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READY STEADY GO! VINTAGE NEW WAVE STORE

CARNABY STREET
CARNABY STREET

並木橋にあった店舗をクローズしていたREADY STEADY GO!のショップが、期間限定ではあるが、久々に再開することになった。
会場は高円寺駅北口、サブカルチャーを象徴するような存在のキタコレビルにあるGARTER GALLERY
GARTER GALLERYは、レディガガの衣装も手がけたデザイナー江幡晃四郎氏や、アーチスト集団Chim↑Pomのホームグラウンドともいうべきアンダーグラウンドなギャラリースペース。
オープニングのイベントは、園子温監督の個展だった。
高円寺は、今までショップがあった並木橋や代官山とはかなり趣きが違う町だが、80年代ロンドンのカムデンロックにあったようなアヴァンギャルドな感性が漂うGARTER GALLERYの空間が、今回のコンセプトであるVINTAGE NEW WAVEと、しっくりくると考えたのだ。
会期を10/1(土)~10/16(日)、12/2(金)~12/4(日)の2回に分けて、ポップアップストアをオープンする予定だ。

garter gallery
garter gallery
オリジナルパーカー
オリジナルパーカー

今回は1985年のオープン以来READY STEADY GO!が仕入れてきた英国を中心にした様々な商品の中から、貴重なデッドストックをセレクトして販売する予定である。
デッドストックと言っても、30年間のヒストリーの中からになるため、かなりのアイテム数があった。
その中には、1点しかないサンプル輸入した商品や、1点のみ製造した商品がある。
又日本での知名度が低いブランドであったり、発売時には価格が高く、売れなかった商品もある。
そういった商品を、今回はVINTAGE NEW WAVEと名付け、出来るだけお求めやすい価格設定にして、販売する。
また今回は80年代以降のUKファッションと音楽の関係性をリアルに感じて頂く為に、ヒストリカルなコレクションアイテムの展示もする予定している。

INSIDEOUTのショップ内展示
INSIDEOUTのショップ内展示

主な取り扱いブランドは以下のようになる。
NSIDEOUT, YMC, PUNK ROYAL, GABICCI, FARRAH, DR.DENIM. MERC,MONKEE GENES, JOHN MOORE, HUDSON, TABITA, SESSUN, N2,
SOUL SEVENTIES, APOENA, YOUR EYES LIE, NAGUISA, SUMMERVILLE他。
READY STEADY GO!の母国とも言える英国だけではなく、北欧や南米のブランドまでラインナップし、衣類から靴、バッグ、アクセサリーなどの小物まで、幅広い品揃えをお見せする予定である。
その中でも注目したいブランドは、英国のINSIDEOUTだ。
70年代パンク前夜の英国で、アヴァンギャルドな作品を創出し、ビビアン・ウエストウッドのブランドSEXにも影響を与えたJOHN DOVE& MOLLY WHITE。
グラムからパンクへのブリッジとなった時代の先端を走っていた彼らのDNAを持ったブランドが、INSIDEOUTである。
PUNKやNEW WAVEのフレーバーを、今の時代に解釈したコレクションは、見て頂くだけでも楽しい筈だ。
会場には、オリジナルデザインのRIPSのポスターや復刻版Tシャツも展示予定である。

JOHN DOVE& MOLLY WHITEの「RIPS」
JOHN DOVE& MOLLY WHITEの「RIPS」
INSIDEOUTのシャツ
INSIDEOUTのシャツ
INSIDEOUT
INSIDEOUT

READY STEADY GO!の代表的なシューズと言えば、ジョン・ムーアである。服のクリストファー・ネメス、シューズのジョン・ムーア、アクセサリーのジョディ・ブレームが、ある時期はロンドンファッションを代表するアイコンであった。
ジョン・ムーア自身が亡くなってしまった為、今や新作のシューズは入手不可能になり、ジョン・ムーアのシューズはコレクターズアイテムとなりつつある。
幸いな事に数は多くないが、今回は全てのジョン・ムーアのストックを販売する予定である。
多分日本でジョン・ムーアの新品が買える最後のチャンスになると思うので、お好きな方には、是非とも見に来て頂きたい。

JOHN MOOREのブーツ。これはレディース。
JOHN MOOREのブーツ。これはレディース。

メンズアイテムでは、アウターやスーツ類が充実している。特にADAMやMERCの英国産スーツを、今回は2万円の特別プライスで提供する予定だ。
60年代のモッズスタイルのスーツが、READY STEADY GO!の定番だが、写真のADAMのスーツは、ワイドラベルにフレアーパンツの70’Sスタイルである。
またモッズだけではなく、パンクテイストのアッパーブランドPUNK ROYALや、レアグルーヴ感覚のSOUL SEVENTIESなど、音楽と至近距離のスタイルを、今回は幾つも用意している。

ADAMのパンタロンスーツ
ADAMのパンタロンスーツ
PUNK ROYALのミリタリーシャツ
PUNK ROYALのミリタリーシャツ
LUIZA  BARCELOSのトラベルバッグ
LUIZA BARCELOSのトラベルバッグ

今回のテーマであるVINTAGE NEW WAVEは、サエキけんぞうさんのハルメンズXプロジェクトとの共通テーマでもある。
日本のニューウェーブの先駆者ハルメンズのデビュー35周年を記念したアルバム「35世紀」と連動し、アーチスト写真やライブ衣装も、READY STEADY GO!が提供をしているのだ。
ライブ会場に先駆けて、太田螢一さんのイラストをフューチャーしたコラボレーションTシャツと、エコバッグも販売する。
アーミーグリーンのTシャツは、VINTAGE NEW WAVE STORE限定発売になるので、お早めにお求めください。
今回のTシャツとエコバッグは、90年代のDUFFER OF ST GEORGEなどで使用されていた英国CONTINENTALのボディを使用しているのも、特徴だ。

ハルメンズXとのコラボレーション
ハルメンズXとのコラボレーション
ハルメンズXとのコラボTシャツ
ハルメンズXとのコラボTシャツ
太田螢一さんのイラスト
太田螢一さんのイラスト
ハルメンズXとのコラボエコバッグ
ハルメンズXとのコラボエコバッグ
エコバッグは4色
エコバッグは4色

定番商品であるREADY STEADY GO!のロゴTシャツの新作や、パーカーなどスウェットも用意されている。
Tシャツは、今後は入手が難しくなるCONTINENTALのボディを使用している為、今回の新作オリーブ、グレー、カーキは限定商品となる予定である。

ロゴTシャツ新作
ロゴTシャツ新作
ロゴTシャツ新作
ロゴTシャツ新作

READY STEADY GO! VINTAGE NEW WAVE STOREの情報は、facebook pageに、日々アップデートされる予定だ。
会期
Phase1: 10/1(土)~16(日)
Phase2: 12/2(金)~4(日)
business hour:14:00~20:00
Venue: Garter Gallery
@キタコレビル〒166-0002 東京都杉並区高円寺北3-4-13
高円寺駅北口徒歩5分。上島珈琲店とマクドナルドの間から入る中通り商店街の左側に、キタコレビルはあります。
お問い合わせ:Mail: readysteadygotokyo@gmail.com
*クレジットカード使用不可。デッドストック中心の為、返品交換も不可となります。ご注意ください。

80'SのUK サブカル雑誌THE FACE COVER
80’SのUK サブカル雑誌THE FACE COVER

*10/1は、18時スタート。Opening Nightとして、併設するGallery Bar GARTER HOUSEもオープン。
サエキけんぞうさんのVINTAGE NEW WAVEトークショーも開催予定。
英国的なREADY STEADY GO!の一部商品は、吉祥寺のYOUNG SOUL REBELSでも購入可能となっている。
そちらも、是非足をお運びください。

LONDON TUBE
LONDON TUBE

Cinema Discussion- 17/時をかけるルルーシュマジック〜『男と女』から『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』へ

© 2015 Les Films 13 - Davis Films - JD Prod - France 2 Cinéma  
© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma

映画を多角的な視点で評論するセルクルルージュのCinema Discussin第17弾は、フランスの巨匠クロード・ルルーシュの新作『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』と、旧作『男と女』です。
この秋は待望の新作に加えて、ルルーシュの出世作『男と女』のデジタルリマスター版や、未公開ショートフィルム『ランデブー』の公開、盟友フランシス・レイの楽曲を演奏するシネマコンサートなどが予定され、日本でも久しぶりに、ルルーシュにフォーカスがあたっています。
今回は映画評論家川口敦子と川野正雄の対談方式で、50年の年月を経てもぶれないクロード・ルルーシュについて、新旧作品を見比べてみました。

© 2015 Les Films 13 - Davis Films - JD Prod - France 2 Cinéma  
© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma

★久々のルルーシュの新作といった印象がありましたが、未公開の新作はコンスタントにあるんですね。『アンナとアントワーヌ』はそんな中で良くも悪くも相変わらずなルルーシュ映画とまず思わされましたが、いかがでしょう?
川野正雄(以下M):
全くその通りですですね。まあそんなにルルーシュ作品を見ているわけではないのですが、これはもう成熟した男女のおとなのファンタジーなんだなというのが、率直な印象です。
海外の映画祭に行くと、よく新作を上映していましたが、実はあまり気にしておらず、海外では見たこともなかったです。
僕がこの前に見たルルーシュ作品は『ライオンと呼ばれた男』でしたが、あれもJ・P・ベルモンドというトップスターを使ったおとなの男のファンタジーだと思いました。

川口敦子(以下A): 
良くも悪くも変わらない、変われないルルーシュ映画と、『アンヌとアントワーヌ』を見た直後にそう思い、彼の映画を少しまとめて見直してみてさらにその思いを強くした、そんな感じです。といってそのルルーシュ印のようなものが、即、作家性という言葉と重ねられないというか、作家性といってしまうとまたちょっと違ってしまうようにも思えるんですね 笑

★そんな相変わらずさの素はどこにあると思いますか?

A: 男と女 その出会いと別れ、そしてまた出会う――という同じ一つの物語が何より変わらなさの素じゃないでしょうか。ほとんど永劫回帰のようにキャリアを通じてルルーシュが同じ一つの物語を追いかける様を今回改めて確認してみて、それはそれですごいかも、と思いました。そもそも最初期の『行きずりのふたり』というのも男と女の出会いとすれ違いのお話なんですね。この男と女の出会いの物語に旅、それにまつわる日常と別の時空とロマンスの風景、エキゾチシズム、最近では今回の霊能者アンマのようなスピリチャルの要素も加味、それを流麗な映像とフランシス・レイの音楽で彩ればルルーシュ映画のできあがり~、なんて、こういうと馬鹿にしているみたいに響いてしまいますが・・・。その変わらなさ、変われなさ、思わず笑ってしまいたくなるけれど、そんなひとつの世界としてそれを本当に1960年代から変わらず追いかけていられるのはやはりすごいことかもしれませんね。で、今回の映画はそのことを映画内映画の「ロミオとジュリエット」モチーフと照らし合わせて自分でもロマンスのワンパターンを余裕で祝福してしまっている、ほとんど自己パロディっぽさとして提出してもいるような。終幕部分で自作『あの愛をふたたび』のテーマ曲を流したりして、あの映画ではそうならなかった再会の形をこちらではしてみる。確信犯的な同じ一つの映画作りなのでしょうね。ちなみに映画内映画というのも『流れ者』はじめしばしば試みられているお気に入りのパターンのひとつなんですね。それに『男と女』のシャバダバの断片使いも”常習犯”です。

M:よくわかります。今回もそれぞれの出会いのエピソードがうまいな~と、一番感じました。
ありえない出会いや、すれ違い、そこに奏でられるフランシス・レイの音楽。さらに今回は、インドでの旅という異次元空間にスピリチュアルな世界。
リアリティなんて、リアルに見せながらもどこにも存在しない。
この濃い味付けが、ルルーシュの世界だと思います。
それから『ライオンと呼ばれた男』の舞台はアフリカでしたが、相変わらずのエキゾチックなクレオール感覚のまぶせ方は、パリで食べるアフリカ料理のように絶品の味付けだと思います。
50年間に渡って、全くぶれないルルーシュの作風は、改めてすごいなと、今回は思いました。

© 2015 Les Films 13 - Davis Films - JD Prod - France 2 Cinéma  
© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma

★原題un+uneが堂々と宣言しているように「男」と「女」の出会いをあくことなく描き続けているようにも思いますが、やはり原点はデジタル・リマスター版の公開がこの秋予定される「男と女」にあるのでしょうか? それを超えるものはあるのかな?

M: そうですね。超えるものはないですね。
『男と女』には、あらゆる恋愛映画の要素が詰まっていたと思います。役者、ロケーション、音楽、ありえない設定、車と電車の競争とか…。
ご本人も越えられないことを逆手にとっての、今回の原題ではないかと思います。
テーマの普遍性というか、リアリティのないラブストーリーのあり方も、原点が『男と女』に結びつきます。
その辺の料理の仕方は、50年たっても変わらないルルーシュマジックだと思います。
観客も当然年齢を重ねていますが、そこに同時代同年代の共感性〜そういうのものが、今回の新作にはエッセンスとして付加されていると思います。

A: 超えるものは・・・・ないかも 笑 それでもアヌーク・エーメとジャン=ルイ・トランティニャンのオリジナルコンビで作った20年後の続編『男と女Ⅱ』(20 ans déjà なんて原題からして開き直ってます)はじめ『続・男と女』もあって、さらに必ずしも続きではないが続いていなくもないニュアンスを原題も邦題も押し出している『男と女、うそつきな関係』『男と女 アナザー・ストーリー』と、極言すればコマーシャルな、商売人として何が売り物かを常に心得てしまっている点もルルーシュの見どころかもしれません。ただ、西部劇仕立てにした『続・男と女』なんてそれはそれで悪くない映画でもあるので、なんていうか捨てがたく腐れ縁が続いてしまう困った監督という部分もありますね。

『男と女』の1シーン©1966 Les Films 13
『男と女』の1シーン©1966 Les Films 13

★恋愛映画作家としてのルルーシュの美点はどのあたりにあると思いますか?

A:今回の大使夫人のおとなな会話のセンスもそうですが、ヒロインが子供じゃない、そのわりに男は子供、少年の無垢を忘れていないという、言葉にするとなんだかなあなのですが黄金のパターンをきれいに形にしてみせるセンスはやはり侮れません。スタイリッシュな会話と映像はもちろんですが、そのもとにある人の原型としてのかっこよさの追求ぶり、歳と共にその執着がかっこ悪くもなる、それもお構いなしという部分が面白いと思います。それをまた『ライオンと呼ばれた男』みたいに自画自賛しちゃっているのもまあすごいですよね。

M:映画音楽家と、在インド大使夫人の恋愛とか…ありえない設定を、それらしく見せてしまうテクニックですね。
『あの愛をふたたび』も、映画音楽家と、女優とか。ファンタジーというか、恋愛映画の魔術師という印象です。
細かい見せ方、今回だとやはり出会いのシーンとか、食事のシーンとか、演出のテクニックもうまいですね。

© 2015 Les Films 13 - Davis Films - JD Prod - France 2 Cinéma  
© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma

★彼自身の人柄をその映画から思い描いたりしてしまいますか?

A: 上記のようなコマーシャルなセンス、執着――というとあまりいいイメージになりませんが積極的な自分へのこだわり、自己肯定の徹底ぶりは映画から作り手の人柄として滲みだしているのではないかしら。
M:ほかのフランス監督に比べると、ご本人にはあまり興味は湧きません。映画のセンスはすごいと思いますよ。

★このジャンルで好きだったルルーシュ映画は? 他のジャンルではどうですか?

A  ロマンス ジャンルではやはり『男と女』、あと『あの愛をふたたび』もいいですね。アメリカの景観を『イージー・ライダー』みたいに、つまり西への道というウエスタンの常道を逆行する男と女、乾いた味わいに抒情がふっと紛れ込んで素敵です。
M:『男と女』は、いいですね。『あの愛はふたたび』は、殆ど記憶が曖昧で、トリュフォーの『暗くなるまでこの恋を』と、混在しています。
違うジャンルですが、『流れ者』と『冒険また冒険』は、当時好きでした。洒落たノワールという印象です。ただやはり『ラムの大通り』や『ガラスの墓標』『ピアニストを撃て』あたりと、記憶が混在してしまっています(笑)。
ノワールでもラブストーリーでも、ルルーシュの映画は、良くも悪くもわかりやすい。
それが大ヒットにもつながるし、作家性という部分では損をしている気がします。

© 2015 Les Films 13 - Davis Films - JD Prod - France 2 Cinéma  
© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma
『男と女』のアヌーク・エメ©1966 Les Films 13
『男と女』のアヌーク・エメ©1966 Les Films 13

★キャスティングについては?

M:役者の引き出し方が、すごくうまい監督だと思います。今回の主役二人については、殆ど知りませんでしたが、うまく使っていると思います。
ジャン・ルイ・トランティニャンもアヌーク・エメも、『男と女』やはり最高傑作の芝居をしているように感じました。
A   『あの愛をふたたび』のベルモンドとアニー・ジラルドー、いいですね! その時々の渋めのスターを起用してますが、いっぽうでトリュフォー映画でもおなじみのシャルル・デネール とか、脇でいつも光っているシャルル・ジェラールとか”一家”と呼べるやや強面の面々もいる。こっちがよりルルーシュ的なのでしょうね、本当の意味では。ユダヤ系の顔ということかもしれません。

『男と女』ジャン・ルイ・トランティニヤン ©1966 Les Films 13
『男と女』ジャン・ルイ・トランティニヤン ©1966 Les Films 13

★ルルーシュといえばフランシス・レイとのコンビで放ってきた映像と音楽との切り離し難い関係によって成立してしまう世界――という相変わらずさもありますがその功罪をどう見ますか?

M:鉄板なんですよね。このコンビ。監督と映画音楽家は、多分イマジネーションの対決なんですが、この二人はお互いを熟知し、いい化学反応を生む環境が確立しているのだと思います。『流れ者』『白い恋人たち』は、恥ずかしいくらいに誰もが知っている名曲ですよね。サントラでそういう存在の曲を連発出来るのは、すごいと思いますよ。
A  これはやはり、功とすべきでしょうね。フィルモグラフィーをたどっていくとミシェル・ルグランと組んだりもしているんですが、やはりコンビ作の方が安心して、というか”流して”見られるーーってへんな表現ですがそうやって肩肘張らず見るよさがルルーシュ映画の王道って気もします。
若い頃にジュークボックスに流れるシルヴィー・バルタンとかジョニー・アリデイとかのヒット曲につくビジュアルを撮っていたそうで、PV出身のビジュアル系監督たちの先駆といえなくもないかもしれませんね。

★『白い恋人たち』はもちろんですが、それ以外の劇映画にもドキュメンタリー要素がかなりしぶとく入り込んでいますが、その点についてはどうですか? 今回もインドの聖人と会う部分とか、かなり素の顔を撮ってますよね?

A 『男と女』にしてもトランティニャンがレースの走行テストをする場面は音も含めて生な記録映像として光っていますね。子供たちをつれての食事のシーンもいかにもその場の即興的な受け答えが微笑ましいし、海岸の老人と犬も、ドーヴィルにジャンが駆けつけて遊んでいる子供たちとアンナにライトをつけて合図する件りもそう。作りこんだ劇映画とは別の新鮮な息遣いが今見ても迫ってきますスティーブ・マックィーンの時にも話したけど、『ランデヴー』、そして。『白い恋人』たちのキャメラを抱えた雪山のスキー競技追走場面は『栄光のル・マン』でドラマの要素を削りレースそのままを撮りたかったというマックィーンの理想を実現していますね。ただ、『白い恋人たち』ではそこにむしろ逆を行くようなフランシス・レイのあまやかな旋律がかぶさることで新味が生まれている。映像そのままの迫力を音楽なしで使っていたらまた全然違う映画になっていたようにも思います。

M:さっきも言いましたが、ファンタジーをリアルに見せている。その要因は、ドキュメンタリー手法にあるのではないかと思っています。今回のアンマとの邂逅、得意ともいえる車や汽車の移動シーン。そういった場面の監督力が、作品を面白くする大きな要素になっていると思います。
短編『ランデブー』でも、ルルーシュはリアルな生の音をうまく使っています。
ダブルクラッチの音のリアルな振動は、車好きならテンションもあがると思います。
フェラーリ275GTBの官能的な排気音も、素晴らしく魅力的でした。

『ランデブー』©1976 Les Films 13 
『ランデブー』©1976 Les Films 13 

★その意味でヌーヴェルヴァーグとの関係はどう思いますか? フランス映画といえばルルーシュみたいな時代が日本にはありましたが、フランス映画の中で、あるいは映画史の中で彼をどう位置づけますか?

M:映画史の中での位置づけなんか、とても出来ませんが。
ルルーシュと自分が比較してしまう作家は、やはりトリュフォー、ルイ・マル、ロベール・アンリコなどです。その中で言うと良くも悪くも、ルルーシュはコマーシャルな監督だと思います。
同じフランスのコマーシャルな監督では、アンリ・ベルヌイユが好きです。彼はルルーシュよりも男臭い作品を撮っていますが、音楽や映像の使い方を含めて、素晴らしい娯楽作品を作る監督だと思います。
アンリコの『冒険者たち』は、『男と女』の一年違いですが、60年代後半のフランス恋愛映画の金字塔の2本だと思います。
この2本を見れば、当時のフランス映画の素晴らしさ~映画的な水準の高さと商業性の両立を、実感できると思います。
A 「友よ映画よ、わがヌーヴェルヴァーグ誌」(山田宏一)によればルノワールの『ピクニック』を製作したピエール・ブロンベルジェの下でスタートを切った、その意味でもヌーヴェルヴァーグ一派と近い所を出自とするルルーシュをカイエ誌はばっさり商業主義と切り捨てたそうで、そのあたりはともかく66年カンヌ、『男と女』で大賞を射止めるルルーシュが白いマセラーティで乗り付けゴダールの赤いアルファロメオに同乗していた山田氏に手を振った、「グランプリだな」とゴダールも手を振ってルルーシュにあいさつを返した――ってなんだかいつもこの部分を読むと奇妙な感慨に囚われるんですね。氏は「映画はキャメラだ」とルルーシュとの会見記の一章を銘打ってらっしゃいますが、彼の位置を考える上ではぜひ、ご一読をお勧めしたいです。『ランデヴー』を見ると実験的な部分ももっているのがよくわかる、なのに、コマーシャルな才覚もあるという点で監督としての位置づけの面では損をしている部分もあるようにも見えますよね。70年代くらいまでの作品の中にはもっと評価していいものがあるようにも今回、部分的にですが見直して思いました。

© 2015 Les Films 13 - Davis Films - JD Prod - France 2 Cinéma  
© 2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma

A  川口哲生くんからやはりピエール・バルーとサラヴァには触れてほしいとのリクエストがありましたが、川野さんひとことお願いできますか?
ちなみにミュージシャンでいえば『冒険また冒険』には、ジャック・ブレルが出ていて確か彼に捧げた一作もあったように記憶しています。

M:ジャック・ブレルの出演(当時は存在を知らなかった)ですし、そんなにピエール・バルーに詳しいわけではありませんが。
彼は日本での活動が長いですが、彼の才能を発掘したのはルルーシュですよね。
初めて日本に来た時ピエール・バルーは、『男と女』ファンが多いのに驚いたというエピソードがありますね。
元々フランス映画は、斬新な劇伴を使うのに定評があります。『死刑台のエレベーター』のマイルス・デイビス、『殺られる』のアート・ブレイキーとか、ジャズの導入もいち早くでしたね。ブラジル音楽はアントニオ・カルロス・ジョビンをフューチャーした『黒いオルフェ』や、サンバをうまく使ったベルモンド主演の『リオの男』とかはありましたが、『男と女』は、映画の中での音楽の存在感という意味で、群を抜いています。

今の時代のモンド作品の元祖ともいえるシャバダバサウンドを、1967年という時代にフィットさせたルルーシュとフランシス・レイの文化的貢献は、映画の世界の中でも、音楽シーンでもエポックメイキングだったと思います。
目のつけどころが素晴らしいというのは、才能の一つですね。
音楽の使い方は、ミケランジェロ・アントニオーニと並んで、ルルーシュはうまい使い方の監督だと思います。

『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』9月3日(土)よりBunkamuraル・シネマ他全国ロードショー
配給ファントム・フィルム

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製作50周年記念 デジタル・リマスター版『男と女』
同時上映『ランデヴー』デジタル・リマスター版
10月15日より、YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー
配給:ドマ、ハピネット

©1966 Les Films 13
©1966 Les Films 13