KawaguchiTetsuo のすべての投稿

1958年東京生まれ。 20歳でLA、30歳でParisに暮らし、旅もいろいろしてきた。 世界をぐるっと回った目を持って、今東京で何をするのかを考える。 music  early reggae&dub,mulato music(by all means),soundtracks, cinema  特別な一日 style   stile latino 、どこかtwisted感のあるコンサバ、退屈でないクラシック     rockなテーラード(チャーリー・ワッツ)、スエード、 food   pian del ciampoloと天然酵母パンと野菜のプレート,豆料理,麺

Sartoriaスーツの気分ーDalcuoreの気分 グレンプレイド・ダブルブレステッド・スーツ

明けましておめでとうございます。私どもLe Cercle Rougeのサイトをいつもご覧頂頂きありがとうございます。本年も『赤い輪』の中にいる友人たちと、それぞれの偏った趣味嗜好を反映したゆるいくくりの中で、それぞれが深堀りを続けたいと思っております。

さて、私はしばらく投稿から離れておりましたが、スーツのオーダー時、そして仮縫い、仕上がりという1年の中で決まってきたタイミングに合わせて、今年も私の中でのスタイル感を表現できればと思います。

今回は2016年2月のダルクオーレのオーダー会で発注し、8月の仮縫いを経て、12月に仕上がったスーツを通してオーダー当時や今の『スーツの気分』を書きたいと思います。

2016年2月のサルトリアスーツの気分満載のダブルブレステッドスーツ。

昨年2月のオーダー時に自分の中にあったのは『英国的な』色合いを強めた『仕立て屋のスーツ』というテーマです。続けて投稿を読んでいただいている方には、カジュアル化の対極としてのスーツの気分はお伝えしてきましたが、今回はよりクラシックに、よりスーツ本来の美しさを取り戻すべく、ジジ(ダルクオーレ)と話しながら作りました。

まずは生地選び。オーダー時にRTWのダルクオーレの茶色のグレンプレイドを着ていきましたが、今回は初めからオーセンティックな英国的なグレンプレイド、それもここ数年自分の中で突き進んでいるストイックなスタイリングの延長としてモノトーンと決めていました。もう少し着用時期が長いウエイトの軽いものも考えましたが、ジジはFOX BROSがまちがいないとこの仕立て栄えのするウエイトのあるものを選択。ダブルブレストで仕立てることとしました。

 

ダルクオーレの気分を反映したgiro aperto

袖付けは最近ジジが気に入っていて、サルトリアスーツの新興市場である中国やアジアの独特のレトロ感のあるスーツスタイリングの仕立てでも多用しているジーロアベルトにするとのこと。今まで仕立てたものとの比較でも、肩がちょっと落ちた感じで、前作のピークドシングルスーツの攻めた感じとは違うリラックス感、男らしい肩幅を感じます。

 

ダルクオーレの気分、サルトリアな低めのゴージ

ラペルも同様にゴージを下げ、クラシックな感じにしようと仮縫い時に提案されました。前の合わせも以前に仕立てたダブルブレステッドに比べて重心が低い感じに仕上がりました。(6ボタンの一番下のボタン一つがけでも別の着方ができそうなバランス)

世界を飛び回っていろいろなオーダーを受ける中、ジジもちょっとづつ彼の気分を仕立てに反映させ変化しているように感じます。

 

私の気分、英国的なチェンジポケット

ディーテールでの『英国感』はチェンジポケット、サイドベント仕様で。オーダー時には1950年代のナポリスタイルでダブルでノーベントでいこう、とジジに提案され迷いましたが、英国スーツへのオマージュというテーマを優先させました。

ダルクオーレと私の共通した気分、ツゥープリーツ、ベルトレス

パンツは前回のオーダーのワンプリーツからさらにツゥープリーツで腰まわり、わたりにゆとりを持たせました。ツゥープリーツで、とお願いしたときのジジの我が意を得たりといううれしそうな笑顔は、きっとタイトフィッティングへの極端な振れの後で、仕立て屋として考えるスーツとしてのあるべき美しさへの揺り戻しを喜んでいるのだと感じました。

サルトリアスーツの気分、パンツの仕様

私としても股上の深いパンツをプレイシーズで前が落ちないようにつって着る中で改めてクリースの見え方の美しさに、仕立て屋のスーツを感じました。

全体としては、もちろんアームホールの攻め具合や英国のビースポークではやはり実現しにくいジャケットのコンパクトさを持ちつつ、タイトフィッティングから一線を画する適度なリラックス感と男らしさを感じる英国的なナポリメイドのスーツ(正にそれが私の今のスーツの気分)となりました。

次は昨年8月にオーダーしたアイリシュリネンのネイビースーツ。2月の仮縫い時に投稿できればと思います。(大身返しにして裏地はまったくなし!ジジは袖も裏地なしの提案でしたから、楽しみ半分、心配半分が正直なところですが)

 

sartoria DALCUORE napoli-サルトリアスーツの気分

昨年の8月のオーダー時のサルトリアスーツへの回帰軒分を満載したダルクオーレのスリーピース
昨年8月のオーダー時のサルトリアスーツへの回帰気分を満載したダルクオーレのスリーピース

昨年の8月のオーダー、そして今年2月の仮縫いを経て、待つこと10ヶ月、やっとダルクオーレのスーツが仕上がってきました。マーティンソンのチャコールヘビーフレスコ、仕様はピークドラペル、3つボタン段返り、チェンジポケット付きのジャケットに、ジレ、そしてパンツはベルトレス、股上深めのワンプリーツという昨年8月時の『サルトリアスーツへの回帰』という気分を満載したスーツです。

音楽でもスタイルでも共有される潜在的無意識がある方向性へと顕在化するのを感じる時があります。多くのスタイルを見、多くの音楽を聴いていると、自分に嗅覚に引っかかるもののがすこしづつ自分の心の中に積み重なっていって、ある時期に方向性として見えてくる。このWEBで過去に書いてきたスタイルページの一つの到達点が今回のダルクオーレのサルトリアスーツと言えるかもしれません。

 

英国的な生地とスタイルをナポリのサルトで仕上げたスーツ
英国的な生地とスタイルをナポリのサルトで仕上げたスーツ

スーツの全体としてのバランスを見てみましょう。カジュアル化、極まったタイトフィット化の反動としての『スーツの気分』を表現するとき、仕立て屋のスーツ本来の適正なフィット感、ドレープの醸し出すエレガントさといった当たり前なことが大切に思えます。写真から着丈やパンツ幅(腰回りやワタリ)の変化を感じ取っていただけると思います。一番迷ったラペル幅のこれ見よがしでなく幅広、という狙い通りの仕上がりで大満足でした。

 

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チェンジポケットやスリーピースの選択は、生地とともに英国的なもの、クラシックへの回帰です。

アイロンワークも秀逸なパンツ
アイロンワークも秀逸なパンツ

パンツもクラシックさ、仕立て屋感を高める特徴的なディテールを盛り込みました。ベルトレス・サイドアジャスターにし、ワンプリーツで深めの股上からワタリにかけて余裕を持たせつつテーパード、きれいなラインがでています。

ウエスマンの幅を広く、持ち出しも長いディテール
ウエスマンの幅を広く、持ち出しも長いディテール ウエストには作り手の名前とメモが紙で止められています

ウエスマンは仮縫い時に、ルイジの提案に従いウエスマンの幅を広く、股上を深くしています。ツゥ マッチなクラシックさでコスプレっぽくならない範囲で。

 

プリーツも美しく、新鮮!

ラペルの返りからフロントの逃げにつながるラインがお気に入り
ラペルの返りからフロントの逃げにつながるラインがお気に入り

何より気に入ったのは、ピークドのラペルの美しい返り(ルイジの提案通り2つボタンでなく、三つボタンにしたことでの段返りのラペルのボタンホールも)からダルクオーレの特徴的なフロントの逃げへのラインのつながりの美しさ!

暑くなってきましたが、早速試作を繰り返した白レギュラーカラーのシャツと黒ツイルタイでガンガン着たいと思います。スリーシーズン、ジレあり、ジレなしでサスペンダーを組ませる等々の変化を楽しみつつ着れそうです。

 

おまけはクラシックなネイヴィジャケット、グレイパンツのリニューアル。BEAMSのカスタムテーラーで仕立てました。全くベーシックで面白みがないように見えるかもしれませんが、ツイスト感のあるコンサバという自分なりの更新です。

ジャケットは、カノニコのホップサック、ゲージサンプルよりボタン位置を下げ、襟幅を広げ、着丈を出し、ダブルステッチとこれまたサルトリア感あふれるアレンジに。パンツはツープリーツにしてみました。

ビッグペーズリーのタイで合わせるつもりです。

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現在オーダー中の冬物モノトーングレンチェック、ダブルブレスト、チェンジポケット付き、ベルトレスのツープリーツパンツのスーツは8月の仮縫い時ルイジが来日した時ににまたレポートしたいと思います。

さて来夏に向けては、ステッチがよれててきて味がでる、コットンスーツかサッカーのスーツでしょうか?