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1958年東京生まれ。 20歳でLA、30歳でParisに暮らし、旅もいろいろしてきた。 世界をぐるっと回った目を持って、今東京で何をするのかを考える。 music  early reggae&dub,mulato music(by all means),soundtracks, cinema  特別な一日 style   stile latino 、どこかtwisted感のあるコンサバ、退屈でないクラシック     rockなテーラード(チャーリー・ワッツ)、スエード、 food   pian del ciampoloと天然酵母パンと野菜のプレート,豆料理,麺

Mick Haggerty ー 新しい世界への扉として

David Bowie  "Tonight"  1984  Art Direction,Design by Mick Haggerty
David Bowie “Tonight” 1984 Art Direction,Design by Mick Haggerty

私たちが人生を生きていく中で、その人との出会いにより新しい世界への扉(doors)が開かれ、次元が変わるような体験やつながりがもたらされることがあるように思います。 私や私のセルクルルージュの仲間にとって,Mick Haggerty(ミック・ハガティー)との1983年、とても寒い年の瀬の東京での出会いはまさにそんな体験だったといえます。

Kid Creole&the Coconutsの東京公演の後のパーティ—が、当時The Coconutsのアルバムジャケットを手がけたつながりからその場にいたであろうMickと私たちとの初めての出会いの場だったと記憶しています。長身に光沢のあるブルーのスーツを纏い、低いトーンでクールに話す第一印象は、ダリル・ホールのようなミュージシャン的な格好の良さだったのを覚えています。

Mick Haggerty(ミック・ハガティー)はロンドン生まれのアートディレクター、デザイナー、ヴィデオアーティストでありLAに渡り、私たちが30x30のサイズのアートワークに音楽そのものと同様の意味を見出していた時代に多くの印象深いアートワークを手がけています。

The Police "Ghost In the Machine"1981 Art Direction,Artwork,Design by Mick Haggerty
The Police “Ghost In the Machine”1981 Art Direction,Artwork,Design by Mick Haggerty

Mickに何をしているのかを聞いたときに、アルバムのアートワークの話になり、その時初めにMickが口にしたのが上のPoliceのデジタルなイメージのアルバムジャケットだったと思います。Policeのシンクロニシティーではないけれど、その後,セルクルルージュの川野がジャマイカ行き経由地だったLAの古着屋で偶然遭遇したりと、私たちはMickに不思議な縁を感じセルクルルージュ(赤い輪)の中にいる尊敬する友人だと感じています。

当時は今のようにWebでいろいろなことがすぐ検索できない中、Mickの名前で行き着いたのは”Breakfast in America”で1979年のグラミー賞ベストアルバムパッケージをMick Doudとともに受賞したという記事でした。

Supertramp "Breakfast in America" 1979 Art Direction,Cover Design,Original Design Concept by Mick Haggerty
Supertramp “Breakfast in America” 1979 Art Direction,Cover Design,Original Design Concept by Mick Haggerty

同様に私たちが会った1983年にもグラミー賞のベストアルバムパッケージでThe Go-Go’sの”Vacations”でノミネートされています。

The Go-GO's "Vacation"1982 Art Direction,Design,Photography by Mick Haggerty
The Go-GO’s “Vacation”1982 Art Direction,Design,Photography by Mick Haggerty

英国人のみたKitsch&Americana的な意味も感じられるアルバムカバーがバンドの音楽のイメージを大きく膨らませているのが理解いただけるでしょう。

そして言わずもがなのこちら

David Bowie "Let's Dnce" 1983,Cover Art,Design,Logo,Package Design,Photography  by Mick Haggerty
David Bowie “Let’s Dance” 1983,Cover Art,Design,Logo,Package Design,Photography by Mick Haggerty

Nile Rogersとともにアメリカ制覇を狙ったようなDavid Bowieのこのアルバム。まさにメインストリームへの殴りこみといった象徴的なジャケットとなっています。

 

Kid Creole軍団が去った後も、東京の知人の青山の小さなスタジオを住まいにして残ったMickとは、麻布の華園で食事をしたり、バブリングダブでお酒を飲んだり、モンクベリーズに踊りにいったり、HALバーでchill outしたりと、短い時間に密度を持って会い、語り合いました。大晦日はピテカンで、正月は明治神宮や浅草でといった具合にです。

そんな彼を訪ねてNYにいった1984年の夏に、まだホカホカな状態でもらったのが冒頭の”Tonight”の試し刷り。ステンドグラスを思い起こさせる背景について宗教性の表現といった話をしたのを覚えています。

その他にも

Public Image Ltd "9" 1989  Art Direction,Design by Mick Haggerty
Public Image Ltd “9” 1989 Art Direction,Design by Mick Haggerty
Jimi Hendrix "kiss the Sky" 1984  Art Direction,Cover Design by MIck Haggerty
Jimi Hendrix “kiss the Sky” 1984 Art Direction,Cover Design by Mick Haggerty

といった私たちセルクルルージュ的にも大好きなアーティストを数多く手がけています。

(ちなみにセルクルルージュでは今春封切り予定のJimi Hendrixの伝記映画”Jimi:栄光への軌跡”を近日シネマディスカッションで取り上げる予定です。ご期待ください。)

 

ファミリーで南アフリカに移り住んだMickとはここ数年会ってはいませんが、毎年あの1983年にあった季節になるとお互いその時の共有した特別な時間や空気感を思い出し連絡を取り合います。

クリスマス時期に、寒い六本木の裏道を歩きながら交わしたこんな会話を私は鮮明に覚えています。「特定の神を信じているかい?」「特定な神は信じていない。だけど”宇宙意識”的(mind at large)なものは信じているよ。」

そしてハクスレーではないけれど、私たちが幼い頃から何より好きで聞いていた音楽やそのアーティストが単なる憧れでなく、Mickという扉(Doors)により、より自分たちに繋がったものなり、今の自分たちの在り方が確立される契機になったと信じています。

そして、そんなMickが近日セルクルルージュのMIXCLOUDに参戦する予定です。そちらも是非お楽しみに!

 

彼のアルバムジャケットの映像やそれらに関わるインタビューは、こちらのサイトを参照しました。

いくつかのアルバムジャケットの映像と、クレジットはこちらのサイトを参照しました。

フルタイムのfine-artistとしての活動も彼自身のサイトでチェックしてみてください。

stile latino ス・ミズーラ#3 バーズアイ・グレイ・スリーピース・スーツ

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新年あけましておめでとうございます。本年もスタイル、映画、音楽、食等私たち独自の視点をアップしていきますのでよろしくお願いいたします。

さて9月にBEAMS Fで行われたスティレ・ラティーノの受注会の折にオーダーしたスーツが昨年末クリスマスのプレゼントのような絶妙なタイミングで上がってきました。

前回前振りのようになりました二つの方向性『グレイ・ダブルブレステッド』or『親父っぽくならないスリーピース・スーツ』。ご覧のように今回は濃いグレイのバーズアイでヴィンチェントらしいシャープなスリーピースをという方向で決着しました。

前回受注会で作らなかったグレイのシャークスキンで今度こそダブルブレステッドをという気持ちが強かったのですが、今回の決着はヴィンチェンツォとプリモのアドバイスというよりは、ずっと頭の片隅にあったスリーピースのアイデアがこの英国製のバーズアイの生地と当日のBEAMS FスタッフのSさんの着こなしとに結びついて一気にイメージとして結実したものと言えそうです。。Sさんは前回ラティーノでオーダーされたという、ハウンドツゥースのスリーピースをソリッドにストイックにお召しでした。

 

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仕様は いつもの様にミニマルな3ボタンのジャケットに、ノープリーツのパンツ。サイドのポケットはヴィンチェンツォの提案でスラントに、ヒップのポケットは私からの依頼で右側のみとしました。ベスト(ジレ)はシングルです。

スーツが嗜好品化に向かう中、よりクラシックなスーツらしいスーツといえるダブルブレステッドやスリーピースに関心が向いているように思います。それらのクラシック性をより強調してサルトでフルオーダーするのも魅力的ですが、ヴィンチェント的なコンテンポラリーさを盛り込んで『親父っぽくなく』仕上げるさじ加減もまた面白いように思います。

 

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裏地はヴィンチェンツォとプリモがすぐさま「ボルドーで決まりだ。」もちろん全面的に賛同です。

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ジレは最近よりクラシックさを強調したダブルのものも多くみかけますが、私が今回作りたいのはよりストイックなもの。ですからこれ見よがしでなくもちろんシングルで作りました。背はラティ—ノ仕様、共布でアジャスターもボタンです。

もちろんジレの格好の良さのポイントとなるタイのボリュームの見え方が最適なVゾーンの高さとウエストラインの丈も絶妙です。

コーディネートもあくまでストイックに、色味も抑えて。

シンプルな黒靴(丈の短いサイドゴアもいいですね)、気持ち的に回帰している文字盤も小さめのシンプルな時計、そして私たちセルクルルージュのメンバー御用達の映画人黒めがね。

カットやスタイル云々は別として、自分の中ではきわめてストイックな精神性という意味でボンドスーツといった意味合いのスーツです。

こんなスーツで幕を開ける2015年。皆様方にとってよい年となることを心からお祈りいたします。

 

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