明けましておめでとうございます。私どもLe Cercle Rougeのサイトをいつもご覧頂頂きありがとうございます。本年も『赤い輪』の中にいる友人たちと、それぞれの偏った趣味嗜好を反映したゆるいくくりの中で、それぞれが深堀りを続けたいと思っております。
さて、私はしばらく投稿から離れておりましたが、スーツのオーダー時、そして仮縫い、仕上がりという1年の中で決まってきたタイミングに合わせて、今年も私の中でのスタイル感を表現できればと思います。
今回は2016年2月のダルクオーレのオーダー会で発注し、8月の仮縫いを経て、12月に仕上がったスーツを通してオーダー当時や今の『スーツの気分』を書きたいと思います。
昨年2月のオーダー時に自分の中にあったのは『英国的な』色合いを強めた『仕立て屋のスーツ』というテーマです。続けて投稿を読んでいただいている方には、カジュアル化の対極としてのスーツの気分はお伝えしてきましたが、今回はよりクラシックに、よりスーツ本来の美しさを取り戻すべく、ジジ(ダルクオーレ)と話しながら作りました。
まずは生地選び。オーダー時にRTWのダルクオーレの茶色のグレンプレイドを着ていきましたが、今回は初めからオーセンティックな英国的なグレンプレイド、それもここ数年自分の中で突き進んでいるストイックなスタイリングの延長としてモノトーンと決めていました。もう少し着用時期が長いウエイトの軽いものも考えましたが、ジジはFOX BROSがまちがいないとこの仕立て栄えのするウエイトのあるものを選択。ダブルブレストで仕立てることとしました。
袖付けは最近ジジが気に入っていて、サルトリアスーツの新興市場である中国やアジアの独特のレトロ感のあるスーツスタイリングの仕立てでも多用しているジーロアベルトにするとのこと。今まで仕立てたものとの比較でも、肩がちょっと落ちた感じで、前作のピークドシングルスーツの攻めた感じとは違うリラックス感、男らしい肩幅を感じます。
ラペルも同様にゴージを下げ、クラシックな感じにしようと仮縫い時に提案されました。前の合わせも以前に仕立てたダブルブレステッドに比べて重心が低い感じに仕上がりました。(6ボタンの一番下のボタン一つがけでも別の着方ができそうなバランス)
世界を飛び回っていろいろなオーダーを受ける中、ジジもちょっとづつ彼の気分を仕立てに反映させ変化しているように感じます。
ディーテールでの『英国感』はチェンジポケット、サイドベント仕様で。オーダー時には1950年代のナポリスタイルでダブルでノーベントでいこう、とジジに提案され迷いましたが、英国スーツへのオマージュというテーマを優先させました。
パンツは前回のオーダーのワンプリーツからさらにツゥープリーツで腰まわり、わたりにゆとりを持たせました。ツゥープリーツで、とお願いしたときのジジの我が意を得たりといううれしそうな笑顔は、きっとタイトフィッティングへの極端な振れの後で、仕立て屋として考えるスーツとしてのあるべき美しさへの揺り戻しを喜んでいるのだと感じました。
私としても股上の深いパンツをプレイシーズで前が落ちないようにつって着る中で改めてクリースの見え方の美しさに、仕立て屋のスーツを感じました。
全体としては、もちろんアームホールの攻め具合や英国のビースポークではやはり実現しにくいジャケットのコンパクトさを持ちつつ、タイトフィッティングから一線を画する適度なリラックス感と男らしさを感じる英国的なナポリメイドのスーツ(正にそれが私の今のスーツの気分)となりました。
次は昨年8月にオーダーしたアイリシュリネンのネイビースーツ。2月の仮縫い時に投稿できればと思います。(大身返しにして裏地はまったくなし!ジジは袖も裏地なしの提案でしたから、楽しみ半分、心配半分が正直なところですが)