Winter Welcome Aleをご存知でしょうか? クリスマスシーズン(欧米で言うところのHoliday Season)に向けてアメリカなどで毎年11月ごろから限定販売される特別なエールです。長く寒い夜に暖かな部屋でゆっくり楽しむ濃いビールといった感じです。
このWinter Welcome Aleを製造するSamuel Smithは、イングランドはヨークシャー州タドカスターにある創業1758年の歴史ある小さなブリュワリーです。最近イギリス各地やアイルランドのシングルモルト系醸造所で話題になっている巨大資本による買収にも応じず、今も単独経営でがんばっている醸造所です。厳選された素材と敷地内の井戸からくみ上げた天然水を200年以上も使い続け、蓋のない四角い石釜で作る昔ながらの伝統的製造法(ヨークシャー・スクエア)を守り、フルボディで良質なビールを製造しています。
ペールエール、オートミールスタウトなど、ブリディッシュ・ビールに詳しいお店に行けばここのビールを日本でも飲む事ができます。しかし、このWinter Welcome Aleは限定販売ということもあり、なかなか日本国内でお目にかかる事ができません。先日もSamuel Smithの日本輸入代理店に問い合わせた所、まだ日本では流通していないとの事。しかし海外でこれらの季節商品が盛り上がっている状況から、将来的には日本でも取り扱いを始める可能性もあるとのご返答を頂きました。
肝心の中身ですが、クリーミィーな泡で、少しだけ濃い琥珀色のエールらしい微炭酸はコクがあり、ほどよい苦みとその後に甘みも感じられます。微かにフルーティな酸味もありますが、あまいカラメル系モルトの風味はもっと濃いお酒の印象です。その他のエールより味、香りともに濃く、グビグビ飲むタイプではありません。先にも書いたようにゆっくり楽しむためのエールです。何よりアルコール度数が通常より少し高い6%なので、おいしいからと言って調子にのって大量に飲むと翌朝えらい目に遭います。
実はこのエールとの出会いは、10年前にさかのぼります。
PHISHの記事で登場したTimとツアーを追いかけているときに、彼から教わったのが最初でした。ショウの後、興奮ぎみの気分をゆったりと落ち着かせたい時に勧められたのを覚えています。当時は1パイント瓶(550mL)しかなかったので、1本飲んだ後はそのままベットで撃沈。思い出の味です。
先日NYで僕らがホテルの部屋に入った際、備え付けの冷蔵庫を開けると、そこには今年のWinter Welcome Ale(小瓶335mL)24本入りカートンが冷やされていました。Timからのクリスマスプレゼントです。Thanks, Tim! しかしその晩久しぶりの再会で盛り上がって飲み過ぎてしまい翌日は時差ぼけと二日酔いで一日中グラグラでした。
このWinter Welcome Aleのもう一つの楽しみはラベルです。中央のイラストが年ごとに変わるのでコレクションしているファンも多いそうです。去年の絵柄はラグビーでした。今年は小さい瓶だったのでラベルの剥がし方が美しくないですが、今シーズンと10年前のものを並べてみました。発売年や容量表記の違い、アメリカの輸入代理店の住所が微妙に変わっていたりと細かな表記が異なっていますがイラスト以外の基本デザインは変わりません。カラフルですがイングランドらしい趣あるクラッシックでいいラベルです。
並行輸入などで国内に持ち込んでいるお店があるかもしれません。
もしどこかで見つけたら是非一度お試しあれ。美味しいですよ。
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PHISH NEW YEARS RUN 2013 at MSG NY
すでに去年のことになってしまったのだが、、、
2013年も残り一週間足らず、世間はお正月を迎える準備でざわつく12/26の朝、高揚する気持ちを押さえながらアメリカはNYに向けて一人家を出た。約10年ぶりにロックバンドPHISHに逢いに行くためだ。今回はマンハッタンにあるNBAの名門チーム、ニューヨーク・ニックスのホームで、ロックミュージックとプロレスの聖地でもあるマディソン・スクウェア・ガーデンで12/28~12/31の4日間公演New Years Runだ。彼らのマディソン・スクウェア・ガーデンでの公演は今回の4公演を含めると計31回になる。ちなみに僕自身のPHISH体験は今回で計46回だ(46 days!)。
PHISHは間違いなく、アメリカを代表するLive Rock Bandと言える。しかし長いキャリアのわりにこれと言ったヒット曲があるわけでもなく、日本での知名度はほとんど無いに等しいのだが、1999年フジロック・フェスティバルでは、3日間毎晩3時間以上の演奏を許された唯一のバンドでもある。
PHISHと書いて「フィッシュ」と読む。ファンの間ではFriendをPhriend、ForeverをPhoeverなど、[ F ]を[ Ph ]に置き換える事がお気に入りの遊びになっており、もちろんファンはPhansとも表記される。
先月の12月2日でデビューから30周年を迎えたこのバンドは、オリジナル301曲、カバー約350曲(1/4/2014現在)という膨大なレパートリーから毎晩違う選曲と演奏で僕たちを宇宙の果てまで魅了してくれる。
メディアの売り上げではなく主にライヴでの収入で稼ぐバンド(Jam Band)の代表格であり、キャパ10,000~30,000人の会場を毎回Sold Outにしながら、2013年は夏と秋の米国内ツアーと、今回のマディソン・スクウェア・ガーデンでのNew Years Runを合わせて年間で41公演(これは例年と比べて少ない公演数)を行った。
何より彼らの最大の魅力は即興のJamにある。一言にJamと言っても美しいアンビエントからヘビーなメタルサウンドまでその夜その曲がどんなJamにつながるかは誰も予想出来ない。たぶんメンバー本人達も事前に何も決めていないし、彼らのステージにセットリストは存在しない、選曲もその場で即興だ。ファンの間でBig Jam Songと呼ばれるいくつかの曲は、メロディーや曲そのものの魅力よりその後に続くJamが毎回とんでもない事になるのが人気の理由だ。
このバンドは一晩(1公演)観ただけでは何も判断出来ない。本人達の調子の良し悪しでその夜のクオリティに雲泥の差が生じるからだ。そうアタリ・ハズレのあるバンドなのだ。もちろん、この前の秋の東海岸ツアーのように12公演の殆どがグレートな時もある。だからファンは可能な限り彼らを追いかける。いつか体験した、他のバンドでは得る事のできない驚くべき演奏と感動をまた目の当たりにしたくて。
さてそんな中毒性のあるモンスター・バンド、PHISHのNew Years Run 4日間は本当に素晴らしいものだった。自身が9年半ぶり海外でのライヴ体験という喜びと相まってまさに感動の極み。あっという間の4公演だった。4回中3回がGA (日本で言うところの立ち見アリーナ・ゾーン)で、それもすべてステージ寄りのWest GAという一生に一度あるかないかの幸運にも恵まれた(チケットを譲って頂いたみなさまに大感謝)。
初日12/28は様子見でWest GAの最後尾・真ん中からのヴューだったが、それでもステージまで約50〜60mの近さ。PHISHの大きな魅力の一つであるカラフルで変幻自在の照明を堪能するにはこの位置がいい。初日とは思えないテンションの高さと熱の入った演奏にノックアウト。Tweezer最高、Steamに降参。
ステージ左サイドのスタンド良席(sec115 row12)からの2日目、12/29のSet2は曲数も6曲と少なく(ということは1曲1曲が長いという事)、DarkでDeepなJamは僕らが理想とする彼らのベストプレイの一つだった。一曲目のDown with Diseaseは必聴。ファンの間でもこの日をフェイバリットに上げる人が多く、まさにアメイジング。
3日目12/30はWest GAでも初日より前の方に挑戦。ステージから9〜10列目の真ん中はPAとの位置関係が絶妙で、大音量かつクリアなサウンドが天から降り注いでくる感覚を楽しんだ。もちろん、演奏も鬼気迫るすばらしい内容。アンコールでSlave to the Traffic Lightを持って来るとは。。ちなみに今回ここまでPHISHは一切カバー曲を演奏していない。この4日間はデビュー30周年を記念して、すべてオリジナル曲だけで構成するつもりらしい。
最終日で大晦日New Year Eveの12/31も、前から7~8番目のど真ん中という絶好のポジションで、カウントダウンの瞬間はPHISHが演奏するAuld Lang Syne (蛍の光。厳密に言うとこれはカバー曲)をBGMに、夢にまで見た大量バルーンの雨あられに歓喜した。
PHISHのShowは通常2セット構成なのだが、毎年12/31はカウントダウンの関係で3セット構成になる。Set 1とSet 2の間の最初のセットブレイク(休憩時間)中、会場で上映されたSpecial VTRからシンクロしてGAフロア(アリーナ)中央に登場した、トラックを模した特設ミニステージ(おかげでこのセットだけはステージから少し遠くなったけど)では、近年めったに演奏しなくなった初期レア曲を披露。なんと9曲中6曲がGamehendge Song。また、この夜のセットブレイクのBGMはすべて彼らのデビュー年1983年にリリースされたDance Music Only。しょっぱながEddy GrantのElectric Avenueで会場もDisco状態。そこから踊らされ続けて全然休ませてくれない。カウントダウン後の1曲目は最近発表した新曲中最も支持が多かったすでに名曲のFuegoで会場は大爆発。最初から最後まで大ネタ小ネタ満載のとにかく30周年にふさわしいすべてがスペシャルな夜だった。
ところで、今回のNYRを見に行く事が出来たのは、昔PHISHを一緒に追いかけたアメリカの親友ティムが去年の春先からメールでしつこく僕の事を誘ってくれていたのがきっかけだ。(Tim:アイルランド系アメリカ人の35歳。初めてPHISHを見たのは1994年4月22日、彼が15歳の時。それ以降殆どのPHISH Showを追いかけ続け、現在ティムのPHISH体験回数はなんと446回!! 僕のアメリカでのBuddyであり年下の先生でもある) 彼が僕を誘い続けた理由は、去年2013年がPHISHのデビュー30周年だったから。20周年ツアーも一緒に追いかけた仲だが、10年以上も前になるそれらの出来事は、多分彼も初めての日本人との接触でときどきコミュニケーションをとるのに苦労しながらも、二人にとっては忘れられない経験であり思い出だ。お互い信頼出来る理由は「どれだけPHISHを愛しているか?」それだけ。何とも危なっかしい理由だが、こんなに純粋で信用出来るものはなかった。さらにもう一人、PHISHつながりの長年の友人である荒川くん(彼は今回のNYRでPHISH体験108回!たぶん日本人最多回数記録!)のおかげで入手困難なチケットを手に入れる事ができたし、彼の手引きがなければ今回の僕のNY行きはなかったと思う。そんな二人に心から感謝。
PHISH 公式HP:Phish.com