
5/25 福岡 MODS MAYDAY @Kieth Flack
6/2 東京新宿 DU CAFE アルバムリリース視聴会イベント
6/6 アルバムリリース FREE LIVE @渋谷THE ROOM
6/22 アルバムリリースパーティ/UP ON THE ROOF with Soulcrap  @三軒茶屋a-bridge

そして今年のMODS Mayday JAPAN2019
MODS MAYDAYも、毎年ご紹介しているが、今年はThe Tokyo Locals,Natsukoの出演はいつも通りだが、ロンドンからギャズ・メイオールが来日し、MODS MAYDAYでは1987年以来となるDJをする予定である。

以下はオーガナイザー黒田マナブからのメッセージ。

39回目を迎える2019年今年のMODS MAYDAY JAPANのテーマは「DO THE SKA」MODSが愛したSKA !!。

豪華なバンド達に加えDJにもCLUB SKAや東京ロンドン化計画、VERSION CITYなどからゲストDJを招き、MODSシーンでも人気のDJ関口弘、佐藤志朗、Maru、uCjimaらが共演。

60年代イギリスでのMODSとSKAミュージックの関係, 80年代のMODSリバイバルと2toneの関係、その後のスカフレイムスが初めてMODS MAYDAYに出演した頃の東京MODSシーンとSKAの関係、GAZがMODS MAYDAYにLAUREL AITKENとPATATO 5で出演した1987年のMODS MAYDAY at INK 芝浦の話しなどなど、また現在のSKAシーンとMODSシーンの関係を含め、改めて今のSKAシーンやMODSシーンに集まる人たちへ色々と伝えたい!!。
そんな、思いを今年のMODS MAYDAYの会場で感じてもらえたら、最高に嬉しいです。
そして、楽しみに待っていてください!!

2019.5.18 (sat)
OPEN & START 18:00 (Allnight)
at SHINJUKU LOFT

TICKET : ¥5,000(D別)
DOOR : ¥5,500(D別)


SKA FLAMES/Blue Beat Players/THE FAVE RAVES/THE TOKYO LOCALS/RUDE BONES/Motel’s Sofa/Soulcrap/Natsuko & Johnny/
THE AUTOCRATICS/Le Virginie/NERVOUS HEARTS/THE RICOTTES/dirty bucks feat.peteracco/The Steed Hooves (Opening Act)


GAZ MAYALL/ピーター・バラカン/大貫憲章/CLUB SKA/東京ロンドン化計画/Version City/
稲葉達哉/Daddy-0-Nov(Back From The Grave,Radio Underground)/藤井悟(CARIBBEAN DANDY)/DJ HOLIDAY/
関口弘(FRATHOP Records)/momo/TXAKO(JAPONICUS / CARIBBEAN DANDY)/川野正雄(Local Production Records)/堀井康
佐藤志朗(FACING FACTS)/Maru(Modern Records)/寺島英知郎/加藤直樹/Jaga b/福田俊介/末續哲玄<s.t.g.>/Rei Ishii(The Numbers!)/
uCjima(NIGHT FOX CLUB)/ヒラノツヨシ(BLAST JAMS!!)/黒田マナブ “K.Dove”

Ready Steady Go! Mods Mayday コラボレーショントートバッグ
Ready Steady Go! Mods Mayday コラボレーショントートバッグ ¥2,000(in tax)

会場では、恒例となりつつあるReady Steady Go!と、Mods Maydayのコラボレーショントートバッグ(¥2,000 in tax)や、Ready Steady Go!メイドのThe Tokyo Locals Tシャツ(¥3,000 in tax)、『Shake Your Hips』先行発売(会場限定特別価格¥2,500 in tax)を販売致します。
またThe Tokyo LocalsのCDとTシャツを同時お買い上げの方は、特別価格¥5,000(in tax)で、販売致します。

The Tokyo Locals Tシャツby Ready Steady Go!

CINEMA DISCUSSION-26/『NORTHERN SOUL』今蘇るノーザンソウルシーンの真実

新作映画を複数の視点からとらえ、映画評論の新しい手法を考えようとしてスタートしたセルクル・ルージュのシネマ・ディスカッション。
第26回は、60年代のロンドンを描いた『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ』に続いて、70年代英国北部の音楽シーンに熱狂する若者達を描いた『ノーザン・ソウル』です。
前回のシネマ・ディスカッションでは、60年代英国のモッズシーンからスウィンギング・ロンドンの流れをドキュメンタリーで辿りましたが、この『ノーザン・ソウル』は、『さらば青春の光』や、『トレイン・スポッティング』の系譜になる音楽+青春の英国らしいドラマ作品です。
製作年度は2014年。イベント上映はありましたが、5年越しの日本正式上映となります。
監督はエレイン・コンスタンティン。ノーザン・ソウルシーンには後追い世代ですが、細部まで凝った演出をしています。
今回のディスカッションメンバーは、映画評論家の川口敦子と、川野正雄の2名です。

© 2014 Stubborn Heart Films ( Heart Of Soul Productions) Limited All Rights Reserved.

敦子(以下A):『ノーザン・ソウル』はタイトルにも掲げられた英国60年代後半から70年代にかけてのユースカルチャーを軸にしてますが、モッズといえばの川野さんはこの北部イングランドのワーキングクラスの白人青少年が夢中になったアメリカのレアなソウル音楽探しとダンス、ファッションをからめたサブカルチャーとの繋がりとかにも興味をもってらしたの?

川野(以下K):英国では60年代後半になると、モッズの進化系でノーザンソウルのムーヴメントが起きたのですが、自分もモッズへの関心の延長線上にノーザンソウルがありました。初期のモータウンサウンドがモッズ的なソウルミュージックとすると、その辺の音楽がファンクへと変化していく過程のは境期にあたる1967~1974年くらいのファンキーソウル的なサウンドを、80年代後半DJをやっていた時代に、必死に探していました。
80年代後半は、英国でレアグルーヴブームが起き、ノーザンソウルをよりファンキーにした70年代中期のブラックミュージックが、一大ムーヴメントとなったのですが、自分もその影響がありました。
その時代はノーザンソウルというくくりで、レコードを探していたわけではないのですが、結果的に今見るとノーザンソウルのレコードが多く手元にあります。
またその頃READY STEADY GO!で輸入していた英国のDUFFER OF ST GEORGEは、映画『ノーザン・ソウル』に出てくるような70’sスタイルで、そちらも当時は必死に買っていました。
8つボタンのダブルのスーツ、ニットのレターカーディガン、スポーティなウインドブレーカー、ショート丈のレザージャケット、プレスの効いたフレアーのパンツなどですね。
でも当時の自分この映画に描かれているようなノーザンソウルの知識はなく、米国のサザンソウルに対峙する意味合いで、デトロイトやシカゴなど米国北部のソウルをノーザンソウルと解釈していました。
でもこの映画に描かれているノーザンソウル=原産地ではなく英国北部発祥のソウルムーヴメントが、真の姿なんですよね。

© 2014 Stubborn Heart Films ( Heart Of Soul Productions) Limited All Rights Reserved.

A:無知の強味でいっちゃいますがあのバギーパンツってボウイの「ヤング・アメリカンズ」の時のスタイルとも通じてるみたいに見えるけど、アメリカのソウルだし、影響関係があるのかなあ、なんて思ったりもしたのですが・・・。

K:時代的に「ヤング・アメリカンズ」と被りますよね。先生のファッションがまんまでしたね(笑)。ボウイも元々モッズですから、当時ノーザンソウルは聞いていたと思います。「ヤング・アメリカンズ」のソウルの世界感は異なりますが、「Knock on wood」のカバーレコーディングなどで、ヴィンテージソウルへのリスペクト感は強いですね。
モッズの時代から、英国の若者の米国ブラックミュージックへの憧憬は、奥が深く、それがノーザンソウルへとつながっていますね。
60年代にモッズだった人達は、そのままブラックミュージックの進化と共にノーザンソウル的なサウンドに流れて行ったと思うのですが、この映画の主人公のように、70年代になってノーザンソウルを入り口にして、音楽に入って行った人も少なからずいるのではないかと思います。
なので、この頃のシーンは、ハイブリッドなジェネレーションで構成されていたと推察しています。
映画の中に出てくる若い子達がレコードを買いにアメリカ行きたいというくだりは、単純なんだけど、その気持ちはよくわかります。実際当時からレアな7インチシングルは、すごく高額で取引されていたようです。少し上の世代の人達は、どんどんアメリカにレコードハンティングしに行っていたのではないでしょうか。

© 2014 Stubborn Heart Films ( Heart Of Soul Productions) Limited All Rights Reserved.

A:監督のエレイン・コンスタンティンは90年代の若い子たちをフィーチャーした写真で注目されフェイスやヴォーグで活躍、パルコのコマーシャルを撮ったりもしていたそうですが、ランカシャーで過ごした10代の頃にアメリカのソウルに夢中になりはしたものの、66年生まれ、ノーザン・ソウルをクラブで実際に体験するにはちょっと幼すぎたようですね。でもファッション写真を経験したことでルックの重要さを意識するようになった、髪型や服装、メーク、細部が疎かだったり間違っていたりする映画は見るに堪えないとインタビューでも発言してます。その意味でこの映画はオーセンティックに当時を伝えているんでしょうね。あのダンス、ちょびひげ、服装、髪型も今から見るとダサ可愛いみたいで微妙ですが(笑)

K:なるほど、監督は66年生まれですか。JAMなどのネオモッズや、先ほど言ったレアグルーヴブームが青春時代だったのではないでしょうか。
映画に出てくるダンスやファッションは、NYのブレイクダンスや、ジャージ系ファッションに相通じる部分がありますが、監督はその辺の再現性には、すごく気を使っているなと思いました。
クラブシーンの空気感の演出も、すごくうまいと思いました。最近の映画では、体感的にわかっていない表面的なクラブシーンが出てくる作品があるのですが、この作品のDJシーンは、すごく実際の現場の熱量が伝わってくるんですよね。
リアリティという意味では、当時の地方都市にはライブハウスやクラブもなかったでしょうから、映画に出てくる公民館や、ソーシャルクラブみたいな場所で、実際にパーティやライブをやっていたみたいで、そこの貸し借りのやりとりなども面白かったです。
80年代終わりにロンドンに行った際には、週末教会をクラブにしている場所に連れて行かれたのですが、そういうワンナイトクラブみたいなスタイルも、すごく英国的だと思います。
英国北部のそういった文化が、NYなどにどのように伝染していったのかも気になります。
ノーザンソウルダンスについては、こちらのショートムービーでよくわかると思います。

A:週末だけおしゃれして”フィーバー”するって意味では『サタデー・ナイト・フィーバー』と通じてなくもないし、DJコンビがアメリカをめざすって部分はセルクルのシネマディスカッションでも取り上げたミア・ハンセン=ラブの『エデン』フランスのサブカルチャーとも通じているようで英国だけではない繋がりも面白かった。もちろん英国の映画の流れの中でとらえても興味深いですよね。『土曜の夜と日曜の朝』とかに始まる”怒れる若者”たち、前回の「マイ・ジェネレーション」ともつながりますよね。

K: ファッションも70年代はグラマラスで…。前回『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ』で描かれたスウィンギング・ロンドンの華やかさが、更にメインストリームは派手になっていたと思います。サンローランに代表されるパンタロンが男性ファッションにも飛び火して、映画の中でもふんだんにフレアーパンツは出てきますね。
ネクタイも拳骨みたいに、結び目は太く、幅も太く、派手でした。
彼女の働いているお店が、BIBAというのもよかったです。
DJ映画として、ジャンルは違いますが、主人公の影響の受け方や、音楽へののめりこみ方は『エデン』にもつながりますね。
『エデン』とは時代も違いますが、フランスと英国のDJ文化の違いというか、お国柄の違いも見比べると、すごくわかるのではないかと思います。
ワーキングクラスの若者の怒りやエネルギーみたいな熱量は、英国映画独特ですよね。
アルバート・フィニーが亡くなってしまいましたが、『土曜の夜と日曜の朝』が、この手の英国映画のルーツですね。
80年代になりますが、敦子さんがおっしゃっていた『ヤング・ソウル・レベルス』にもつながりますね。

A:”ノーザン・ソウル”という要素を取り去るといかにも普通の青春映画。でもその普通さを細部がきっちり支えているのがいいと思います。川野さんはどのあたりが一番の見どころと思いましたか?

K: そうですね。70年代版『さらば青春の光』とも言えますね。
普通に青春映画と見ても、十分楽しめると思います。
大人しい男子が先輩や友達の影響受けて、シーンにのめりこみ、ドラッグや彼女問題が発生するなど、ある意味お決まりのパターンなんですが、バックボーンがノーザンソウルシーンですし、演出のテンポが良いので、楽しく一気に見れてしまいます。
その中に英国映画らしいエッセンスが溢れているのが魅力ですね。
1番の見所は、英国のDJ〜クラブシーンの様々なエッセンスのルーツが、この映画の中に込められているという事だと思います。
そして個人的に嬉しいのは、音楽とファッションの関係性が濃い映画だという事です。

© 2014 Stubborn Heart Films ( Heart Of Soul Productions) Limited All Rights Reserved.

A:『カメラを止めるな』じゃないですが、イギリスでこの映画はもともと穴埋め的な小規模公開になるはずだったのが、SNSで拡散され拡大公開、予想外の大ヒットとなったそうです。口コミで広がる要素、感じましたか? 

K:これはやはり英国の中に、ノーザンソウルのエッセンスが奥深く眠っていたのだと思います。マンチェスターのロックバンド、ストーンローゼスも、ファンデーションはノーザンソウルと言われています。以前こちらのサイトでも紹介しましたが、今やDJの大御所であるFATBOY SLIM/ノーマン・クックと下北沢のZOOで一緒にプレイした際、彼のダンスを見ましたが、この映画に出てくるノーザンソウルダンスのステップでした。
マーク・アーモンドやデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズなども、ノーザンソウルシーンに出入りしていたと言われています。
そういった土壌があってのヒットではないでしょうか。
名古屋君の好きなサル・ソウルや、90年代に流行ったフリーソウルは、日本でもファンが多いと思います。しかしノーザンソウルは非常にニッチな存在で、一つのカテゴリーとして、日本の中で認知されてきたのは、この20年くらいではないかと思います。
最近ではレコードガイドブックが発刊されたり、コンピレーションCD、インターネットなどで情報も取れますし、MODS MAYDAY JAPANなどのイヴェントではノーザンソウルをかけるDJや、独特のダンスを踊る人も多くなっています。
以前に比べてノーザンソウル入門の敷居は低くなっていますから、今回の公開はいいタイミングかと思います。

A:日本でも熱烈に公開を望む面々の働きかけで公開にこぎつけたんですね。
そういう公開方法が広がるとうれしいですね。

K:そうですね。
実際には“ノーザンソウル“って、すごく規定のしにくい音楽ジャンルというか、カテゴリーだと思います。自分もこの映画を見るまで、全く知らなかったことが多々ありましたから、見て目から鱗が落ちる感じでした。
元々好きな人達には伝説のWIGAN CASINOのシーンなどは、見ものの一つだと思います。
レコードのレーベルを隠すDJはいますが、その行為をカバーアップと言うのも知りませんでした。7インチのDJ文化、くるくるスピンするダンス、ノーザンソウル特有のテンポの速い楽曲など、細かい見所は随所にあります。
まずはこの映画を見て頂き、より多くの方にノーザンソウルの素晴らしさを、味わって頂きたいですね。

northernsoul-film.com
『ノーザン・ソウル』
2/9(土)より公開中:東京・新宿シネマカリテ、兵庫・神戸・元町映画館
2/16(土)公開:大阪・シネマート心斎橋
愛知・名古屋シネマテーク、京都・出町座など以降全国順次公開