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Mick Haggerty ー 新しい世界への扉として

David Bowie  "Tonight"  1984  Art Direction,Design by Mick Haggerty
David Bowie “Tonight” 1984 Art Direction,Design by Mick Haggerty

私たちが人生を生きていく中で、その人との出会いにより新しい世界への扉(doors)が開かれ、次元が変わるような体験やつながりがもたらされることがあるように思います。 私や私のセルクルルージュの仲間にとって,Mick Haggerty(ミック・ハガティー)との1983年、とても寒い年の瀬の東京での出会いはまさにそんな体験だったといえます。

Kid Creole&the Coconutsの東京公演の後のパーティ—が、当時The Coconutsのアルバムジャケットを手がけたつながりからその場にいたであろうMickと私たちとの初めての出会いの場だったと記憶しています。長身に光沢のあるブルーのスーツを纏い、低いトーンでクールに話す第一印象は、ダリル・ホールのようなミュージシャン的な格好の良さだったのを覚えています。

Mick Haggerty(ミック・ハガティー)はロンドン生まれのアートディレクター、デザイナー、ヴィデオアーティストでありLAに渡り、私たちが30x30のサイズのアートワークに音楽そのものと同様の意味を見出していた時代に多くの印象深いアートワークを手がけています。

The Police "Ghost In the Machine"1981 Art Direction,Artwork,Design by Mick Haggerty
The Police “Ghost In the Machine”1981 Art Direction,Artwork,Design by Mick Haggerty

Mickに何をしているのかを聞いたときに、アルバムのアートワークの話になり、その時初めにMickが口にしたのが上のPoliceのデジタルなイメージのアルバムジャケットだったと思います。Policeのシンクロニシティーではないけれど、その後,セルクルルージュの川野がジャマイカ行き経由地だったLAの古着屋で偶然遭遇したりと、私たちはMickに不思議な縁を感じセルクルルージュ(赤い輪)の中にいる尊敬する友人だと感じています。

当時は今のようにWebでいろいろなことがすぐ検索できない中、Mickの名前で行き着いたのは”Breakfast in America”で1979年のグラミー賞ベストアルバムパッケージをMick Doudとともに受賞したという記事でした。

Supertramp "Breakfast in America" 1979 Art Direction,Cover Design,Original Design Concept by Mick Haggerty
Supertramp “Breakfast in America” 1979 Art Direction,Cover Design,Original Design Concept by Mick Haggerty

同様に私たちが会った1983年にもグラミー賞のベストアルバムパッケージでThe Go-Go’sの”Vacations”でノミネートされています。

The Go-GO's "Vacation"1982 Art Direction,Design,Photography by Mick Haggerty
The Go-GO’s “Vacation”1982 Art Direction,Design,Photography by Mick Haggerty

英国人のみたKitsch&Americana的な意味も感じられるアルバムカバーがバンドの音楽のイメージを大きく膨らませているのが理解いただけるでしょう。

そして言わずもがなのこちら

David Bowie "Let's Dnce" 1983,Cover Art,Design,Logo,Package Design,Photography  by Mick Haggerty
David Bowie “Let’s Dance” 1983,Cover Art,Design,Logo,Package Design,Photography by Mick Haggerty

Nile Rogersとともにアメリカ制覇を狙ったようなDavid Bowieのこのアルバム。まさにメインストリームへの殴りこみといった象徴的なジャケットとなっています。

 

Kid Creole軍団が去った後も、東京の知人の青山の小さなスタジオを住まいにして残ったMickとは、麻布の華園で食事をしたり、バブリングダブでお酒を飲んだり、モンクベリーズに踊りにいったり、HALバーでchill outしたりと、短い時間に密度を持って会い、語り合いました。大晦日はピテカンで、正月は明治神宮や浅草でといった具合にです。

そんな彼を訪ねてNYにいった1984年の夏に、まだホカホカな状態でもらったのが冒頭の”Tonight”の試し刷り。ステンドグラスを思い起こさせる背景について宗教性の表現といった話をしたのを覚えています。

その他にも

Public Image Ltd "9" 1989  Art Direction,Design by Mick Haggerty
Public Image Ltd “9” 1989 Art Direction,Design by Mick Haggerty
Jimi Hendrix "kiss the Sky" 1984  Art Direction,Cover Design by MIck Haggerty
Jimi Hendrix “kiss the Sky” 1984 Art Direction,Cover Design by Mick Haggerty

といった私たちセルクルルージュ的にも大好きなアーティストを数多く手がけています。

(ちなみにセルクルルージュでは今春封切り予定のJimi Hendrixの伝記映画”Jimi:栄光への軌跡”を近日シネマディスカッションで取り上げる予定です。ご期待ください。)

 

ファミリーで南アフリカに移り住んだMickとはここ数年会ってはいませんが、毎年あの1983年にあった季節になるとお互いその時の共有した特別な時間や空気感を思い出し連絡を取り合います。

クリスマス時期に、寒い六本木の裏道を歩きながら交わしたこんな会話を私は鮮明に覚えています。「特定の神を信じているかい?」「特定な神は信じていない。だけど”宇宙意識”的(mind at large)なものは信じているよ。」

そしてハクスレーではないけれど、私たちが幼い頃から何より好きで聞いていた音楽やそのアーティストが単なる憧れでなく、Mickという扉(Doors)により、より自分たちに繋がったものなり、今の自分たちの在り方が確立される契機になったと信じています。

そして、そんなMickが近日セルクルルージュのMIXCLOUDに参戦する予定です。そちらも是非お楽しみに!

 

彼のアルバムジャケットの映像やそれらに関わるインタビューは、こちらのサイトを参照しました。

いくつかのアルバムジャケットの映像と、クレジットはこちらのサイトを参照しました。

フルタイムのfine-artistとしての活動も彼自身のサイトでチェックしてみてください。

MIX CLOUD LCR Disco-15

連投になってしまいますが3月に入ったので、
LCR-Disco-15をMIX CLOUDにUPしました。
PreludeやWest EndなどのNYサウンドを始め、
耳当たりの良い曲を中心に集めてみました。
下記LCR Disco-15のリンクボタンを押して頂くと、

MIX CLOUDのページにジャンプします。

楽しんで頂けたら幸いです。

LCR Disco-15
shuroom

  1. Just in Time & Space (dub) / RAW SILK 1983
    タイトル通りスペーシーなインストルメンタルDUB。West Endを代表するガールズ・グループの一つRAW SILKの12inch『Just in Time』のB面。微妙にエコーの掛かったエレピのソロを始め、其処彼処に散りばめられた宇宙的SEなどイントロからアウトロウまで隙のない美しさは、まさにザ・ガラージ・クラシック。

  2. Love’s Gonna Get You (watch out baby out baby for love) (instr.) / MODERN-NIQUE frat. LARRY WU 1986
    LCR Disco-1でも紹介した『Let Me Show You』が素晴らしいLARRY WUがらみの1986年エレクトロ・ブギー。ただし今回はB面のインストを選択。80年代中期独特のエレクトロ・サウンドとして取り上げました。

  3. Let’s Do The Latin Hustle / EDDIE DRENNON & B.B.S. 1976
    ESTHER WILLIAMSも在籍していた男女7人組のファーストアルバム『Collage』からのシングル12inch。VAN McCOY『The Hustle』を継承するストリングスやフルートが軽快で気持ちいい、多幸感溢れるラテン・ハッスル・オリジナル本命盤。

  4. Life’s Just a Ballgame (ballroom remix) / WOMACK & WOMACK 1988
    BOBBY WOMACKの弟、CECIL WOMACKとLINDA WOMACK(LINDAはSAM COOKEの娘)夫婦による、4枚目のアルバム『Conscience』からの12inchシングル。エモーショナルでありながら黒すぎず、ネオアコやAORな印象も併せ持った、派手さはありませんが時代を超えて聴き続けていきたい良曲です。

  5. Say Yeah (instr.) / THE LIMIT 1984
    THE LIMITはROB VAN SCHAIKと BERNARD OATTESによるオランダの2人組ユニットで、1982年にも『She’s So Divine』のヒットを放っています。この『Say Yeah』A面は若干甘すぎるのでB面のインストを選びました。

  6. What Cha Doin’ / SEAWIND 1980
    1970年代後半から80年代前半、日本でもサーファーを中心に人気を博したSEAWINDは、そのほとんどの曲を書いているドラムスのBOB WILSONと、夫人でヴォーカルのPAULINE WILSONの二人を中心にしたトロピカル・フィール満載のAORフュージョン・バンドでした。『What Cha Doin’』は彼らの4thアルバムからのシングルで、プロデューサーGEORGE DUKEの個性が色濃く出た楽曲になっています。彼らの中では異色なファンク・チューンのこの12inchはアルバムと比較してベースやドラムスがよりクリアで太く聴こえます。

  7. Must Be The Music (instr.) / SECRET WEAPON 1981
    New Yorkの秘密兵器、1983年リリースのアルバム『Secret Weapon』からの12inchシングルB面のインスト・ヴァージョン。イナたいギターをひたすら弾いているのが気持ち良い、正にOld SchoolなPreludeのダンス・クラシックです。

  8. Can You Handle It (special remix ver.) / SHARON REDD 1981
    LCR Discoで何度も登場する、FRANCOIS KEVORKIANリミックス。右と左でそれぞれ違うギターが鳴り、スキャットがフューチャーされたこのSpecial RemixはPreludeレーベルとFRANCOIS K.を象徴するシングルであり、ディスコと言うよりフュージョンな感じが好みでした。

  9. Come Let Me Love You (disco ver. instr.) / JEANETTE “LADY” DAY 1981
    Preludeレーベルに2枚のシングルを残したJEANETTE “LADY” DAYのファーストシングルのB面。終始飽きさせない展開ある構成はもちろん、なんじゃそりゃなKeysの音選びやスマートなDUB処理はFRANCOIS K.の得意とするところでしょう。

  10. I’m Caught Up (in a one night love affair) (instr.) / A HUNDRED BIRDS 2014
    1996年から大阪を拠点に活動を続ける30人編成のディスコ・オーケストラ、AHBの500枚限定12inchアナログレコードのB面2曲目。AB両面ともガラージを代表する名曲を取り上げ、原曲のイメージ通りにホーンやストリングスなど全て「生」で再現しています。本来であれば某化学メーカーCMソング(山口百恵『さよならの向こう側』のカバー)でお馴染みのTeN嬢のヴォーカルが魅力的な歌入りヴァージョンを取り上げるべきところですが、次曲でオリジナルを選んだのでここではインストを使わせてもらいました。このシングルの売り上げは東北地方太平洋沖地震災害復興基金として寄付されるとの事。

  11. Caught Up (in a one night love affair) / TERRI GONZALEZ 1980
    TERRI GONZALEZ自身が自作自演したこの曲は敏腕プロデューサーPATRICK ADAMSの裏切りで、当時すでに売れっ子のJOCELYN BROWNを始めP. ADAMS自身もメンバーだったINNER LIFEのデビュー・シングル『I’m Caught Up (in a one night love affair)』としてPreludeレーベルから先にリリースされ大ヒットしてしまいました。のちに裁判沙汰にまで発展した曰く因縁のついた曲ですが、ゴージャスでファンキーなINNER LIFE盤よりその1年後にマイナー・レーベルからリリースされた哀愁漂うこちらのほうが個人的には好みです。ちなみに前曲AHBのインストもこのTERRI GONZALEZヴァージョンを参考にしていると思われます。

  12. Loveline / TAVARES 1981
    70年代から活躍するベテラン・グループが1981年に放ったモダン・ソウル・アルバム『Loveline』より、同名タイトルの高揚感溢れるスウェイ・ビートな一曲。作曲はプロデュース業を始めたばかりのKASHIFで、これは彼のキャリアの中でも上位に価する逸品でしょう。  

  13. In The Night / CHERYL LYNN 1981
    懐かしいアメリカのオーディションTV番組「ゴング・ショウ」の最高得点優勝者としてデビューを飾った彼女の3枚目のアルバム『In The Night』から同名タイトルの12inchシングル。当時良質なダンス・ミュージックを数多く制作していたRAY PARKER Jr.プロデュース。どうしてもCHERYL LYNNといえば『Got to Be Real』に話題が行きがちですが、この曲を始めTOTOの『Georgy Porgy』など他にもいい曲がたくさんあります。

  14. Baker Street / GERRY RAFFERTY 1978
    クエンティン・タランティーノの監督デビュー作『レザボア・ドッグス』で面白い使われ方をしたUKのフォークロック・グループSTEALERS WHEELの『Stuck in The Middle with You』。そのSTEALERS WHEELのフロントマンだったGERRY RAFFERTYがバンド解散後にリリースしたソロ・アルバム『City to City』から、当時FENでも毎日何度も流れていたヒット曲。ベーカー・ストリートはロンドンに実在する通りの名前で、小説中でシャーロック・ホームズの事務所があった場所としても有名だそう。そんな霧のロンドンを連想させる幻想的な曲です。