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THE BLING RING 「ブリングリング」

©2013 Somewhere Else, LLC. All Rights Reserved
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カラッとした明るいLAを舞台に、ファッショナブルなモード全開でお屋敷に忍び込んでは買い物をするように楽しく盗みを繰り返す10代の若者達。そのターゲットは彼らが憧れるハリウッド・セレブリティの面々。2008年から2009年にかけて実際に起きた事件を題材に淡々と進んで行くこの物語は、ファッションやブランドに興味がある方なら次々と出てくる本物の、服、靴、バッグ、インテリアを見ているだけでもワクワクする、まさにブリングリングな映画です。特に劇中登場するパリス・ヒルトン邸は実際に盗難にあった本人宅を使って撮影されたものですが、まるで作られた映画セットのように現実離れした部屋の数々に驚かされながらも笑えます。窃盗団リーダーの一番のお気に入りが、被害者のひとりでハリウッドの問題児として有名なリンジー・ローハンというのも納得です。

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軽いタッチでお洒落な映像は「ゴシップガール」のようなアメリカのTVドラマを見ているような錯覚を覚え、ソフィア・コッポラの映画を見ている事を忘れてしまいそうになるところもありますが、モダンな建築物や光の絨毯ともいわれる夜景の映像などさすがに美しい。Los Angelsはつくづく絵になる街です。先日やっとDVDで観る事ができた「ドライヴ」という、まるでアメリカン・ニューシネマな快作もLAを舞台にしているのですが、そちらは80年代のスタイリッシュでファンタジックに乾いたLAだったのに対して、「ブリングリング」はリッチなティーンエイジャーとLAの今の日常をリアルに、キラキラに描いています。パーティやドラッグを楽しむように窃盗を繰り返し、公然と戦利品を友達に自慢したりSNSに写真をアップする彼らの日常を描きながら、ソフィア・コッポラは「どんなに狂っていてもこっちが現実なのだ。」と私たちに言っているかのようです。

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映画を観賞後、原作「ブリングリング/こうして僕たちはハリウッドセレブから300万ドルを盗んだ」(ナンシー・ジョー・セールズ著)を読んだのですが、実際の犯人達はそれぞれにもっと個人的な問題や悩み、コンプレックスや病気を抱えた子供達で、その後の話もそれぞれの弁護士が深く関わって来る事で、真実とは違う証言があったり、犯人同士で責任のなすり付け合いをするなど、事件はもっと複雑な展開になっています。しかしこの映画でソフィア・コッポラはそれらの余計な贅肉を出来るだけ削り落とすことで、事件の本質である「アメリカがこんなにおかしな事になっている」現状をさらりとお洒落に、そしてちょっとシニカルに見せてくれます。逮捕後に主犯格の女の子レベッカが、被害者のセレブリティ達と面会した担当刑事に向って、ワクワクしながら目を輝かせて質問するシーンがあります。「リンジーは、私のこと何ていってた?」これは今のアメリカが抱える問題をうまく言い表しているようです。狂っているけどピュアなのです。

なお、この作品は私たちサイトのシネマ・ディスカッションでも取り上げる予定です。ご期待ください。ソフィア・コッポラ最新作「ブリングリング」は12月14日(土)より、渋谷シネクイント他にて全国順次ロードショーです。

公式FACEBOOK

また立川シネマシティでは、ソフィア・コッポラ祭りを開催予定です。
 

中野裕之さん/ 映画監督・映像作家

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私たちと中野さんとの関わりは、早30年超になります。その間、おつきあいの濃い時期、そして薄い時期いろいろありましたが、いつもその存在がとても気になる友人です。この度、三宅一生さんの企画で、中野さんが撮られた「FLYING BODIES」を、日本一の音響を誇る映画館立川シネマシティ・シネマツーでイベント上映するにあたり、私たちがお手伝いすることとなりました。この機会にこのすてきな友人を紹介したいと思います。

中野さんをご存じない方は、彼のHPにあるプロフィールから、かれのミュージックヴィデオでの成功や、『SFサムライ・フィクション』から始まる劇場映画、そして美しい日本を映像として残すJAPAN PROJECT等々をまずはご確認いただきたいと思います。
中野裕之HP/PEACEDELIC

彼のすばらしさは、その対象がPVのミュージシャンであれ、ピースな自然であれ、ファッションであれ、そして自分の映画の俳優たちであれ、それらが放つ最も美しい瞬間を、愛情を持って映像として切り取ろうとする飽くなき追求とその瞬間を察知する嗅覚にあります。

「最高にきれいな一瞬」、そしてそれに至るコマ送りでの過程とそのピークをすぎてからのコマ送りの余韻。彼の頭の中ではそのように映像が見えているように思えます。そして究極まで高められたピークの美しさは、苔のクローズアップが大きな森に見えるように、スローモーションで落ちる花火の一光の中に宇宙があるように、一瞬がより大きな何かにつながっている感じを与えます。

もう一つ、彼を特別な存在にしているのは、そうした映像を編集していく驚異的な力です。彼はミュージシャンになりたかったと言っているように、音楽に対する愛情や造詣も大変なものがあります。「音楽と映像をあわせることが一番の快感」とも語っていますが、私は彼の編集に何かDJ的なものを感じずにはいられません。頭に入れた映像の素材をどう組み立て、どこで観客を「踊らせ」、どこで「chill out」させるのか。計画しつつ計画をぶちこわしながら深まっていく編集力は彼独特のセンスだと思います。

締め切り最終日の明け方まで付き合ったdee-liteの編集で会ったレディ・ミス・キアーも、そしてパリの自宅に連れて行ってもらって会ったles rita mitsoukoのフレッドやカトリーヌも中野さんとの音楽的な感覚の共有を全面的に信頼しているのが伝わってきました。

そして何より中野さんがすてきなのは「絶対みんなを楽しませるぞー!」という「天性のサービス精神(こう書いてしまうと安っぽくなってしまうのですが)」がすべての作品に貫かれていることだと思います。それは京都の花背やバリのビーチ、そしてパリのモンマルトルで切り取った最高の場所を最高の時間で体験させようという優しさ、いつも最高にかっこいい音楽をいち早く仕入れてきて「これいいよー!」と手渡してくれる時のうれしそうな顔。いろいろなおいしいお店につれていっては「うめー!」と自分で一番喜んでいる幸せそうな顔。そういった子供のような素直さを持って、映像と遊び、それでみんなを幸せにしてくれる、絶対おいていかない水先案内人、そんなpeaceな人間が中野裕之だと思います。

新作撮影現場の砂漠にて
新作撮影現場の砂漠にて