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stile latino(スティレラティーノ) ス・ミズーラ#1 プレイドカシミアジャケット

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前回BEAMSでのトランクショーのタイミングで投稿したstile latino(スティレ ラティーノ)の記事に多くの方々にアクセスいただきありがとうございました。

12月の初めにその折にオーダーしたジャケットとダブルブレステッドのスーツが仕上がってきましたので、それらについて2回に分けて書きたいと思います。まずはブラウンのプレイドカシミアジャケットから始めましょう。

今回のオーダーはフルオーダーではなく、ラティーノの持っているパターンをファブリックを自分で選び、さらにメジャーリングに基づきよりカスタマイズするいわゆるス・ミズーラでした。

当初私は3シーズン着れるグレーシャークスキンのダブルブレステッドスーツを仕立てるつもりでした。しかしファブリックを見、そして生地選びにつきあってくれたプリモのアドバイスを受けつつイメージを膨らませる中で、全く違う2つ選択にたどり着きました。

まず、ファブリックをみたとき、2013AWシーズンの押しのアルパカ混や渋いグレンプレイドにウインドウペインが入ったラティーノらしいモダンなファブリックに引かれつつ、このヴィンテージっぽいカシミア100%の英国的なプレイドに一発でノックアウトされました。

もう10数年前、もう少し色味が明るい、柄も小振りな、ウエイトの軽いガンクラブチェックのジャケットをラ・ベラ・サルトリア・ナポレターナ製で持っていました。とてもお気に入りで薄いブルーのシャツとネ−ビーのタイというベリー・クラシックな合わせでよく着ていました。今着ると着丈やシャープさが今一つかなという感じです。(直しに出すことも考えましたが、これはこのクラシックなバランスがかっこいいと踏みとどまりました。)

そんなことをこの2シーズンぐらい考えていた中で、このオールタイム・フェイバリットといった感じのファブリックに出会いました。すごくクラシックなファブリックをラティーノ的なサルト感を残しつつコンパクトで同時代感のあるパターンでジャケットに仕立てる。そんな足し算引き算の微妙なバランス感が今回の一つ目のオーダーのテーマとなりました。(それでもブラウンの濃い色味もありプリモに何回もtoo classic でないかと念押ししましたが)

上がってきたジャケットをご覧ください。サイズについてはヴァンチェンツォは私の着ていったレディメイドの42サイズをゲージに身幅をつまみ、着丈を詰めることを提案しました。かなり攻めたサイジングが彼なりの目指すところなのがよくわかりました。

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ジャケットは総裏が標準仕様でしたが、ヴァンチェンツォとプリモが二人してカシミヤは背抜きで包まれるように暖かさを感じる仕立がいいんだと身振りを交えて提案。もちろん全面的に従いました。

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最高に気に入ったのは適正な半身補正をしたように裾がうまく左右に逃げて、とてもすてきに見える点、パッチポケットがバルカポケットと同じようなカーブをつけられているのがビースポーク感を醸し出している点でしょうか。

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今であればジレで色を拾ってペーズリーのウールタイ、ベージュのコーデュロイパンツとか英国的な合わせが旬なのでしょうが、あえてクラシックにエレガントにチャコールのウールパンツとカシミアタイでも着たいなと思いました。そして黒タートル、オフホワイト5ポケットパンツにオールデンのこげ茶のチャッカといった、英国生地をイタリア的軽さで仕上げ、アメリカものと合わせて着るみたいなノンシャランな着方でガンガン着るのもいいのではないでしょか。さて皆さんはどんなコーディネイトを考えられますか?

私はこれから10年このジャケットと付き合って年を重ねるのだろうと思っています。

(i-phoneでの撮影ではかなり黄色が強くまた赤が浮き出して見えますが、本来は深いブラウンの地色がかなりおじさん臭い生地です。念のため。)

 

stile latino (スティレ ラティーノ)

左からヴァンチェンツォ、息子のチェザレ、有名なエージェントのプリモ
左からヴァンチェンツォ、息子のチェザレ、有名なエージェントのプリモ

stile latino(スティレ ラティーノ)はイタリアはナポリにおいてヴィンチェンツォ・アットリーニが2004年に立ち上げたスーツ、ジャケット、コート等のブランドです。アットリーニ家は1930年代から続くサルト(テーラー)であり、現在もそのクラシックなメインストリームはattoliniというブランドで展開されています。私はヴィンチェンツォが関わってきたSartorio(サルトリオ)、Eligo(エリゴ)といったブランドの頃から、彼の作る服にとても引かれてきました。今回BEAMSで彼のトランクショーが開催され、本人とお会いできたこと、そしてstile latinoのウエッブが立ち上がったこと、この2つの機会を捉えここでstile latinoをとりあげてみたいと思います。まずはその世界観を、新しく立ち上がったサイトでご覧ください。

stile latino(スティレ ラティーノ)

ヴァンチェンツォのつくる服の魅力は、クラシックなテーラードから発しつつ、そこに安住していない、同時代感を感じさせるパターンやコンパクトなサイジング、そして何より他ではなかなか見ない生地により醸し出されています。ブランドのネーミングの「ラテンのスタイル」からは派手で明るいイメージを連想される方もいらっしゃるかと思いますが、予想を裏切る一見地味ながらラテン的渋さを感じさせるオリジナリティあふれる色味と素材感が特徴的です。

シングル三つボタン、ノーパッド、ノープリーツのパンツというミニマルな仕様のスーツ。上襟から肩にかけての吸い付きやアームホールの攻め方が秀逸。ブルー(実際は写真ほど青くない)のモヘア&シルクのシャリ感と渋い光沢がお気に入り。濃い色のポロをインナーに着てもいいが、白シャツ、紺タイ、黒靴のストイックな合わせで着たい。
シングル三つボタン、ノーパッド、ノープリーツのパンツというミニマルな仕様のスーツ。上襟から肩にかけての吸い付きやアームホールの攻め方が秀逸。ブルー(実際は写真ほど青くない)のモヘア&シルクのシャリ感と渋い光沢がお気に入り。濃い色のポロをインナーに着てもいいが、白シャツ、紺タイ、黒靴のストイックな合わせで着たい。
夏物のベージュのコットン・ウールのスーツ。背抜き仕様だが、内ポケット脇のライニングもセンスを感じる。V(ヴィンチェンザ)A(アットリーニ)での表記。
夏物のベージュのコットン・ウールのスーツ。背抜き仕様だが、内ポケット脇のライニングもセンスを感じる。V(ヴィンチェンツォ)A(アットリーニ)での表記。
大きくカーブを描く幅広の襟がクラシックでエレガントなチョークストライプフランネルスーツ。身幅のジャストさ、着丈の短さ、ノープリーツのパンツのタイトさが現代的なバランスをもたらしている。もちろんウールタイ、スエードの茶靴で素材のウエートをそろえたタイドアップがベストだが、タートルで気取るのもいい。
大きくカーブを描く幅広の襟がクラシックでエレガントなチョークストライプフランネルスーツ。身幅のジャストさ、着丈の短さ、ノープリーツのパンツのタイトさが現代的なバランスをもたらしている。もちろんウールタイ、スエードの茶靴で素材のウエートをそろえたタイドアップがベストだが、タートルで気取るのもいい。

 

パッドなし、背抜き,膝上丈のダブルブレステッドコート。ニットやシャツの上にジャケットを挟まなくても着れるジャストなサイズ感。
パッドなし、背抜き,膝上丈のダブルブレステッドコート。ニットやシャツの上にジャケットを挟まなくても着れるジャストなサイズ感。
コートの素材はヴィンテージのTAYLOR&LODGE。スパー150のカシミア混。輪磯ヘリンボーンが渋すぎる。
コートの素材はヴィンテージのTAYLOR&LODGE。スパー150のカシミア混。ワイドヘリンボーンが渋すぎる。
そして正に嗜好品としてのスーツと言えるベビーアルパカ混のブラウンプレイドスーツ。地色がシルバーグレイなのが都会的でモード的にも見える。さてどんなコーディネートを考えますか?
そして正に嗜好品としてのスーツと言えるベビーアルパカ混のブラウンプレイドスーツ。地色がシルバーグレイなのが都会的でモード的にも見える。さてどんなコーディネートを考えますか?

世の中のカジュアル化、気候の変化、ファストクローズ化の中で、こうした重衣料は限りなく『嗜好品』化しています。このサイトを訪れる方の多くも、スーツを着る必要のない方々かも知れません。しかしそうした中であえて嗜好品としてのスーツを、ジャケットを、コートを着たくなる人も増えているように思います。

そしてそうした嗜好品としての選択をするとき、その作り手がなにを見、何を聞き、何を感じて生きているかが重要になるように思います。そこでの作り手との共感性がとても大切になるのです。

お会いしたヴィンチェンツォは、服に対しての提案では大変エネルギッシュでしたが、本人はこちらを許容する懐の深い、渋さを感じさせるすてきな方でした。チャーリー・ワッツが彼の服を着ているとの話をしていたとき、ロックバンドでも活躍中の息子さん(チェザレは自分のCDをくれました)とロンドンのストーンズのコンサートに行った話もしてくれました。ロックを感じる服かい?と聞くと「ラティーノはブルーズだな」といっていたのがなるほどなという感じでした。grazie mille!