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1961年東京生まれ。 川野氏の2学年後輩として1980年代前半に川口氏と出逢う。 15歳から始めた音楽収集は現在も継続中。アナログレコードをこよなく愛す。 20世紀終わりには、アメリカまで好きなバンドを追いかけるため会社員を辞める。 社会復帰後まじめに働きつつも、自分に出来ることと役割について未だ妄想模索中。 Music: 70~80's Rock & Disco Boogie, early House, Clube de Esquina, Phish Cinema: Andrei Tarkovsky, Leos Carax, Jean-Jacques Beineix Style: HippieからNeo-Tradまで。30年ぶりにJ.M.Westonの履き心地にしびれる。 Food: 美味しいものがすき。でも好き嫌いあり。

Phear and Loathing in Halloween Las Vegas ~PHiSH Las Vegas 2014~

10月末Las VegasにPHiSHを観に行ったレポートです。音源等はオフィシャルのサイトや運が良ければYoutube等でも確認できるので、主にそれ以外に焦点を当てた報告になっています。お時間のあるときにでも楽しんでいただければ幸いです。

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現地時間10/30の午後3:40、成田発Seattle経由で目的地Las Vegasに到着。成田空港は人が少なかったのに比べ、ここは明日からのHalloweenの週末、この街で爆発したい満面笑顔のアメリカ人達で溢れかえっている。自分の目的もただひとつ、明日から3日間PHiSHのHalloween Partyに参加することだ。去年末NYCのNew Years Run4日間に行って以来のPHiSHは、秋のツアー全12公演中10/31~11/2の最後の3日間、Las Vegasにあるキャパシティ16,800人のMGM Grand Garden Arenaでのツアーファイナル。MGMはボクシングの世界タイトルマッチやUFCの重要大会が開催される格闘技の殿堂。今回はオフィシャルが限定発売した宿付きのトラベルパッケージ・チケットを友人の荒川くんが手に入れてくれたおかげで、宿泊も同じ敷地内のMGMホテルになるのでこの巨大な建物から出る事はたぶんないだろう。

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初日10/31が待望のHalloween Showになる。これまでPHiSHは10/31が公演日のShowに限り、通常の2セットではなく3セットの演奏を披露してきた。古くは1994年10/31の2ndセットにBeatlesの『White Album』をアルバム丸ごと演奏。それ以来Talking Headsの『Remain in Light 』やThe Whoの『Quadrophenia』、The Velvet Undergroundの『Loaded』など、彼らが尊敬するアーティストの過去の名アルバムをステージ上でフルカバーすることで、音楽をコスプレする=ミュージカル・コスチュームという企画を行って来た。しかし、今年夏頃のインタビューでギターのTrey Anastasioがこれまでのやり方をやんわりと拒否、新たなマテリアルに期待して欲しい的発言があり、ファンの間で「今年のHalloweenは誰をカバーするのか?」という例年の話題は不思議とピタリと止んでしまったままだった。はたして今年の10/31の2ndセットはどうなるのか?何を魅せてくれるのか?毎回我々の予想を気持ちよく裏切る彼らなので幾ら考えても意味は無い。時差ぼけも相俟って深夜にいつの間にか深い眠りに着いていた。

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いよいよHalloweenの当日、Vegas初日の席はSection 4でスタンド右斜め正面の前から18列目。会場は少しだけ規模の小さなマディソン・スクエア・ガーデンといった趣で、全体形状はゆるい壷状。オーディエンスのエネルギーが一気に下のGAフロア(アリーナ立ち見エリア)に向って雪崩落ちるような独特の一体感がある。久しぶりに来て感じるのは、この濃厚空間と一万人以上の観衆が造り出す圧倒的なパーティ感だ。彼らのライヴはどちらかと言うとプログレに近い複雑なロックが多いなか、Grateful Deadの時代から脈々と続く「生(演奏)で踊ろう」がキーワードになっていて、会場すべてのオーディエンスがステージに向って踊り狂う姿は、ここまで辿り着かないと味わえない圧巻のダイナミズムだ。

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肝心の今年の2ndセット、会場入口でスタッフから手渡されたPHISH BILL(ハロウィーンのプログラム・パンフレット)の表紙は、まったく見覚えの無いアルバムのジャケットが描かれていた。『Chilling, Thrilling Sound of Haunted House』は1964年に発売されたディズニー制作のホラー物レコードで、色々な怖いナレーションとSE(効果音)だけが収録されたレコードになる。今回PHiSHはこのレコードの各トラックのタイトルやナレーションを元に、ゼロから各曲を創作。オリジナルのアルバムには入っていない「音楽」を付加する事で新たなサウンドトラックを勝手に制作してしまった。曲によっては安易なものもあるが全編とにかく踊らされ、さらにそのDeepでDopeな音の断片によって、サントラ・アルバムとして完成度の高いクリエイティヴな作品に生まれ変わっていた。もしこの音源がアナログ発売されたら迷わず購入だ。友達のNikkiが言っていた「これは『Fuego』の『Siket Disc』だわ!」と。
ステージ装飾も今までにない凝り方で天井にはオリジナルの巨大なシャンデリア型の照明がいくつも浮いていて、音に嵌まりながら気を許すと別世界に引き込まれそうになる。もちろん、エモーショナルな『Reba』が印象的な1stセット、『Twe-reprise』で締める3rdセットも潔かった。明日のチケットはGAなので、早くから列に並んで出来るだけいいポジションを確保したい。

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11/1目が覚めるとすでに午後2時過ぎ。少し焦りながら身支度をし、遅いブランチをMGM1Fのフード・コートで手早く済ませる。チップが必要で一人一食5,000~10,000円予算のレストランに入るつもりはない。ちなみにLas Vegasの物価高は異常で、500mLのミネラルウォーターが1本約1,200円する。この時もチープな中華プレート・ランチとビールの小瓶が同じ値段で合わせて約2,500円だ。今回のLas VegasでPHiSH以外余計なお金を使うのはほんとうに馬鹿らしい。
数時間前からGA入口で入場待ちの列を作り6時の開場をひたすら待つ。開場とともにリストバンドの装着を済ませると、いよいよGAフロアへ突入。ステージ向ってやや左寄りに位置するギターのTrey Anastasio前を中心にすでに何十人ものダイハード・ファンが場所取りをしている。彼らはゲスト・パスを持った選ばれた人たちで、一般入場の前からいつものポジションを確保している。GAを卒業したアメリカの友人に言わせると「All time same people… 」だそうで、決して彼らの前には行けないとの事。彼らのご機嫌を損ねない程度に自分も出来るだけ前方、出来るだけTrey寄りの場所を探す。結局前から5〜6列目のステージほぼ中央をキープ。周りのアメリカ人と出来るだけ笑顔で挨拶し、馬鹿話に花を咲かせながらGA同士の絆を深めて行く。この絆がShowが始まってから横入りしてくる輩をみんなで協力して追い出す為の重要な結束力となる。
8時過ぎにSet1が始まる。一曲目から今年リリースされた新譜『Fuego』のタイトル曲で早くもフロアは狂喜乱舞。その後も今ではめったにやらなくなった昔のレアな曲を織り交ぜながらさらに盛り上がって行く。
スタンドや背後すべてのオーディエンスのエネルギーを背中で強烈に感じながら、アナーキーな『My Friend, My Friend』を間直で見られたり、アメリカ人が大好きな『Roses Are Free』でみんなと一緒に盛り上がれるのはGAの魅力だ。GAは会場キャパ16,800人中たぶん約1,000人程度で、さらにステージ前の約100人がこのPartyの主役となる。ここに陣取るという事はこのPartyを盛り上げる使命もある。その日一番のクライマックスで色とりどりの紙吹雪が絶妙なタイミングで舞い上がる事がよくあるのだが、それらもすべてファンの手作りによるものだ。とにかくそこにいる全員が踊る踊る。「スタンド席のすべてのオーディエンスはGAを盛り上げる為に存在する」と言われるほどで、さらにステージ前はまた別格なポジションとなる。そんな興奮状態の中Set1は『Wingsuit』のピンクフロイドのような重厚な泣きのギターで一端幕を閉じる。

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Set2も意表をつくオープナーからTalking Headsの『Crosseyed and Painless』へ、さらにJamが危険な『Light』へと続き、その後もサイケデリックな『Lengthwise』など聴きたかった曲が目白押し。PHiSHらしい水の中を漂うように自然な流れを重視したまさにSurrender to flowな美しいセットだった。
アンコール終了後、この夜初めて知り合った、ギターの最初の何音だけでイントロ当てを楽しんだり、同じ場所で一緒に踊ったゲスト・パスを持ったアメリカ人4人組と少し話す。「なあYasu、明日のShowはどこで観るんだい?」と聞かれたので「ここから遠いスタンドだよ。」と答える。すると4人組みの一人が「俺らはゲスト・パスをゲットしたから明日のGAを2枚あげようか?」とのこと!彼は「You have to here tomorrow !!」とも言ってくれた。これぞミラクル!こんな話が本当にあったんだ!!

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Showの興奮が冷めず朝方まで眠れなかったものの11/2は昼過ぎに目が覚め、昨晩の彼と連絡を取り合い、GAチケット受け渡しの段取りを詰める。夕方前に彼らと落ち合い、無事にGAチケットをゲット。「See you later! Enjoy tonight!!」と言い残し、彼らは開場前のバックステージに戻って行く。心から感謝!結局今夜のポジションも前から6〜7列目のステージ中央。チケットをくれた彼達はさらに前の2〜3列目のTrey前に位置している。3日間で2回もGAそれもステージ前で見られるのは幸運としか言いようが無い。GA前方はバンドの出す音もまったく違って聴こえる。それはまるで小規模なライヴハウスで聴くような各アンプから出る生のサウンドを直に味わう事が出来るからだ。
3日目のSet1はいつもより長い80分超のロングセット。ラスト3曲はギターが止まらない。圧倒的な上がり感はこれまでと比べても確実にテンションが高い。
Set2もアンコールの2曲を含めてそのほとんどがBig Jam Songの連続。『You Enjoy Myself』では、メンバー全員がドラム・キットに集まり4人でパーカッション・ジャムを披露する等スペシャルな展開も見る事が出来た。個人的にはこの3日目のShowが最高だった。
あっという間に終わってしまったVegasの3日間。Show終了後の3時間だけ、Timを始めとしたいつもの古いアメリカの友人達とハング・アウトし、午前4時にはホテルを出て一人空港に向う。PHiSHの事以外は、何もしないし何も考えない。もし好きだったらこんな贅沢なバカンスは他になかなかない。幸せで心地よい疲労感と達成感はいつもの通り。今は全部のShowを追いかける余裕は無いが、可能な限りこのシーンにかかわって行きたい、そう思わせるShow、Band、Phans、Phriendsにもう一度感謝。

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ところでHalloweenという事で、10/31はさまざまなコスチュームのファンがいて楽しかったのだが、ひとり一人にweb掲載の承諾を取ることも出来ず、残念ながらコスプレ画像掲載は控えさせて頂く。LCRらしく映画ネタでは『ビッグ・リボウスキ』のデュードと『ラスベガスをやっつけろ』のラウルに扮する人が多かったのが何ともVegasのPHiSHらしかった。

PHISH 公式HP:Phish.com

MIX CLOUD LCR Disco-11

LCR-Disco-11をMIX CLOUDにUPしました。
真っ黒ではないですが、ファンクっぽい雰囲気を意識して
フロア受けしそうな踊れる曲中心に集めてみました。
下記LCR Disco-11のリンクボタンを押して頂くと、

MIX CLOUDのページにジャンプします。

楽しんで頂けたら幸いです。

LCR Disco-11
shuroom

  1. What Took You So Long / DELEGATION 1982
    白人SSW、KEN GOLDプロデュース、UKファンク・グループDELEGATIONのヨーロッパとブラジルでのみリリースされた4枚目のアルバム『Deuces High』からのオランダ盤12inchシングル。スイートでほろ苦い極上モダンソウルです。

  2. Rock with You / MICHAEL JACKSON 1979
    アルバム『Off the Wall』からの全米Top1大ヒット・シングル。元HEATWAVEの白人キーボーディストROD TEMPERTON作詞・作曲、QUINCY JONESプロデュースのダンスクラシック定番曲。ベタかもしれませんが久しぶりに聴くと本当にいい曲だと思います。ROD TEMPERTONはこの曲を足がかりに、QUINCY JONESの協力を仰ぎながらその後ソング・ライターとして数々のヒット曲を世に放ちました。

  3. Fall in Love / SECOND IMAGE 1982 
    CENTRAL LINE『Walking Into Sunshine』で名を売ったROY CARTERプロデュース。Level 42等と同路線のSECOND IMAGEらしいメロディアスでライトな80’s UKファンクです。

  4. Straight Ahead (instr.) / THE NICK STRAKER BAND 1982 
    ここで何度も登場しているPreludeレーベルの看板ミキサー、FRANCOIS KEVORKIAN1982年渾身のシングルB面。カッティング・ギターで始まるイントロから痺れるインスト・ブギー。『A Little Bit of Jazz』が有名なバンドですが、NYサウンド・ファンの間ではこの曲の評価も高いです。

  5. Let’s Funk Tonight / BLUE FEATHERS 1981 
    オランダのマイナー・ディスコ・グループのカナダ盤12inch。最初と最後にヴォーカル&コーラスが少し入るだけで、後はギターやキーボードなどインスト・パートが素晴らしい演奏を延々と繰り広げていきます。この辺の妖しいヨーロッパ・ファンクにハマるともう後戻りできません。

  6. Out Come The Freaks (dub ver.) / WAS (NOT WAS) 1982  
    デトロイトの変態白人WAS兄弟(血は繋がってない)の1982年のシングルB面ダブ・ヴァージョン。彼らの造り出す音はダブやリミックスなど、後のハウスやブレイクビーツなどの方法論の先駆け的ポスト・プロダクションで、当時最も新しいファンク・サウンドとして一部の愛好家に人気でした。今では有りがちなインスト・ダブに聴こえなくもないですが、当時この技法がレゲエ界以外では彼らがオリジネーターであった事を想いながら聴いてみるとまた感慨深いものがあります。

  7. What A Night / CHRISTOPHER MOORE 1983 
    80年代らしい個性的なシンセ・サウンドが特長のフランス人シンガーの12inch。詳しい事はよく分りませんがちょっとチープでヨーロピアン・ブギーなベース・ラインがクセになります。
     

  8. You Got The Floor (instr.) / THE INCULCATION BAND 1981 
    70年代初期THE CRUSADERSにも在籍していたテネシー出身のヴォーカル&ギタリストARTHUR ADAMSのシングル。この曲の12inchは2種類あり、これはB面にインストが入った方。歌入りのA面もいいのですが、インストは延々と続くギターとサックスのソロが渋い、タイトル通りのフロア向きダンス・チューンです。

  9. Can You Feel It (progressive ver.) / FUNK FUSION BAND 1981 
    ASPHALT JUNGLE『Freakin’ Time』を、West Endレーベルで名を馳せたNick Martinelli & David Toddのコンビがリミックスしたロフト、ガラージ・クラシック名盤。当時東京のクラブでもよく耳にした、あの印象的な女性ヴォーカルのシャウト&ブレイクが1回だけ入るインスト、プログレッシヴ・ヴァージョンが人気でした。

  10. Stay Tonite / MANDRILL 1978 
    1978年発表アルバム『New Worlds』からの12inchシングル。アフロやラテン、ロックまで吸収し続けたNY出身の雑食ファンク・バンドのイメージが強い彼らですが、当時の典型的なディスコ・ストリングスを取り入れたモダン・ブギーなこの曲はまた違う彼らの魅力が詰まった一曲です。

  11. Inside You (part 1&2) / THE ISLEY BROTHERS 1981 
    ロック的なディティールを取り入れながら思い切りソウルフルな楽曲を奏でるアダルトなサウンドが素晴らしい、THE ISLEY BROTHERSの80’sを意識したアルバム『Inside You』からのファンキーなタイトル曲12inchシングル。長い彼らのキャリアの中でも一部のソウル・ファンの間では低迷期と評されがちなこの頃ですが決してそんな事はありません。9分越えのロング・ヴァージョン(実はLPヴァージョンも同じ長さ)は永遠に踊り続ける事が出来そうなほどグルーヴィです。

  12. Good Good Feelin’ / WAR 1979 
    限りなく太く、力強く疾走するパーカッシヴなアフロ・ロック・サウンドに、超ファンキーなTWEED SMITH嬢のヴォーカルが炸裂するWARのゴリゴリ・ディスコ・ブギー。サンフランシスコ・ミクスチャーの熱いファンクネスに降参です。

  13. Yearning for Your Love / GAP BAND 1980 
    サードアルバム『Gap Band Ⅲ』からの12inchプロモ盤、ソフト&メロウ・ディスコ名曲。ヴォーカル、演奏、アレンジ、イントロからアウトロまで完璧。LOFTクラシックでもあります。