MIX CLOUD/ LCR Rare Groove-1

MIX CLOUDは、英国のSOCIAL MIX SOUND STREAMING サイトです。
ここには世界中のDJやミュージシャン、メディアが集まり、各自の選曲やミックスを公開しています。
私たちセルクル・ルージュでも、LECERCLE ROUGE JAPONというアカウントを持ち、私たちや仲間のセレクトを、どんどんこの場で紹介をしていく予定です。
2回目の今回は、私のセレクトしたレアグルーヴをお届けします。
レアグルーヴと一口に言っても定義は色々なのですが、私は1967〜75年のファンキーソウルと、それに影響を受けた楽曲をレアグルーヴとして解釈しています。
文字通りレアというエッセンスを重視する解釈もあるのですが、私はグルーヴの方に重点を置く解釈をしています。
非常に狭いカテゴリーなので単調にならないよう、このMIX CLOUDでは、レアグルーヴに共通するサウンド的なエッセンスを持った曲と言う拡大解釈をして、選曲をしていくつもりです。ですから、年代もジャンルもより幅広くなると思います。
下にあるLCR Rare Groove-1というリンクボタンを押して頂くと、MIX CLOUDのページにジャンプします。
以下トラックリストと、簡単な曲の紹介も作りましたので、ご覧下さい。

LCR Rare Groove-1
1. Lalo Schifrin/ Dirty Harry
2. The Equals/ Funky Like a Train
3. Sir Joe Quarterman & Free Soul/ The Way They Do My Life
4. Brian Auger’s Oblivion Express/ Innner City Blues
5. Africa/ Paint It Black
6. Ronnie Smith/ Afrodesia
7. Orgone/ Funky Nassau
8. Bobby Byrd/ Sayin’ It and Doin’ It Are Two Different Things
9. Hank Ballard & Bettye LaVette/ Let’s Go Let’s Go (Thrill On the Hill)
10. April March/ Chick Habit
11. Honey Cone/ Don’t Count Your Chickens (Before They Hatch)
12. James Taylor Quartet/ Breakout
13. Penny Goodwin/ What’s Going On
14. Wah Wah Watson/ Good Friends
Select by Masao Kawano

1は、このサイトのタイトルが1970年公開の「仁義」というフィルムノワールから引用をしているので、同時代のノワールなサントラを使いたいと考え、選びました。ご存知クリント・イーストウッドの刑事モノですが、後半のパーカッションやコーラスの入り方はレアグルーヴ的です。

2は、レアグルーヴが流行りだした頃、URBANから出た12インチを買い、クラブプレイではヘヴィローテーションになった曲です。イントロが派手なので、ジャンルの切り替えやジョーカー的によく使っていました。

3のジョー・クオーターマンも、よく使ったレアグルーヴの代表的アーチストですが、今回はミディアムテンポのこの曲を選びました。

4のブライアン・オーガーは、好きなカテゴリーではあるのですが、あまり深追いはしなかったアーチストです。曲によってフリーソウル的であったり、ソフトロック的であったりするのですが、ソウルフルなこの曲を選びました。

5は、ストーンズのアフロファンク的なカバー。1971年の曲です。原曲のシタールはブライアン・ジョーンズですが、彼は晩年モロッコによく行ってアフリカ的なサウンドに影響されていたので、こういうカバーとの相性も良いと思います。

6のロニー・スミスは、ジャズの世界では最もレアグルーブに近い位置にいた人です。西麻布のP・ピカソで日曜の夜に、アクエリアスという静かなジャズのイベントをやっていたのですが、その時によく使っていた曲です。

7はアトランティックのレアグルーヴ定番曲ですが、オリジナルではなく多少荒削りなカバーチューンを選びました。中盤のパーカッションは、どのカバーでも鉄板に盛り上がります。

8、9は、JBファミリーの王道的なレアグルーヴです。ボビー・バードとハンク・バラードの濃いレアグルーヴはダンスフロアの受けもよく、勝負所でよくかけていました。

10、11は、B級ノーザンソウルのダンスチューン。こういうガーリーなグルーヴも、レアグルーヴの楽しさです。10はタランティーノの「DEATH PROOF」でも使われていました。本人選曲ではないと思いますが、タランティーノのセンスも侮れません。

12は、UKアシッドジャズグループのファンクチューン。ブームで終わった感じでしたが、ジェームス・テイラー・カルテットの直球勝負のスタイルは好きでした。来日した際は、下北沢ZOOにメンバー全員で遊びに来てくれました。

13はアクエリアスで一緒にDJをやって頂いた小林径さんの「ROUTIN FUNK]から拝借。言わずと知れたマービン・ゲイの名曲を、UPPERなダンスチューンにアレンジしています。

14のワーワー・ワトソンは、フュージョン系のギタリストというイメージですが、ここではデビット・ボウイ的なボーカルをフューチャー。これもP・ピカソのアクエリアスでよく使っていましたが、スローなグルーヴ感のある名曲だと思います。

うたうひと

©SilentVoice
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「聞く顔」ってすごく「定義する顔」じゃないすか? つまりその場の状況を定義するのは、聞いている人の顔だったりする

「聞く顔」を撮って、オフでしゃべる人の声がきこえてくれば、状況がすべてわかるような気がする

気鋭の映画作家の作品や声に直接ふれられるウェブサイトLOAD SHOWで、濱口竜介監督作「何食わぬ顔(short version)」を入手したら「顔を巡る対話」という特典文書がついてきて、そこにある濱口監督の上記の発言を噛み締めると、彼と酒井 耕とが撮りあげた東北記録映画3部作(4篇)「なみのおと」「なみのこえ」「うたうひと」が切り取ったいくつもの「聞く顔」がいっそうスリリングに迫ってきた。
2011年3月11日の大地震をいかにかいくぐったか。沿岸部での津波被災者への聞き取り活動から生まれた「なみのおと」、宮城県気仙沼市と福島県新地町の二人一組へと絞り込んだ「なみのこえ」。向き合う二人の対話をひとりの真正面の顔、対峙するもうひとりのそれへの切り返し、真横からのふたり――と、ショットを簡潔に積み重ねながら映画は、語る者の思いをふくんで増幅される意味がいっそ聞き手の顔のほうにこそ映されていく様を静かにあぶりだす。それが作家のあざとい意図として突出することなく、けれどもそうやって人と人とが交わす言葉以上の言葉が物語へと行き着いていくのだと、改めて思わせる。その直截でシンプルな手法。それゆえにくっきりと縁取られていく言葉と意味と心の微妙なずれ。それがあってこそ新たに、より真理に肉薄して現出してくる意味と心。
多分、書き記された記録からはこばれ落ちていくそんな感情の真実の物語/歴史。だからこそ浮上してくる民話という語りの形の可能性に目を向けて第三部にあたる「うたうひと」は3人の語り手とそれを聞くひとりとを向き合わせる。
そこでは語られる同じひとつの昔話が別の語り手の語りによってまた異なる音色や調子を身につけ聞き手の顔に新たな意味を映し込む。差違をのみこんでまた繰り返される言葉。物語。個々のうねりや震えを受け止めて、やがてもたらされる限りない時空、その広がりのことを映画は鮮やかに思わせる。
繰り返された人と自然の歴史のなかにそうやって身を置くこと。対話はスクリーンの向こうとこちらの私たちの時空とももちろん共振していくだろう。そうして映画を見る者にも、もたらされているはずの「聞く顔」。物語/歴史を生きることがそんなふうに他人事でなく体感される大きなグルーブに身をゆだねてみたい。

11月9日(土)よりオーディトリウム渋谷「三部作一挙公開(『なみのおと』『なみのこえ』同時上映)」、16日(土)より渋谷アップリンクにて公開
「うたうひと」公式ホームページ 

人はそれと知らずに、必ずめぐり会う。たとえ互いの身に何が起こり、どのような道をたどろうとも、必ず赤い輪の中で結び合うーラーマ・クリシュナー (ジャン・ピエール・メルヴィル監督「仁義」*原題"Le Cercle Rouge"より)