(C)Universal Pictures(C)D Stevens
新作映画を複数の視点からとらえ、映画評論の新しい手法を考えようとしてスタートしたセルクル・ルージュのシネマ・ディスカッションも10回目になりました。
今回は、私たちが紹介していきたいと考えている世界=MUSIC×CINEMA×FASHIONを象徴的に描いた作品が2本相次いで公開されますので、前後半に分けて、2作品を比較しながら、紹介する事にしました。
その2作品は、共に偉大な黒人ミュージシャンを描いたアンソロジードラマ『JIMI:栄光への軌跡』と、『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』です。
『JIMI:栄光への軌跡』では、ジミヘンことジミ・ヘンドリックスがスターダムに上っていく1966~67年の姿が描かれ、『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』では、JBことジェームス・ブラウンの波瀾万丈な一生が描かれています。
先月part1として『JIMI:栄光への軌跡』 をアップしましたが、part2の今回は、Godfather of Soulの、『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』を紹介させて頂きます。
ディスカッションメンバーはいつものように、映画評論家川口敦子をナビゲーターに、名古屋靖、川口哲生、川野正雄の4名です。
今回は、part1のジミ・ヘンドリックスと基本的に同じ質問で、前半は進んでいきます。
川口敦子(以下A):まず見る前に予想した映画の描き方と違っていましたか?
違っていたらどのあたりが違っていましたか? それは肯定できるものでしたか?
伝記的な事実とフィクションの部分に関しては? 周囲の人間の配し方もそれぞれ興味深いですが現実の関係に忠実とはいえない部分もあるようですが?
川口哲生(以下T):いきなりショットガンをぶっ放し、カメラ目線で話すトラブルメーカー時代からの導入で予想外でした。(笑)でもそのすぐ後のベトナムに向かう一曲目のJBの実演がいい音でかかると体が思わず揺れました。子供時代と大人になってからの時代が交差する様が、時に妙に説明臭い所も感じましたが、ボビー・バードとの関係での「トップを張る人間として払う代償は払って生きてきた」みたいな所は興味深かったです。
名古屋靖(以下N):さすがにJBと同じ顔はちょっと怖かったのでしょう、JBの主役はほどよくグッドルッキングな容姿になり、語り口も本物より若干ソフトな印象で、内容も含めより一般の観衆に向けて事実と比べるとちょっと美化したエピソードも多めかなあと。。
川野正雄(以下M):ボビー・バードとの友情物語になっているとは思いませんでした。個人的にボビー・バードとビッキー・アンダーソンのファンでもあり、彼らの来日ライブも見ていますので、その辺の今までよくわからなかったJBファミリーのエピソードの部分に、すごく魅かれました。
JBと、ボビー・バードの関係が、これ程濃いとは知りませんでした。
映画全体としては、イメージ通りですが、ライブシーンが多く、それを演じるのも大変だったと思います。ライブ盤が有名なアポロ劇場での公演のエピソードなどは良かったですね。
ダンス含めて、自分は生では見れていない全盛期のJBのステージの熱さ(象徴としての額の汗含め)を、すごく体感できて、そこは映画として見事だなと思いました。
マントショーのMCをボビー・バードがやっていましたが、そこは違ったんじゃないかなと思いました。
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A:『JIMI:栄光への軌跡』と同じく、アーティストの伝記映画の定型をはみ出す語り方、展開の映画だと思います。JBは時のシャッフル、ノンリニアな構成、JBがカメラに向かって直接、自らの物語を語る――といったスタンスがあります。
N:JBは彼の生い立ちから後期までの人生を追いかける映画だったので、ある程度シンプルに初心者でも観やすくするために、事実を加工しているところは多々ありますね。実際はもっと複雑で刑務所にも何度も出たり入ったりで、ボビー・バードとの出会いも音楽ではなく刑務所外で野球がきっかけだったと聞いています。完全なドキュメンタリーではなくエンターテイメント作品なので、多少長い上映時間も気にならないテンポの良さや度々織り込まれる笑いなどを優先した結果としてそれらの違いも肯定できます。
T:JBでは、あくまでアメリカの南部、アメリカ社会の黒人と白人という観点がストーリーの根底を貫くテーマとなっており、貧しさや母との再会、あるいは「白い悪魔(白人世界でのビジネス的搾取)」との戦いの中でのJBのセルフプローディース力、政治のパワーゲームの中での微妙なバランスといった形で映画の中で描かれているのを強く感じました。それらが時のシャッフルで描かれて、先にも言ったけれど「こんな生い立ちや環境がJBという奇跡を生んだ」みたいな一直線の結びつけを感じたのも否めないかな。
音楽的なJBの意味は、アメリカの白人をも含む市場での成功、そこからさらにブラックネスを極めるFUNKへの回帰、そしてその後のHIPHOP後の白人音楽をも含むブラックミュージック化の中での再評価等々、アメリカのなかで黒人がどう生きぬくかみたいなことを時代時代において象徴しているように思います。映画の中でJBがカメラに向かって語るところは、なにかJBが自分を鼓舞するように語り続けているようで、妙に納得感がありました。
M:JBは時空の飛び方が大胆で面白かった。
決して人格者で描くのではなく、ケチで口うるさいルールを作る奴という彼の悪い方のエピソードもしっかりと描かれたのは、良かった。
冒頭がかなり誇張はあると思いますが、日本にいると真相不明だった発砲事件で、一気に入り込めました。
A:JBの時の構成は、母に去られ、さらに自分で自分の面倒をみろと、父に置き去りにされた子供のままの孤独の心をうまくあぶり出すように編まれていて戯曲を書いてきたというジェズと、シドニー・ポラック、リドリー・スコット、アンソニー・ミンゲラってストーリーテリングにもこだわりのある監督たちの下で脚本を学んだというジョン=ヘンリーという英国出身のバターワース兄弟の脚本の力も大きい。この人たちの脚本に魅了されたミック・ジャガーが元々はドキュメンタリーとして考えていたJB映画の企画を劇映画でいこうと思い直したとメイキングで語っています。JBがキャメラに目配せするような部分というのは、昨年の快作『ジャージー・ボーイズ』でクリント・イーストウッドがキャラクターたちにキャメラを向いた独白をさせて話を運んでいったのを思い出させもしますね。
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A:60年代、公民権運動、ブラックパワー、スィンギング・ロンドン等々、時代、対抗文化はたまたファッションといった背景への目もアーティストを描くのと同等のポイントになっているように思いますが,時代の描き方はどうでしょう? この時代の面白さに関してはどう見ていますか?
T:JBは公民権運動・ブラックパワー・ベトナム・さらにはHIPHOP以降という長いうねりを内包していますね。最後のバードの家のプール掃除に白人が来たのを「えらくなったもんだな」というJBに掃除人が「Mr.Brown」と声をかけて車を動かすシーンは長い道のりのが象徴的でした。スキーパーティーでの白人向けのJBから、キング牧師の暗殺の翌日のコンサートシーンや、『I’m black and proud』の収録シーンへの変遷が時代感を感じさせました。
JBの髪型の変化もそれに非常に呼応していますね。(笑)
A:JBの監督テイト・テイラーは、米南部、中でもとりわけ旧弊な差別の巣窟として知られたミシシッピー州都ジャクソン出身で、公民権法制定(1964年)直前の時代と世界を背景にした前作『ヘルプ』でも土地っ子ならではの裡からの目にものをいわせていましたね。
“ヘルプ”と呼ばれた黒人メイドの真実の声に耳を傾ける白人側からの距離の描き方とか。一見、あたりさわりない”いい映画”という感触なのに、ハリウッドの”政治的公正さ”への過剰なこだわりによる自己規制に陥ることなく、黒人も白人もそれぞれに人種だけでない差別をうけているような現実をしぶとく描いていた。
例えば社交界のボス的奥様から不当に解雇されたメイドと同じ奥様の元恋人と結婚して恨みを買ったホワイトとラッシュの金髪グラマー。ふたりが同じテーブルで分かち合うフライドチキンの一場は、それぞれに耐えて生きている人と人が分かち合う心を照らし出して、声高な主張の代わりに当り前に土地の現実を生きてきた作り手の目が感じられ、味わい深い物語の奥行きを生んでいた。といった奥行が今回の映画にもさまざまにあったと思います。ダン・エイクロイド演じるエージェントのユダヤ人という出自をさりげなく示すとかもありましたね。がむしゃらな問題提起や告発よりは楽しませつつ確かに現実に切り込む話術があるように思います。
M:JBは、描かれている期間も長いですが、見覚えのある衣装が多く登場してきて、うれしくなりました。
特に67~8年は、音楽もファッションも過渡期というか、変化になる年代で、時代がどんどん変わっていく空気を感じることはできました。音楽で言えば、SOUL,R&Bから、FUNKY SOULが生まれた時代で、その最先端がJBですね。ロックも、ジミヘンのようにサイケデリックが出てくる時代。この時代は、JBのヒストリー上も非常に重要だと思います。
JBは、自分が黒人である事を強く意識していた…
ジミヘンは白人の為のロックを、黒人であるジミヘンが演奏する事に意義がありましたが、JBは、黒人が黒人の為の音楽をやっている。
この映画を見ながら、JBのブラックミュージックであることのプライドを、強く感じとりました。
キング牧師のエピソードが挿入されていますが、同時にアメリカに於ける黒人の立ち位置というものが、大きく揺れ動き、変わっていった時代でもあるのではないでしょうか。
FUNKY SOULが生み出され、FUNK MUSICの原型が出来あがっていくエネルギー。
それが正に火を噴くようにうごめいていたこの時期、JBの作品は契約のトラブルがあり、KING,SMASHという二つのレーベルからリリースされていましたが、それぞれが良かったです。
1968年の貴重なパリのLIVE映像があります。この時期はJAZZ的なフレイバーも入っており、SMASHからリリースされた作品のテイストが感じられます。
N:良い意味で60〜80年代らしいライティングと演出が、ザ・アメリカン・ストーリーを見ている感覚で面白かったです。JIMIがさりげなくしかし深く差別問題などを提示するのにたいして、JBの方では、それすら分かりやすく加工して白黒だけでなくユダヤ系まで巻き込んで紙芝居のように見せてくれています。 片手を縛りあって、目隠しして白人の前で黒人少年同士が殴りあうエピソードも、映画では典型的な差別シーンとして描かれていますが、自伝によれば、喧嘩が強かったJBにとっては割りの良いお金の儲け口なので望んで毎回志願してたそうです。
A:この作品にはミック・ジャガーが製作で参加していますが、彼の参画を特に感じる様な描き方や、JB像、音楽、コンサートシーンなど、気づいたことはありますか?
N:さすがに本物のJBはすごいと思ったのは、映画の中のPARIS公演のシーンでした。実際のこの日の映像を見たことがあります。ステージ上のメンバー配列や衣装など、ほぼ完璧に再現されていますし、このツアーに急遽参加したベースのブーチィ・コリンズの弾く姿まで完璧です。音楽も実際の音を採用しているので臨場感も申し分ありません。ただし、主人公JBの動きがちょっと違うのです。同じアクションなのですが違って見えるのです。映画『JB』が悪いのでなく、本物のJBのキレが凄すぎるのです。その動きは人間の能力を超えた別の動物に見えるほどの激しいダンスでした。
M:JBのダンスレッスン映像がありますね。キレがすごいです。
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T:ミック・ジャガーがJBのステージの袖で見ているシーンは、JBサイドから描かれているけれど、ミックにとってもアメリカという大きな衝撃だったのだろうなと思えるシーンだった。
後は、エピソードに挟まれるステージがほぼ全曲再現みたいで、やはりこの辺はミュージシャンとしてのミックのこだわりなのかなとも思いました。あとステージ側からの目線もステージにいる側のミックのものなのかも。
M:序盤でテレビの音楽番組のジミとストーンズのトリ争いの逸話があり、JBがストーンズの存在を確認する場面は、微笑ましかった。
彼らのルーツが黒人音楽=ブルースにあるという部分と、JBの伝記には何らかの意識の中での接点があったのではないかと思う。
ミックの次の企画は、プレスリーのようですね。
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A:主演のチャドウイック・ボーズマンに関していかがですか? 自分だったらこの人をキャストに選んだといった案がありますか?
N:良かったと思います。作風とフィットしていました。
T:本人の口元の感じに特徴があるので、その感じとの微妙な違和感はあったように思います。でもボーズマンのJを流す「エームス・ブラウン」みたいな自らへのしゃべりかけはJBぽかったかな(笑)。結局この手のbiopicは有名で個性が強いがゆえに似ている、似ていないが気になることは否めないと思います
M:JBは、声と話し方がそっくりですね。ダンスも見事でした。歌は結局オリジナル曲を使い、新たにレコーディングした曲は使われなかったようです。
歌の訛りが違っていたそうですが、その分生身のJBとして見てしまいました。
A:やはりある程度まで”そっくり演技”を求められるなかで、衣裳や髪型の力もあって違和感は感じさせない。それよりしかし身体性というのでしょうか、生き方のリズムのようなものを纏ってみせている気がしました。
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A:ミュージシャンを題材にしたこれまでの映画でお気に入りはありますか? 逆にその手の映画に対する不満は?
M:アントン・コービン『コントロール』、『ゲンズブールと女たち』『ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男』。
『コントロール』は、詳しく知らなかったジョイ・ディビジョン=イアン・カーティスの素顔がよくわかり、すごく衝撃的でした。
映像も音楽も良かったし。
どの作品という事はないのですが、 ミュージシャンが生存していて、気を使いすぎる作品はどうかと思うときがありますね。
N:最近だと『きっと ここが帰る場所』は好きでした。ショーン・ペンはうまい。 あとは、『ブルース・ブラザース』『ハーダーゼイカム』『ラスト・ワルツ』とか?
T:デイヴィッド・バーンはいいですね。
M: 『きっと ここが帰る場所』は、キュアのロバート・スミスになりたい男の子が主人公でしたね。
A:ガス・ヴァン・サント『ラストデイズ』、トッド・ヘインズ『アイム・ノット・ゼア』『ベルベット・ゴールドマイン』。クリント・イーストウッド『ジャージー・ボーイズ』はフォー・シーズンズ題材のミュージカルの映画化でしたね。イーストウッドでは『バード』もあるし、やや強引にいえば『センチメンタル・アドベンチャー』も。
ジェームズ・マンゴールド『ウォーク・ザ・ライン』はジョニー・キャッシュとジューン・カーター、彼らの音楽そのものにものすごく興味があるわけではないけれど映画はとてもよかった。
M:『アイム・ノット・ゼア』は、色んなディランが出てきて、面白かったです。
グラムロック題材の『ベルベット・ゴールドマイン』とか、トッド・ヘインズは、音楽を本質的に知っている監督だと思います。
A:ずばり見所はどのあたりに?
N:ボビー・バードとの友情物語。
M:パリのライブシーン。オリジナル曲を使う事で、ライブシーンの存在感は圧倒的になっている。
もうひとつはJBファミリーのドラマ。
ボビー・バードと、ビッキー・アンダーソンは、レアグルーヴブームの先駆けとして、1988年に、JAZZY Bら、ロンドンのDJ達と一緒に来日し、芝浦のインクスティックで行ったLIVEを見ました。LIVEと言っても、バックはDJで、カラオケのようなものでした。
その時感じた若干の寂しさは、ラストの夫婦の生活シーンと、何となくつながってきます。
今改めてボビー・バードに、この映画がフォーカスしたことは、素晴らしいと思います。
A:有名なエピソードが幾つも描かれていますが、知っていたエピソードはありますか?
JBの描かれている人物像は、イメージしていた人物像と比べて、違いはありますか?人格、身なり、しゃべり方、色んな角度からお願いします。
N:10年位前に、文庫本で自伝を読んでいたので、けっこう知ってました。 自伝本よりこの映画の方が面白いです。
似ている似ていないの観点ではなく、今回の映画の主役として素晴らしいと思います。 実際はもっとクレイジーだったと思います。
T:JBはメンバーが失敗すると罰金をとるとか「Mr。James Brown」と呼ばなければならないといった絶対性に関することでしょうか。
M:真相は知らなかった乱射事件。
グループ内の細かい規律と、メイシオの脱退。
甲高い声と、すごく数字に細かい点。来日して「ベストヒットUSA」に出た時、公演回数など、すごく細かい数字を言っていた事をよく覚えています。
A:JBの最初に描かれる発砲と逃走劇のニュースを聞いたときは、驚きつつくなんだか、らしすぎて笑ってしまったように記憶しています。思い出したので入れておきますが『ゲロッパ!』って井筒監督の映画もありましたね。
M:サリー(岸部一徳)が、踊りますね(笑)。
A:劇中で使われている楽曲、JBは新たにレコーディングしたものが、訛りが違うなどの理由で没になり、JBのオリジナル曲が使われています。
劇中曲についての、印象をお知らせ下さい。
M:ライブシーンも多く、過去に映像を見たことのあるシーンもあった。オリジナルを使うことで、その再現性は高くなった。
マントショー、ホーンセクション、ダンスなど、重要なJBのアイコンが見事に再現され、観客のテンションもあがる。
T:限られた成功の前の何年間を描いたJIMIとは異なり、波瀾万丈な(笑)JBの人生を追う長尺ものは、やっぱりJBのオリジナルがあって持っているように思う。ちょっと話は変わるけれど、私はJIMIでも触れたけれど、イギリスの音楽センスや、深堀の仕方は面白いと思います。この辺は川野くんの領域でしょうが、後のレア・グルーヴのときも70年のセックスマシーンのあとのボビー・バード名義の『I know you got soul』とかPeopleレーベルとか掘っていましたよね。そういう玄人好みの感じがイギリスの音楽シーンにはありますよね。
ついでに言えばアシッド・ジャズのころ好きだったヤング・ディサイプルズのカーリーン・アンダーソンってバードとヴィッキー・アンダーソンの娘でしょ。
M:ヤング・ディサイプルズは、ジャイルス・ピーターソンが、JBの曲をレーベル名にしたTALKIN’ LOUDレーベルの最初のアーチストだから、象徴的ですよね。
カーリー・アンダーソンは格好良かったです。歌もうまいし。血統を感じます。
N:結果、実際の演奏をオリジナル曲にすることで、リアリティが増したと思います。
JBがきちんと評価されたのって、やはりHIP HOPや、レアグルーヴ以降ですよね。それまでは黒人が中心に聞く音楽だったように思います。
世界的に一番ヒットしたのは、1986年のロッキーの『LIVING IN AMERICA』ですから、かなり後期になりますよね。
T:後アフリカ・バンバータが、一緒にやってたね。
M:『UNITY』は、1984年。JBは70年代後半から、やや失速していたのが、この辺から再評価で、再浮上してきますね。
M:レアグルーヴブームの最大の貢献は、ボビー・バードのソロなど、眠っていた名曲にスポットライトを、世界的に当てたことだと思います。
JBの再評価という意味では、URBANレーベルがリミックスしたアルバム『In the Jungle Groove』が圧巻でした。
A:最後の質問です。
JBは、どのようなものを音楽シーンに刻んだと思いますか?
M:ファンキーソウルのファンデーション。
大所帯のファミリーで作り上げるグルーヴ。
極論すると、グルーヴそのものを、JBが作ったと思います。
N:JBは黒人である事を意識し続けて生きていたと思います。彼は黒人である事に誇りを持ち、尊敬される人間になることを目標に頑張っていたんでしょう。 音楽的にもジャンルをまたぐのとは逆のベクトルで、ブラック・ダンス・ミュージックを徹底追求することで進歩成長させ、ファンクという新たなグルーヴを確立した重要人物です。
T:音楽シーンに残したものはJBはやはりFUNKでしょうね。映画の中でメシオにお前の楽器は何かと聴くシーン、答えはホーンもギターもヴォーカルさえもバンド全体をドラムセットとする音楽。やはりこれはJBだし、唯一無二、そしてその後のブラックミュージックに面々と引き継がれる系譜となっている点でしょうか。
「ジェームス・ブラウン〜最高の魂(ソウル)を持つ男〜」
2015年5月30日シネクイントほか全国公開
配給:シンカ/パルコ
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