KawaguchiTetsuo のすべての投稿

1958年東京生まれ。 20歳でLA、30歳でParisに暮らし、旅もいろいろしてきた。 世界をぐるっと回った目を持って、今東京で何をするのかを考える。 music  early reggae&dub,mulato music(by all means),soundtracks, cinema  特別な一日 style   stile latino 、どこかtwisted感のあるコンサバ、退屈でないクラシック     rockなテーラード(チャーリー・ワッツ)、スエード、 food   pian del ciampoloと天然酵母パンと野菜のプレート,豆料理,麺

DALCUORE -the first fitting with Maestro Luigi

仮縫いジャケットとマエストロ・ルイジ
仮縫いジャケットとマエストロ・ルイジ

8月のオーダーから半年あまりが過ぎた2月の末に、仮縫いでのフィティングチェックに丸の内のBEAMS HOUSEに行ってきました。

前回のカジュアルな着こなしとは違い、今回はダブルブレスティドのスーツをタイドアップでびしっと決めたLuigi Dalcuoreとの再会でした。

中国、ロンドン、パリ、モスクワと飛び回っての精力的なトランクショーの展開は、彼のFacebookやInstagramでも紹介されていますが、疲れを感じさせることもなく、いつものような寡黙ながら情熱的な仕事ぶりで迎えてくれました。

まずは8月のオーダーの復習ですが、今回はチャコールのへビーフレスコで、ピークドラペルのスリーピーススーツをあつらえることにしました。ジャケットにはチェンジポケットを付け、パンツはワンプリーツ、ベルトレスのサイドアジャスターと昨年8月当時の『サルトリアル(仕立て屋の)スーツへの気持ちの回帰』を盛り込んだオーダーとしました。

今の気分満載のサンプルのピークドラペル、スリーピース、シングルプリーツパンツモデル
サリトリアルな気分満載のサンプルのピークドラペル、スリーピース、シングルプリーツパンツモデル

まずはパンツのフィッテング。気になっていたのはベルトレスのウエスマンの仕上がり。股上はカジュアルパンツの股上の浅さとは一線を画したいというオーダーでしたが、まずは狙い通りな納まり。セットインプリーツと相まってクラシックで、エレガントは方向性が醸し出されました。試着の段階でサスペンダーもするなら前をさらに1センチあげて、ウエスマンも通常の4cmから5cmへというアドヴァイスがありました。私からはウエスマンの持ち出しを長めにお願いしました。パンツのすそ幅17.5cmに対しワタリはいつもより余裕を持たせプリーツからのつながりを出したかったのですが、多少もたついているように見えLuigiに聞くと「もちろんSlimFitにはしない。poco,pocoだな」と内股にチャコを入れていまた。

次はジレ。タイトな仕上がりを希望していましたが、パーフェクトなフィットと前傾斜でした。

ジャケットは着丈、袖丈の修正とともに、しつけでついていた袖をはずし、「もう少し前肩でつける」、とつけ方を丁寧に確認していました。それにより前見頃もストンと落ち、背中側のつれも取れるとのこと。いつもながらの極細のアームホールが期待感を高めます。

襟はサリトリアル回帰の中で広めにという思いがありましたが、ピークドということでこれ見よがしにならない按配を探りLuigiがチャコを入れます。ここが今回自分の中で一番迷ったところでしょうか。

自分が試着中ですので画像が薄くてお伝えし切れませんが、フィッティングの雰囲気は、BEAMS HOUSE丸の内のこちらのブログを参照ください。
大きな修正は無く,ファーストフィッティングは終了。着替えを終えて、サンペルグリノで一服。ちょっと雑談しながら次の秋冬物のオーダーについての意識を共有します。

自分の中では作りたいものと(時代感)、生地、そして仕立て屋の積み重ねた経験と技術、作り手を観てのアドヴァイス、そんな要素が混ざり合って,一歩一歩具現化していくサルトリアルスーツ。(仕立て屋のスーツ)一着一着が積み重なって、作り手との関係が深まっていくところが何より楽しいところだと思います。

フィッティング後にした秋冬物のオーダーの詳細は次の投稿に譲るとして、ちょっとだけ頭出しを。私の中では、クラシックなグレンプレイド、その生地の参考に当日着ていったreadymadeのDalcuoreが下のものです。今回のオーダーはモノトーンのダブルブレステッドで。

今日のダルクオーレ。readymadeなれどディテールに宿る仕立て屋魂。
今日のダルクオーレ。readymadeなれどディテールに宿る仕立て屋魂。

そして、昨年8月の投稿に描いたスーツ栄えのするレギュラーカラーのシャツの試作品。カッタウェイでなく、昔のナポリシャツを参考にBEAMSのHさんにご協力いただきながら、襟の開き、長さを調整中です。

 

仕立て屋のスーツに合わせるレギュラーカラーシャツの試作品
仕立て屋のスーツに合わせるレギュラーカラーシャツの試作品

 

Dalcuore- Feel like getting back to the sartorial suit

Luidi Dalcuore!
Luigi Dalcuore!

あの猛暑の日々が嘘のような、早くも秋を感じさせる8月の終わりにBEAMS丸の内で行われたダルクオーレのオーダー会に久しぶりに行ってきました。彼に対する最大の敬意を込め、2007年に彼に初めてオーダーして翌2008年に仕上がってきた、ダブルブレストのクラシックなネイヴィースーツを着て。

Luigi Dalcuore(ルイジ・ダルクオーレ)はナポリのハンドメイドテイラリングの鬼才です。ここでは改めてナポリのテイラリングの何たるか(歴史やその特徴や薀蓄)を語るつもりはありませんし、それは別のサイトにお任せしたいと思います。

むしろここでは、私がこれまでのStyleでの投稿で書いてきた、自分の中での『スーツの気分』なるものの更なる高まりを、それを具体的な『形』にしていく過程を通じて多少なりともお伝えできればと思っています。

ここ続いてきたカジュアル化へ向かっていた流れの中で、天邪鬼かもしれないけれどスーツへ、そしてよりクラシックさや、エレガントさといったものを感じさせる方向に興味が向かっています。以前のStile Latinoのトランクショーで書いたダブルブレステッド、スリーピースといった『形』への回帰であり、さらにはよりsartorial(仕立て屋的)なものへの回帰です。

そんなわけで、今回はヴァンチェンツォやプリモにまたお会いしてこのシーズンの秋冬に間に合うものをオーダーするという選択もありましたが、久しぶりにナポリの仕立て屋ダルクオーレで、来年2月の仮縫いを挟み、仕上がりまで10ヶ月をかけてSartorial suit(ハンドメイドの仕立て屋のスーツ)作りを楽しむことを選択してみました。

 

久しぶりにあった挨拶に続き、今回のフルオーダーで何が実現したいかを話し合っていきました。

イメージは明確にあり、生地はもう15年来BEAMSでお世話になっているHさんが以前、ダルクオーレで作られたダブルブレストのスーツを見て、気に入っていたフレスコを事前に探してもらっていました。

マーティンソンのヘヴィーフレスコ、ウエイト435~465相当、日本の天候ではいつ着るんだという感じもしますが、なじませ甲斐があるいい英国生地だと思っていました。

当初ダルクオーレのバンチにはもう無い、というご連絡でがっかりしていましたが、オーダー会前日夜にHさんから「発見しました!」のメールをいただいていたものです。

色はチャコール。フレスコのミディアムグレーもブルー、ネイビーとのあわせが素敵そうですが、今回は作りたいものとの整合性からこちらを選択。

マーティンソンのヘヴィーフレスコ
マーティンソンのヘヴィーフレスコ

そして作りたいのは、ダルクオーレが新しくサンプルとして持ってきた、『ピークドラペル、スリーピース、シングルプリーツパンツ』のモデルです。

英国っぽい生地とスタイルを、ナポリのハンドメイドテイラリングでつくるということですが、いろいろなさじ加減は、ダルクオーレ本人の意見を聞きながら方向を定めていきました。

生地の選択とスタイルの選択は彼も了解。

襟は親父っぽくならないように、ゴージを高めにして欲しい旨、ラペルの幅やシェイプについてもイメージを伝えました。Pittiのスナップでみる誇張され過ぎものではないものの、ラペルも相応の幅広さが自分の中での気分です。彼は「ピークドの場合は2つボタンでがスタンダードだけれど、私はピークドでも段返りにする方が好きだ」という意見。せっかく彼にお願いするのだから、彼のスタイルを尊重しました。

サンプルのモデルは背中側の肩周りにごくごく薄くパッドが入っているとのことでしたが、彼曰く「生地にハリがあるので、パッドとか入れなくても良いだろう。マニカ・カミーチャ(雨降り袖)できれいな張りが出るだろう。」とのことそれにも納得です。

フラップつきのポケットは、生地が無地なのと英国感を強調してチェンジポケット付にしました。

ベストはなるべくタイトな仕上がりを希望。

パンツは、ベルトレスのサイドアジャスターに変更、若干股上を深めに、カジュアルな方向の股上の浅さから一線をおきました。Ricci弟みたいに誇張されてはいませんが。

2007年にはノープリーツに換えてもらったのを、今回はパンツはプリーツ入り。それでもフィットは細く、すそ幅は17.5cmの指定です。

上がりはいかに?英国ぽさとナポリテイラリングぽさ、黒に近い色と幅広のピークドラペルからのGUCCI的モードっぽさとクラシックさ、こうしたバランスがうまく機能したスーツが上がるといいなと思います。

2月の仮縫い時にまたご報告をしたいと思います。

今の気分満載のサンプルのピークドラペル、スリーピース、シングルプリーツパンツモデル
今の気分満載のサンプルのピークドラペル、スリーピース、シングルプリーツパンツモデル

あわせはいつものストイックなもの。白で生地違いででスーツ映えのするレギュラーカラーのシャツと黒のツイルのタイを新調しておきます。そして『スーツの気分』は久しぶりに着た2008年のスーツのこうしたディテールでさらにかき立てられるのでした。

ハンドの暖かみが実感できるボタンホールや襟,肩周り
ハンドの暖かみが実感できるボタンホールや襟,肩周り