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1961年東京生まれ。 川野氏の2学年後輩として1980年代前半に川口氏と出逢う。 15歳から始めた音楽収集は現在も継続中。アナログレコードをこよなく愛す。 20世紀終わりには、アメリカまで好きなバンドを追いかけるため会社員を辞める。 社会復帰後まじめに働きつつも、自分に出来ることと役割について未だ妄想模索中。 Music: 70~80's Rock & Disco Boogie, early House, Clube de Esquina, Phish Cinema: Andrei Tarkovsky, Leos Carax, Jean-Jacques Beineix Style: HippieからNeo-Tradまで。30年ぶりにJ.M.Westonの履き心地にしびれる。 Food: 美味しいものがすき。でも好き嫌いあり。

西荻窪の壱年茶虎


JR中央線で快速電車が止まらない西荻窪。不便な分だけマイペースで個性的だけど美味しい飲食店が少なくないこの街に、ちょっと魅力的な中国料理の店があります。駅北口から歩いて5分ほどの場所にあったバルの店舗を、今年一年限定で間借営業しているのが、今回ご紹介する中国武蔵野地方料理店「壱年茶虎」です。


ここを知ったのは数年前「一日一組限定完全予約制で、今まで食べたことのない中華料理を出す店が三鷹にあるらしい。」という、去年まで店主が自宅で営んでいた中華料理店「虎茶屋」の噂からでした。何度か予約を取ろうと挑戦したもののその度にお断りされたこともあり、名前を少し変えての今年の営業を知った時は本当に嬉しい限りでした。

オーナー料理人は音楽家の倉林哲也さん。チェロで弾き語りする他、バンド形態で自作曲を奏でたり、最近では井の頭公園を題材にした映画『PARKS パークス』で彼のオリジナル曲がオープニングに使用されました。ペンギンカフェ・オーケストラが好きな彼らしい、美しくゆったりとした気分にさせてくれる音楽は、ご本人のちょっととぼけたキャラクターと相まってさらに愛らしく聴こえてきます。

そんな倉林さんに「なぜ中華料理を始めたのか?」質問したのですが、モゴモゴとしてはっきりした答えは貰えず。音楽の方が先で、中華料理はただ作っていくうちにどんどんはまって行ったとのこと。しかし実際に料理を食べてみると、彼の中華料理人としての造詣の深さと確かな才能に驚かされます。よく他でありがちなオイスターソース味やピリ辛味などの中華定番の味は出てきません。多量の油や濃い味付けに頼ることもなく、当日仕入れた新鮮な食材と、実際に中国に行って手に入れた味わったことのない調味料等を使いながら作る「中国武蔵野地方料理」と謳うオリジナル料理は、一皿ごとに違う味のバリエーションを満喫することができます。

ワインは厳選された美味しいヴァン・ナチュールが揃っており、とても魅力的な価格で提供してくれています。今年最初に伺った頃と比較してもワイン在庫の充実度は確実に増しています。ワインが好きで自身がセレクトを楽しんでいるのが分かるラインナップです。その他、独自に選んた地ビールと日本酒もお薦めです。またアルコールが苦手な方には、現地で入手した各種中国茶を様々な方法で飲ませてくれたりもします。

しかし残念なことに「壱年茶虎」は今年2017年12月30日までで、残り約3ヶ月の営業となりました。毎回行くたびに来年の予定を聞くのですが、本当に決まっていなのか?意地悪されているのか?いつも「まだ決まってません。。。」ととぼけられてしまいます。小さな店で席数も多くないので、当日の予約は取りづらいかもしれませんが、是非とも、彼と彼の料理に逢いに行ってみてください、ほっこりできます。


まず1本目はイタリアはリグーリア州の、皮ごと醗酵させた少し色の濃い白。見た目よりさっぱりとした、一本目に飲むには最適なワイン。


前菜三品
一人一皿に小分けしてもらっています。よく見ると三品でなく四品ありますね。右上から時計回りに、ナスのイワシ酒盗和え、チャーシューのツルムラサキのソース添え、かぼちゃ卯の花、やまえのきとニンニクの花和え物。全部食べたことのない味と取り合わせの妙。イワシの酒盗と、卯の花のミントが驚きのアクセントに。


秋鮭と舞茸腐乳蒸し
皮や骨を取り除いた厚みのある旬な鮭切り身に、腐乳のペーストを乗せて蒸したもの。クセのある腐乳ですが臭みは一切なく、発酵系だからかコクのある塩麹のようで美味。蒸して出た汁も楽しめるように、こちらも一人づつ小皿で蒸してサーヴしてくれました。


さんまの入った家常豆腐
自家製の厚揚げと季節の野菜を炒めて、旬のさんまを肝も含めてミンチ状にし合えた料理。見た目にその存在感は無いに等しいのですが、食べてみると口いっぱいに香ばしいさんまの旨味が広がります。


早くもワイン二本目に突入。最初から二本目で注文すると決めていた、MICHEL GAHIERのシャルドネ・レ・フォラス 2015。私たちがヴァン・ナチュールにはまったきっかけになった生産者のワイン。ボリューム感もあって熟した果実も感じさせながらキレも良く、後味はJURAっぽいバタースコッチかハチミツのような風味が鼻をくすぐります。


いかとセロリの炒め
いかの柔らかさとセロリのシャキシャキの食感の取り合わせが絶妙。はらわたを使ったソースが味に深みを与えています。


カツオと甘唐辛子の炒めもの
刺身で食べられるカツオをリクエスト(レア~ウエルダン)に合わせて蒸し器で熱を入れ、大ぶりの甘唐辛子とグレイビーっぽいソースで合わせた料理。通常中華では炒める前に素材を油通ししますが、この店では蒸し器を使って素材を蒸すことで自在に火を通します。おかげでどの料理も必要以上に油を摂取することなくさっぱりいただくことができます。


鳥レバーと韮炒め
ふわふわに柔らかい鳥のレバーと韮を、基本は醤油だと思うのですがその他謎の香辛料を使った見た目より深い味の炒め物。


酸湯砂鍋
野菜と鶏肉の入ったシンプルな鍋。酸辣湯とトムヤムクンを足して2で割ったような、食べたことがあるようで無い新鮮な味。レモングラスのような爽やかな香りと同時にキリッとした刺激が美味しかったので、この味は何なのか?質問すると、先月中国に行った際に手に入れた「貴州省の山胡椒」の味とのこと。そのまま食べても胡椒と言うよりは、レモンの香りのする花山椒のようなスパイスでした。


話も弾み、二本目のワインも空になってしまったので、ぬる燗で日本酒を。広島は竹鶴酒造の純米酒。簡単には手に入りづらい銘柄ですが、純米らしい米を感じる深い味わいは食事との相性も最高です。


日本酒を頼むついでに、わがままを言って酒のアテをお願いしました。
サツマイモの米麹和え、わさびの茎を6ヶ月間たまりに漬けたもの、キュウリを醤油と酢と少しだけの砂糖で味付けした漬物。ぱっと見に適当に見えてもそれぞれ実は凝っている。突然無理なお願いをしても、ささっと面白いものを出してくれるのが嬉しいです。


普段はマイペースで朴訥とした倉林さんですが、調理中はテキパキしています。笑

壱年茶虎
0422-77-6769

高井戸のGiardino dal 1971

行くべき店や行ってみたいお店は数あれど、通いたくなるお店に巡り会えた時の嬉しさはまた格別なものがあります。今回ご紹介するジャルディーノ(Giardino dal 1971)はイタリアンなのですが、今まで食べ慣れたそれらとは一戦を画く、自分にとっては新たなジャンルと言ってもいいくらい新鮮な印象のお店です。

吉祥寺から京王井の頭線各駅停車で5つ目の高井戸。美味しい店がある印象のないこの駅から徒歩5分、交差する環状八号線から斜めの小道を入ってすぐのところにジャルディーノはあります。約10年間イタリアで修行したオーナー・シェフの太田さんは、北から南までイタリア各地を巡りながら、日本人である自分の華奢な身体に合った、重すぎない、毎日食べられる、身体に良い、本当に美味しい料理を探し求めてたどり着いたのが、イタリア半島中央のちょっと上に位置するマルケ州の、それも海沿いではない内陸は丘陵地区の農民料理だったそうです。
イタリアンにありがちな強い塩味でパンチを効かせるようなこともなく、高価で派手な食材に頼ることもせず、野菜や豆を多用する調理法は庶民的ですが、素材そのものの旨みやコクを最大限生かした滋味溢れる料理を、リーズナブルかつ小さなポーションで色々楽しく味わうことができるお店です。
肝心のワインですが、イタリアはもちろんのことフランスの美味しい生産者のものや、東欧のマイナーなものまで、自然派ワイン=ヴァン・ナチュールのライナップがかなり充実しており、毎回赤・白それぞれ5〜6本の中からグラスでもボトルでも快く注文に応じてくれます。その際にはどんなに忙しくても太田さん本人が、ボトルごとに、生産者、生産地、ブドウ品種、生産方法から、味、香り、印象など、一本一本時間をかけて丁寧に説明してくれます。また料理をサーヴする際も、その成り立ちや現地の食べ方など一皿ごとに教えてくれるのもイタリアの庶民文化が窺い知れてとても楽しみです。
以前このサイトでご紹介した、東松原のCHERRYもそうなのですが、このジャルディーノも料理からワイン・サーヴまでたった一人で切り盛りしています。美味しいのが一番ですが、料理と自然派ワインを心から愛し、妥協を許さず我が道を行っている彼らとの楽しいひとときは時間が経つのも忘れてつい飲みすぎてしまいます。派手さはなくマイペースなジャルディーノですが、また行きたくなるとても魅力的なお店です。

まずは、食事前にワインを選びながらつまむサービスの突き出し『パスタレッレ』をいただきました。決まった形はない焼き菓子だそうで、今回は小さなビスコットの形にして、つなぎに赤ワインを使っているので赤ワインに漬けて食べる方式で。イタリアではおじいちゃん達の大好物だそう。

今回選んだワインは『ブレッサン カラット2011』
濃い色のしっかりした白。ヴァン・ナチュールの割に時間が経ったボトルですが、見た目の印象以上に果実味が残っているのは良いブドウを使っている証拠。時が経つとワインとは思えないスモーキーな感じも出てきて時間ごとに変化を楽しめます。魚介類以外ならオールマイティに負けません。

毎回行くたびに必ず頼んでしまう前菜『ブッロ・エ・アリーチ』ちょうどいい大きさにカットしたホカッチャの上に独自の製法で作ったアンチョビと発酵バターを乗せたおつまみ。癖になります。

『ホウレン草とグラナパダーノチーズのサラダ ミルフィーユ仕立て』
一見グリーン鮮やかなただのサラダですが、食べてみるとホウレン草とチーズが確かな層になっていて口の中でミルフィーユ状態になります。上に乗ったレモンの皮とホウレン草の組み合わせが新鮮です。

こちらもサービスで出してくれた『トルタ』
本来はジャガイモを擦ってお焼きのように焼くところを、日本ですし旬なので出汁で下ゆでした里芋で作り、上に柚子を乗せたとのこと。レンズ豆のピュレ、自家製の酸味のあるチーズ、チャービルと一緒に。

『モルタデッラソーセージをのせたポテトサラダを北海道産山わさびと共に』
薄切りのソーセージの下には潰していないポテトサラダが敷かれています。すりおろした白い山わさびが不思議とイタリアンらしさを助長しています。

『京菜の温かいサラダをポテトピュレとアンチョビパン粉と共に』
シェアしづらい料理を頼んだ場合、ここでは量を半分にして2皿に分けてサーヴしてくれます。アンチョビのコクと塩味が効いたパン粉が香ばしい、日本の京菜でアレンジしたスプーンで食べる温かいサラダ。

『豚のカシラ肉とフキの煮込み”スペッツァティーノ”』
豚と野菜を少しのトマトで煮込む料理だそうですが、今回はオリジナルアレンジでフキを使ってみたとのこと。フキがまるでルバーブのようで意外と洋風煮込みと合っているのと、フキ独得の歯ごたえが心地よい一品です。

『イタリア風ミートボール”ポルペッティーネ”とホウレン草の煮込み”イン・ズィミーノ”風』
こちらも素朴な煮込み料理。肉の風味と野菜の旨みを楽しめます。

『自家製ソーセージ”サルシッチャ”』
今まで色々なところでサルシッチャは食べてきたつもりですが、ここのはまた格別です。バラ肉と肩ロースを塩と胡椒でシンプルに味付けしてワインで軽く風味付けしただけとの事ですが、何か他に入れてるんじゃないの?と疑いたくなると美味さです。付け合わせのレンズ豆もいい。

『月曜日のラザニア』
名前の由来は、日曜日の食べ残しを月曜日に食べるイタリアの古い習慣から。あえて出来たてでない温め直したラザニアです。パスタは柔らかめですがソースとの一体感は作り置きの方が美味しいのかもしれません。

『メレンゲのお菓子、チャンベローネ、カスタローネの3点盛り』
奥のピンクのお菓子がカスタローネ。粉を練ってニョッキのように一度茹でることで、生麩菓子のような独特の弾力を持たせたものを、ズッパイングレーゼにも用いるピンクのリキュール、アルケルメスと砂糖で甘く着色しています。太田さんによると今の時季(2月)イタリアはカーニヴァルのシーズンで、カスタローネはお祭りの際に作るイタリアを代表する庶民的なお菓子の一つだそうです。

『ホワイトチョコとヨーグルトのクリームをカカオのビスケット、フローズンラズベリーと共に』
こちらもいつも最後に頼んでしまう定番のデザート。写真は1人前を2つに分けてサーヴしてもらったものです。

手前の3本は、最初のボトルが7番目の皿で空になったのでその後2人で3種をグラスで1杯ずつ飲んだ赤ワインたち。後ろで料理を作っているのが、オーナーシェフの太田さん。
いつものように食後酒もしっかりいただき、いつものように千鳥足でごちそうさまのご挨拶。また来ます。

Giardino dal 1971
TEL 03-5941-8546