MIX CLOUD LCR Disco-16

4月も中旬に入り気分も軽やかになるこの季節、
LCR Disco-16をMIX CLOUDにUPしました。
暖かな陽気になってきましたので、
AORっぽい曲を中心に織り交ぜてみました。
下記LCR Disco-16のリンクボタンを押して頂くと、

MIX CLOUDのページにジャンプします。

楽しんで頂けたら幸いです。

LCR Disco-16
shuroom

  1. Lotta Love(disco stereo mix) / NICOLETTE LARSON 1978 00:00
    NEIL YOUNGが当時入れ込んでいた彼女に送った爽やかなラヴ・ソング。デビューアルバム『Nicolette』に収録されているNICOLETTE LARSON最大のヒット曲であり70年代後半の西海岸を象徴する名曲です。このMixは12inchプロモ・オンリーのアナログ盤にのみ収録で、アルバム同様TED TEMPLEMANプロデュース、リミックスはJIM BURGESS。イントロにフルート・ソロを持ってくるなど、アルバムとは異なるロング・バージョンになっています。

  2. Stone Heart (stone woman) / I LEVEL 1983 04:22
    80年代エレクトロ・グループのメロウ・ダンス・クラシック。白黒混合バンドながらUKらしい白っぽいサウンドで、けだるい雰囲気もアリな気持ちのいいタイトル通りストーンな曲です。

  3. Half The Day’s Gone and We Haven’t Earne’d a Penny / KENNY LYNCH 1983 10:12
    60年代から音楽に限らずエンターテナーや役者としても活躍していた人ですが、日本ではほとんど知名度のないアーティストなようです。その彼が1983年にリリースした同名タイトルの3rdアルバムからのシングルは、前半マイナー・コードで進む女性コーラスと途中からのメジャー・コードで入ってくる本人のヴォーカルが独特な、AORとBoogieを足して二で割ったような不思議な魅力を持った12inchです。

  4. Love Talkin’ / ONUR ENGIN 2011 17:15
    DJユース向けに過去の名曲のイントロやアウトロだけをストレッチしたり、ドラムのキックやベースだけを強調したり、最低限の加工を施しながら原曲の良さを最大限引き出したRe-Edit12inchが数量限定でリリースされることがあります。基本的にはオリジナルではないのでRe-Edit物は保有しない事にしていたのですが、さすがにこの12inchを知った時は有無を言わさずに購入してしました。トルコ人DJでRe-Edit職人ONUR ENGIN制作。ヴォーカルなどをズタズタに切り刻んでエフェクト処理するDUB的なMIXではない、オリジナルと聞き間違えるほど原曲に忠実な仕事ぶりには潔ささえ覚えます。

  5. Dance All Night (instr.) / PATRICK BOOTHE 1982 23:54
    80年代UK Boogieの人気モダン・ソウル・クラシック12inchのB面インスト。イントロからスムースに盛り上げてくるホーン・セクションはEARTH, WIND & FIREのTHE PHENIX HORNS。もちろんヴォーカルver.も素晴らしい曲なので、いつかまた別の機会にご紹介します。

  6. I Really Love You (instr.) / HEAVEN AND EARTH 1981 27:45
    シカゴのファンク・グループが1979年に発表したラスト・アルバム『That’s Love』からの12inchシングルのB面インスト。グイグイくるBoogieなベースに高揚感あふれるメロディとストリングスが人気のダンス・クラシックです。

  7. Don’t You Give Your Love Away / STEVE SHELTO 1983 34:19
    これも80年代初期Boogieを代表するクラシック。New York産ディスコ・プロジェクトAREA CODE (212)のメンバーでもあったSTEVE SHELTOのデビュー・ヒット・シングル。12inchはA SHEP PETTIBONE MIX。中盤のビギビギいっているDopeなブレイクがフロアで強力な威力を発揮します。

  8. You’re Not So Hot (instr.) / CAROL DOUGLAS 1982 40:48
    数々のディスコ・ヒットを持つ彼女の1982年の12inchシングルB面。この曲はリリース当時あまり売れなかったとの事ですが、インストVer.に入っているゴージャスなヴィブラフォン・ソロが気持ちいいです。

  9. Touch Me Don’t Stop / PFO 1981 44:46
    イタリア人グループPilgrim Fathers Orchestra略してPFOの12inchシングル。80年代初期は本当にたくさんの魅力的なイタリア産NYサウンドがリリースされました。しっかりとしたグルーヴを刻むベースに個性的で生々しいカッティング・ギターが絡むこのイタロ・ブギーは一度聞いたら忘れられない個性的な一曲です。

  10. Skip To My Lou / FINIS HENDERSON 1983 51:28
    シカゴ出身の人気コメディアンだった彼が、モータウンからのラヴコールで制作した唯一のアルバム『Finis』からの12inchプロモ・シングル。濃すぎないアレンジと哀愁漂う彼のファルセットはあくまでもライトタッチでAORと言っても過言ではないメロウ・ダンサー。プロデュースはなるほどのEW&FのギタリストAL McKAY。

  11. The Path II / RALPH MacDONALD 1978 56:27
    ジャズ・フュージョン界で様々なレコーディングに参加していた売れっ子パーカション奏者のソロ・アルバム『Path』からの12inchプロモ・シングル。この曲は『The Path』『The Path 1』『The Path 2』『The Path 3』とあるのですが、ここではスチールドラムをフューチャーした『The Path 2』を取り上げています。

  12. Rainbow / MADAGASCAR 1981 58:06
    L.A.のキーボード奏者でソングライター・プロデューサーのJOHN BURNSを中心に、アメリカ東西の凄腕スタジオ・ミュージシャンが集結したバンド唯一のアルバム『Spirit of The Street』より。アーバン・ソウルの人気曲として、マニアックなファンの間では有名なこんなにいい曲がシングルカットされていないのが本当に不思議です。

  13. This Must Be The Place (naive melody) / TALKING HEADS 1983 62:04
    THE CUREの ROBERT SMITHをモデルにSEAN PENNが主役を好演した映画『きっとここが帰る場所/This Must Be The Place』は最近観た映画の中でも柔らかに心に染みるいい映画でした。その原題で主題曲でもあるこの曲は、もともとはTALKING HEADSのアルバム『Speaking in Tongues』のラストに収録されていたものです。今回は同名の12inchから録りましたが、アルバムは初回プレスで2種類存在し、DAVID BYRNE自身のデザインによる黄色いイラスト・ジャケットの通常盤と、アメリカン・コンテンポラリー・アートの巨匠ROBERT RAUSHENBERGによる、「黄」「赤」「青」からなる透明プラスティック製のスペシャル・アート・パッケージ盤がありました。もちろん迷わずRAUSHENBERG盤を入手しましたが、しかしその扱いづらさは尋常ではありませんでした。

  14. A Nice Feeling / CAROLINE CRAWFORD 1978 66:20
    数多くのファンク・チューンを放ったHAMILTON BOHANNONプロデュースのシングル。近年A面の『Coming on Strong』が人気の12inchですが、このB面も程よくレイドバックしたトロピカル・フィール溢れる気持ち良さでこれからの季節に最適です。

  15. Moonlight Feels Right / STARBUCK 1976 70:58
    ジョージアはアトランタ出身のSTARBUCK1976年同名デビュー・アルバムより。発表から約40年たった今でもまったく色褪せないMy Favorite Songの一つです。ほどよくファンキーでAORフィール満載のこの曲は、ちょっとクセのあるヴォーカルとマリンバ・ソロがいい雰囲気を醸し出しています。

  16. Georgy Porgy / TOTO 1978 74:32
    TOTOデビューアルバムからの12inchシングル。『Got to Be Real』CHERYL LYNNソロ・デビュー前の最初の仕事でもあります。彼女が歌うサビ・パート「Georgie Porgie, puddin’ and pie, Kissed the girls and made them cry…」ですが、元々はマザーグース関連曲の歌詞だそうです。

CINEMA DISCUSSION -10 (part1) /”JIMI:栄光への軌跡”~Jimi Hendrix in swinging London

©AIBMS, LLC 2014 ALL RIGHTS RESERVED 
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新作映画を複数の視点からとらえ、映画評論の新しい手法を考えようとしてスタートしたセルクル・ルージュのシネマ・ディスカッションも、今回で10回目となりました。
今回は、私たちが紹介していきたいと考えている世界=MUSIC×CINEMA×FASHIONを象徴的に描いた作品が2本相次いで公開されますので、前後半に分けて、2作品を比較しながら、紹介する事にしました。
その2作品は、共に偉大な黒人ミュージシャンを描いたアンソロジードラマ『JIMI:栄光への軌跡』と、『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』です。
『JIMI:栄光への軌跡』では、ジミヘンことジミ・ヘンドリックスがスターダムに上っていく1966~67年の姿が描かれ、『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』では、JBことジェームス・ブラウンの波瀾万丈な一生が描かれています。
今回はpart1として、公開が早い『JIMI:栄光への軌跡』を、ご紹介します。
ディスカッションメンバーはいつものように、映画評論家川口敦子をナビゲーターに、名古屋靖、川口哲生、川野正雄の4名です。

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川口敦子(以下A):まず見る前に予想したジミヘンとその時代の描き方と違っていましたか?
また違っていたらどのあたりが違っていましたか?
それは肯定できるものでしたか?

川口哲生(以下T):代表的なbiopicはその主人公の成功の頂点に焦点が置かれると思うが『JIMI:栄光への軌跡』ではアメリカのブレイクの前のロンドンでの2年、そしてタイプの違う3人の女性との関係性にフォーカスしている点が逆に潔くて面白かった。その後のモンタレイやウッドストックのジミヘンがより私たちが見聞きしてきたジミヘンだろうから。そういった意味でいわゆる代表曲でないブルースのカバー曲の再演が、そうした時期のジミヘンや無い物ねだりでブルースを求める60年代後半のロンドンを感じさせる方向で機能していたように思います。

名古屋靖(以下N):ジミヘンは容姿だけでなくその仕草も本人のようで、違和感なく物語に入り込めました。実際もこんな感じの若者だったんだろうなあと納得できる雰囲気も感じてよかったです。
パンフレットのピーター・バラカン氏のインタビューやその他資料に間違いがない限り、ほとんどが実際にあった話なようです。白いストラトキャスターをやりとりするエピソードがさすがに全て真実だとは思いませんが、この高潔なラヴ・ストーリーを象徴する重要なシーンですし否定はしません。

川野正雄(以下M):ジミヘンの細かいバイオについては、実はあまりよく知らなかった。
キースの彼女のエピソードとかは新鮮でしたし、英国で先に火がついたというのも、映画を見て、納得出来ました。
描かれているのが2年間限定の話とは知らなかったので、謎の死まで描かれていると思っていました。
僕の中のジミヘンのイメージは、先日川口君がここで紹介したミック・ハガティがアルバムデザインと、ビデオをディレクションしたベスト盤に依る部分が大きいです。

A:JBも合わせて伝記映画として臨みましたが、それぞれ映画としても予想以上に面白かった。裏返すともしかしたらもう少し退屈な、ただスターの軌跡の光と影を追うみたいな、スターへの興味やその人の面白さだけで見せて、映画としての面白さはないがしろになっているようなもの、つまりありがちな“伝記映画”を予期していたといえるかもしれません。
伝記的な事実とフィクションの部分に関しては、どうですか?
周囲の人間の配し方もそれぞれ興味深いですが、現実の関係に忠実とはいえない部分もあるようですが?

N:キース・リチャーズの彼女とジミヘンのプラトニックで高潔な恋愛。 肌の色や階級など超えられない現実に苦しんだ事で濃密にならなかった絶妙の距離感が最後までジミヘンの心を掴み続けていた彼女ですが、はたして現実で彼女はどこまでジミヘンに入れ込んでいたのでしょう?実際は単にプロデュースごっこが楽しかっただけなのかもしれませんね。

M:キースの彼女との関係性はプラトニックなのかとか、真相はよくわからないですよね。
アニマルズとの関係含めて、英国の音楽シーンと、ジミヘンが密接な関係にあったという事が、非常に良くわかりました。
クリームへの乱入シーンは、映画の中でもハイライトですが、実際にあのような事はあったみたいですね。あそこは『マニッシュ・ボーイ』ではなく、ハウリン・ウルフ最高のファンキーブルース『KILLING FLOOR』を、やって欲しかったですが。

N:あの時、クラプトンは実際に途中でステージから降りたみたいですね。後にジェフ・ベックもジミヘンから「あんたのブルースは気持ちわるい」と指摘され、ブルースからクロスオーバーな方向へ転換して行ったという話を聞いたことがあります。

A:いわゆるアーティストの伝記映画の定型をはみ出す語り方、展開の映画だと思います。66,67年にしぼりこんでブレイク前の知られざる物語に光をあてる。この部分に関してはどんなふうに見ましたか?
因に『JIMI:栄光への軌跡』の監督ジョン・リドリーは、米・ウィスコンシン州出身の黒人で『それでも夜は明ける』の脚本や『スリー・キングス』の原案を担当してきました。目下、米社会のマイノリティへの差別問題にまつわる実在の事件を追うテレビ作品を準備中だそうです。

T:ジミヘンはボブ・ディランとか聞きつつ、アメリカではヒットせず、むしろ無いものねだりのイギリスで「ブラックネス」「ワイルドさ」「ブルース」として評価される。監督は私たちの知っているジミヘンの、私たちの知らないイギリスでの人間関係やその時代性にフォーカスしているように思います。もちろんロンドンだって西インド諸島からの移民についての差別や偏見はあっただろうが、音楽的な世界では許容性、がアメリカの白人に比べ格段に広かったのだと思います。映画もジミヘンの欠けている心を満たすピースとしての異なった女性像を描くことで、人間ジミ・ヘンドリックスを描いている。

N:彼を語る上でどうしてもついて回るドラッグとの関係についてはあえて多くは語らずに、伝説のギター・モンスターになる前の内気な青年の物語は逆に新鮮でした。彼が最も人間らしく、がんばって生きた2年を描いてるのは正解だと思います。

M:根底に黒人問題が色濃くあるように感じました。
世界で初めて黒人が白人と混成グループを結成し、白人が聞くロックを演奏する。
そこにジミヘンの先駆性があった訳で、それまでどの黒人ミュージシャンもやれていない事を、彼はなしえた。
そこに至る過程のドラマや彼の天才性を描くことが、デビュー2年間1966~67年という世界的に音楽の過渡期であった時代性を象徴することになるのではないでしょうか。
人種差別の空気が色濃かった60年代の米国より、モッズカルチャーの流れで、ブラックミュージックへのリスペクトが根付いている英国でのデビューを選んだジミヘンの選択は正解だったと思いますし、その部分にフォーカスする事で、映画的な面白さも増したと思います。
モンタレイ・ポップ・フェスティバル直前までを描いている訳ですが、その後ジミヘンは一気にスターダムを駆け上がり、あっという間に消えてしまう。
最近1969年に開催されたウッドストックのギャラリストが公開されたのを見ると、ジミヘンは、フーを抜いてNO1だったので、驚きました。
でもその翌年の1970年には変死して、ロックスター27歳限界説の27club入りをしてしまう訳で、彼の短い人生で一番充実していた日々を描いているのではないかと思います。
ストーンズのマネージャーだったアンドリュー・オールダムが、ジミヘンをスルーしてしまうエピソードなども、すごく面白かったです。
ストーンズとの交流は、渡英後も濃かったようで、この映像にはキースの彼女ぽい女性も登場します。
ポップミュージックの世界で言うと、1966~67年は、音楽が多様化し始めた非常に重要な時期ですね。
ロックで言えばそれまでのR&Rやビート系のシンプルな音から、サイケデリックなサウンドに変わりつつある時代。
演奏の進化と、録音技術などテクノロジーの進歩が合わさり、新たな音が生まれてきた時期だと思います。
ストーンズでいえば『黒く塗れ!』で、大きくサウンドは変化しました。
映画にも登場するアンドリュー・オールダムは、この頃はストーンズよりスモール・フェイセスを、ストーンズも所属していたデッカレーベルから自分が設立したイミディエートレーベルに移籍させる事で忙しかった筈です。
多分新人の黒人ギタリストにかまっている暇は無かったんだろうなと思います。
レーベルを移籍したスモール・フェイセスも、デッカ時代のモッズ路線から一歩進化した『Itchycoo Park』を、やはり1967年にリリースしています。
映画に出てくるアニマルズなんかは、逆に変革がうまくいかず、苦しんでいたグループだと思います。
こういう音楽の流れの中で、ジミヘン独特のセンスや卓越したテクニックは、自然の流れとして、求められたのではないでしょうか。

A:ブレイク前の短い時間に絞り込んで、本人もそうですが周りの人々のそれぞれのスタンスを丁寧に掬っていくところが映画として面白かった。アメリカへの再上陸、空港に降り立ったところ、モンタレイへと向かう、キャリアの幕が上がるところですとんと映画の幕を下ろすという余韻の差し出し方も、いやみじゃなく決まっていたのではないでしょうか。映画そのものがトリップしているみたいな語り口と編集も然りですね。女性たちのそれぞれの(英国的階級社会への目ものみこんだ)性格付けというあたりも興味深かったです。

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A:60年代、公民権運動、ブラックパワー、スウィンギング・ロンドン等々、時代、対抗文化はたまたファッションといった背景への目もアーティストを描くのと同等のポイントになっているように思いますが、時代の描き方はどうでしょう? この時代の面白さに関してはどう見ていますか?

N:60年代ロンドンの古着屋でのシーンはワクワクしますね。 スウィンギング・ロンドンな感じもファッションも楽しめました。 男の子たちのファッションがいまいち地味だったのが残念でしたが、実際はあの程度だったのかもしれませんね。

M:ミケランジェロ・アントニーニの『欲望』と同時代の1966~67年にフォーカスしている為、スウィンギング・ロンドンの演出を随所から感じられました。

ビートニク映画祭の『スウィンギング・ロンドン1&2』には、ジミヘンも登場していましたが、この映画とも重なってきます。
僕も古着の試着のシーンは、すごく好きです。ミック・ジャガーの弟のショップだったなんていうエピソードもありますが。
彼のファッションセンスは独特で、多分他の人が真似ても似合わない。でも彼のある種派手で、ゴージャスに見えるスタイルは、カリスマ的な雰囲気を醸し出していると思います。
マカオのハードロックホテルのカジノに、ジミヘンを象徴するような彼のベストが展示してありました。
そのサイズの小ささにちょっと驚いたのですが、サイケな感じの色使いとか、やはりジミヘン独特のものでした。
ロンドンのクラブマーキーに、ジミヘンとフーなどが出演した貴重な映像があります。
フーの荒々しい演奏もかなりなものですが、ジミヘンの演奏する姿も曲も、すごく格好いいです。
ピーター・バラカン氏が、当時のジミヘンを見たのも、このマーキーでの一連のLIVEだったそうです。

T:リンダなんてまるでデヴィッド・ベーリーの世界感だろうし、タートルネックにジャケット着ているストーンズからブライアン・ジョーンズみたいなファッションの要素の混ざり方になっていく時代だったのでは。サイケデリックがかかってくるころでしょう。フリルとかモールとか、ジミヘンの印象とかぶりますね。
ミリタリーを着ていて迫害されるシーンがありますが、実際にもあったのではないかと思います。

M:この時代アメリカでは、ディランがフォークロック路線を確立し、西海岸ではヒッピーやサイケデリックが登場寸前でした。ジャマイカではスカが生まれ、ラテンではブガルーが誕生するなど、音楽シーン全体が熱く進化していった時期だと思います。
日本ではザ・タイガースが1967年にデビューし、歌謡曲一辺倒だった日本のポップミュージックシーンに、GS=バンドという概念を定着させています。ザ・スパイダースは、ジミヘンのようなミリタリールックを、全員で着たりしていますね。映像を見ると、かまやつひろしさんは、かなりジミヘンを意識している感じで、ジミヘンが最先端のロックを象徴するような存在だったのではないでしょうか。
ブラックミュージックでも、ソウルやR&Bの時代からファンキーソウルに変わっていった時期ですね。次回取り上げるジェームス・ブラウンは、1967年『COLD SWEAT』で、ファンキーな彼独自のリズムを確立しています。
そういった世界的な音楽の新しい潮流が集結していたのが、当時のロンドンなのではないかと思います。
ロンドンという土地と時代が、ジミヘンのようなカリスマの登場を求めていたのではないでしょうか。
映画では描かれていない米国に戻ってからは、サイケデリックなサンフランシスコを中心にしたムーヴメントが起こってきて、彼と共に当時のロックシーンは動いていたような感もあります。

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A:映画内での楽曲は、遺族の許可を得られず本人の曲を使えないという不自由があったようです。それを逆手にとる部分も感じられませんか?

N:音楽家の自伝物で、演奏シーンがこれだけ少ないのにこんなに引き込まれる映画も珍しいですね。その分、クラプトンとの初セッションやビートルズの前での演奏のシーンは見ているこちらも興奮しました。
演奏前、アンプにギターのプラグを挿すところは個人的にとても好きなシーンで、何度見てもドキドキします。このシーンだけでこれが良い音楽映画なことが分かります。
ジミヘンに扮した主人公アンドレ・ベンジャミンの弾く姿もワディ・ワクテルのギター演奏も素晴らしかった。

M:最後もビートルズのカバーで、原曲使えずしまいですが、特に違和感はなかったです。これがモンタレイ以降も描くのなら、ちょっと厳しかったかもしれません。
カバー中心だが、楽曲というより、その演奏力にフォーカスしているので、楽曲の差はあまり気にならない。当然オリジナルのメジャー曲があった方が盛り上がるが、カバー中心の劇中曲の演奏力も高いですし、問題ないですね。
JBに比較すると極端にLIVEシーンは少ないですし、彼が開発した独特の機材を使いこなす奏法~ファズやワウペダル、エフェクターなどに関する描写もないのは、あえてその領域に踏み込まないという演出の判断ではないかと思います。
ただ先ほどのマーキーでの実際の演奏などを見ると、『PURPLE HAZE』が相当格好いいので、もし使っていたら、もっとテンションが上がる映画になっていたかもしれません。

A:ガールフレンドへの暴力の部分が存命の彼女から事実と違うと抗議されているようですが、伝記的な整合性に執着せず、また知られざる存在だったジミヘンを不在の中心みたいに置いてむしろ往時の紫の煙の中にいるような経験を押し出しているのが面白いですね。

T:音楽的に言えば、アメリカで売れるためにはスライ&ザ・ファミリー・ストーンやプリンスみたいに黒人でもロック的なアプローチが必要なのかもしれない。映画で描かれているジミヘンを見出したリンダは彼のブルースの演奏が好きで、売れ線の音楽はやめてブルースを、みたいなスタンスだったそうです。一方ジミヘンはロンドンを経てモンタレイ、ウッドストックでアメリカでは評価される。でも逆にハウリン・ウルフとかが「白人と組んで金儲けしている」と批判したようにアメリカでは白人向けロックスターで裏切り者という評価もあるから皮肉ですね。

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A:有名なエピソードが幾つも描かれていますが、知っていたエピソードはありますか?
また主演のアンドレ・ベンジャミンのイメージは、ジミヘンのイメージと重なっていましたか?

N:知っているエピソード、結構ありました。昔ピーター・バラカン氏がどこかの雑誌のインタビューで、彼が18歳の頃にロンドンのライヴハウスで売り出し中のジミヘンを初めて観たのを読んで、なぜアメリカ人の彼がロンドンで売り出したのか?それをきっかけに書籍やWebで色々調べた事があったので、ほとんどのエピソードは聞いたことがありました。

M:クリームへの乱入は、聞いた事があります。
ギターに火をつけるパフォーマンスは、映画的にはやって欲しかったですね。
サイケデリックのレジェンドになった、小柄で左利きの天才ギタリストとして、主演のアンドレ・ベンジャミンは、イメージ通りでした。

N:アンドレ・ベンジャミンは違和感無かったですね。ラストの空港をメンバーと歩く後ろ姿なんて、まるで本人のようです。

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A:ジミヘンは、どのようなものを音楽シーンに刻んだと思いますか?

N:ジミヘンは肌の色やジャンルなど関係なく、エレクトリック・ギターの可能性を最大限引き出したギタリストです。極論を言えば彼以降は、世のギタリスト全て彼の真似をし続けていると言っても過言ではありません。言いかえれば、彼がいなければロックは無かったか、もしくはもっと違った物になっていたかもしれません。 いい音楽はジャンルを越える事を教えてくれたのもジミヘンです。

T:ジミヘンはジャンルを超えたということでしょうか。ブルース系譜のクラプトンだけでなくクロスオーバーっぽいジェフべックとかにも影響あったんじゃないかな。エレクトリック・マイルス(ディヴィス)にだって。

M:サイケデリックロック。ブラックロック。ギターロック。
それら全てのファンデーション。

A:この作品の一番の見所は、どの辺になりますか?

M:ブラックロックが生まれる瞬間。
1966~67年のロンドンの熱気。

N:キースの彼女との恋愛物語。

T:音楽Xファッションでの当時のロンドンの熱気みたいなところ。そして前にも言ったけれどタイプが違うジミヘンの周りの女性たちとの関係性からの新たなジミヘン像。

A:大西洋の両岸を結ぶ横へのつながり、50年代のビート、60年代ディランらのフォークといった縦の(時代的)つながり――と、去年このディスカッションでとりあげた映画とももう一度、比べたくなる赤い糸(笑)の面白さもありますよね。

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A:このようなバイオ映画として、取り上げて欲しいアーティストはいますか?

N:ルー・リードとかですかね。晩年のパートナーがローリー・アンダーソンだったり、アンディ・ウォーホルやニコも出てくる。

T:マーク・ボラン。

A:イギー・ポップとかパティ・スミス。パティ・スミスは、確かテレヴィジョンのトム・ヴァーレーンの元恋人でしょ。サム・シェパードとの再会がぐっとくるドキュメンタリーばなれしたドキュメンタリー『パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフ』も最高でしたが、シャルロット・ゲンスブール主演の伝記映画っていうの撮ってほしいなあ。

M:生きている人は、遠慮が出てしまうと、難しそうですね。
ジョニー・サンダースや、マルコム・マクラーレン。
色々伝説があるし、マルコムならファッション含めてとか。
それとザ・フーのドラムだったキース・ムーンとかかな。

N:キース・ムーンは、プレイもプライベートも目茶苦茶な人だったから、面白いかもしれませんね。

『JIMI:栄光への軌跡』
4月11日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、有楽町スバル座、
新宿武蔵野館(レイトショー)ほか全国公開中。

5月になりましたら、CINEMA DISCUSSION 10 PART2として、『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』を取り上げる予定です。

人はそれと知らずに、必ずめぐり会う。たとえ互いの身に何が起こり、どのような道をたどろうとも、必ず赤い輪の中で結び合うーラーマ・クリシュナー (ジャン・ピエール・メルヴィル監督「仁義」*原題"Le Cercle Rouge"より)