『ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン』ジョン・ライドンが語るP.I.Lの真実/Cinema Review-9

c) PiL Official Ltd (photography_ Tomohiro Noritsune left to right_ Lu Edmonds John Lydon Scott Firth Bruce Smith)

セルクルルージュのCinema Review第9回は、セックス・ピストルズ結成後に、ジョニー・ロットン=ジョン・ライドンが結成したパブリック・イメージ・リミテッドのドキュメンタリー映画『ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン』です。
ドキュメンタリーには、ジョン・ライドンだけではなく、主要メンバーだったキース・レヴィン、ジャー・ウォーブル、ブルース・スミス(ポップグループ)ら現行メンバーに加えて、フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、アドロック(ビースティ・ボーイズ)など周辺音楽関係者のインタビューが登場します。
レビューは、映画評論家川口敦子と、川野正雄の2名が担当します。

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★川口 敦子

“歳を重ねてジョニー・ロットンメロウ化(ちょっとだけ)″と、NYタイムズ紙(18年9月13日)がドキュメンタリー映画『ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン』のレビューに付した見出しを前に、「なるほどね」との思いと「いやいやでも」と抵抗したい気持とが交錯した挙句になんとなくにんまりとしてしまった。まさにそんな宙づりの時間、そこでロットンというイメージと現実、虚像と実像の狭間を楽しみ苦しむ(のもまた楽しみだから)ことこそが監督タバート・フィーラー(メキシコ・シティのスケボー少年からバンドのベーシスト、撮影監督を経て今回、長編デビュー)の紡いだ映画の目指すところと納得がいったからだろう。

それにしてもノー・フューチャーだったはずの世界を21世紀まで生き延びたロットン≒ジョン・ライドン、還暦を過ぎた彼の現在、窓の向こうに緑がのぞく簡素なキッチンのカウンターに片肘ついて語る様、そのぽっちゃりとしたたたずまい、ぎざぎざと引きちぎったシャツの両袖から二の腕をむき出しにしたマッチョな装いもパンクというよりはアメリカンなアクションスターのようで(ブルース・ウィリスとミッキー・ロークを足して2で割った感じか)、メロウ化というよりは単なるおっさん化とも見えなくはなく、そういえばコレクトネスの不自由な縛りがなかった頃、太ったパンクはあり得ないなんて能天気なジョークもよく耳にしたものだったなどと妙にしみじみ同世代(ロットン56年生まれと改めて確認すると、え、もっと年下じゃないのとの驚きも、それほど熱心なファンとはいえない身には実はあったのだが)の「なるほどね」の感懐に包まれたりもしてしまう。

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が、映画を見るうちに、ロットンの発言を目に耳にねじ込まれるうちに、「いやいやでも」丸くなったのは体だけみたいな確信が追いついてきて、彼が語る作られたファッションとしてのパンク、ピストルズ時代以来しぶとく続くマルコム・マクラーレンとの確執の根深さとか、モキュメンタリ―『スパイナル・タップ』のおかしさを地でいくメンバー交代劇とか,各々への歯に衣着せぬコメント(+各々からのお返しの言葉)をスリリングに嚙みしめ、それが映画の醍醐味になってくる。
実際、近年のコマーシャルやリアリティショー出演で確信犯的に披露してきた皮肉の棘を芯に隠したエンターテイナーぶり、尖った笑いを上手にまぶしたその語りに身を任せると、コアなファンでなくとも40年に及ぶパフォーマンス、イメージ操縦の妙技をとっぷりと楽しんでしまえる仕組だ。

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見逃せないのはそうしたケレンミたっぷりの話術にまぎれて病床の母(”あなたの目の中の静寂″「デス・ディスコ」)を葬(おく)る心や7歳の時の大病、記憶喪失にまつわる恐れ、はたまた糟糠のパートナーとその孫の画への想い――印刷された取材の発言としては既によく知られたエピソードをまっすぐに口にする”生身″のロットンの意外なくらいに細やかで濃やかな感情を目の当たりにする瞬間、そこに迸る胸の震え、衒いを捨ててそれをこちらも真正面から受け止めてみたいと思う。かっこいいばかりでない全方位的なロットン≒ライドンのポートレートを自ら差し出す覚悟、その思い切りはやはり素敵に真正パンクだから。

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★川野 正雄

ジョニー・ロットンが、何故P.I.Lになると、ジョン・ライドンになったのか?
その謎解きから、このドキュメンタリーは始まる。
1980年代初期、P.I.L(Public Image.Ltd)は、一番謎のバンドであった。
そしてジョニー・ロットン=ジョン・ライドンは、自分の中で特別な存在であり、カリスマだった。
情報が欲しくて、必死に読んでいた音楽誌に書かれていたであろう事が、ジョン・ライドンや、キース・レヴィン、ジャー・ウォーブルなど他のメンバーによって語られ、長年の疑問が次々に明かされていく。
アヴァンギャルドな音に、斬新なアルバムジャケット、ジョンの独特の発言と行動。
P.I.Lは間違いなく時代の最先端にいた。
この映画は、改めてその事を思い出させてくれ、更に知らなかった当時の事実に触れることによって、その思いを確信に変えてくれる。
初期のP.I.Lはすごかった。

https://youtu.be/7mSE-Iy_tFY

そのベースになっているのは、セックス・ピストルズ加入前はレゲエDJであり、ピストルズ解散後はジャマイカをドン・レッツらと共に訪問したジョンのレゲエ嗜好である。
それがジャー・ウォーブルのベースラインから始まるP.I.L独特のサウンドにつながっていき、この手法は多くのミュージシャンに影響を与えたのだ。
ジャー・ウォーブルは饒舌に映画の中でも語っているが、彼が離脱した事がバンドには大きな痛手であった。
そして更なる痛手は、ギタリストキース・レヴィンの離脱である。
この大きな事件が、実は1983年日本での初公演と、因果関係があった事実も、僕は初めて知った。
過大な期待を持ち、何回も足を運んだP.I.Lの初来日公演。そこで感じた違和感の原因も、40年近く経過して、初めて理解する事ができた。
ファンとしては嬉しかった来日公演だが、バンドにとって、結果的に良かったのかどうか。
初来日時、六本木でジョンとパートナーのノラ、ドラムのマーティン・アトキンスに遭遇した。
「Quickly!Quickly!」と言いながら、写真とサインに応じてくれたジョン。撮影した写真を見ると、発するオーラは尋常ではなかった。
この三人は日本からの帰国後、同居生活を始め、結果マーティンとの関係は崩壊してしまう。
僕自身は1985年のP.I.L2回目の来日公演を観た後、徐々にP.I.Lへの関心は薄れていった。
それはバンドというより、ジョンのソロユニットのように変化していったP.I,Lから結成当初のスリル感が薄れていき、バンドとしての限界を感じた為だと思う。
P.I.Lは、日本公演の前にリリースされた3枚のアルバムが、やはり頂点だったのだ。

ジョン・ライドン@六本木

六本木で遭遇した際、常にジョンの横に寄り添っていた長身のノラ。
彼女とジョンの関係はその時から、現在まで変わらない。
これはロックスターにおいて稀有な事で、そこにはジョンの人間としての誠実さを強く感じる。
映画の中にノラは、過去のショットでしか登場しない。ノラとプライベートについては、言葉を濁すジョン。
最近ジョンはノラの認知症と介護について、発表している、想像するに撮影時(2017年)には、ノラは発症していたのだろう。
2010年義理の娘アリ・アップ(SLITS)が死去し、双子の孫もジョンとノラが育てていた。
そしてノラの発症。この10年バンド活動も再開し、日本や中東もツアーしたが、ジョンは大きな苦労をし続けているように見える。
バターのCFに出演し、バラエティー番組のレポーターや旅番組にも出ている。それはそれで彼の才能の新たな一面だったりするが、経済的な理由が大きいという事は、映画の中でも語られている。
映画の撮影後、ジョンの容姿は大きく変化している。察するにノラへの介護のストレスが容姿にも影響してしまったと思える。

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マルコム・マクラーレンへの不信感がトリガーになり、全てを自分で仕切ろうとするジョン。最近もセックス・ピストルズの伝記映画へのクレームを表明している。
このドキュメンタリーを見て、改めてジョン・ライドンの魅力と凄さを実感した。
合わせてカリスマも人間である事、そして限界があるという事も痛感した。
そしてP.I.Lが革新的ですごいグループだったという事を改めて認識できた。
セックス・ピストルズとP.I.Lがお好きな方は必見である。

https://youtu.be/7mSE-Iy_tFY

『ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン』
新宿K’s Cinema他全国順次公開&配信予定
■出演
ジョン・ライドン
ジャー・ウォブル キース・レヴィン ジム・ウォーカー
マーティン・アトキンス サム・ウラノ ピート・ジョーンズ ルイ・ベルナルディ
ジェビン・ブルーニ ジンジャー・ベイカー ルー・エドモンズ アラン・ディアス
ブルース・スミス(ザ・ポップ・グループ/ザ・スリッツ) ジョン・マッギオーク スコット・ファース
ジョン・ランボー・スティーヴンス
サーストン・ムーア(ソニック・ユース)
アダム・ホロヴィッツ(ビースティ・ボーイズ)
フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ) and more
監督:タバート・フィーラー
製作:ジョン・ランボー・スティーヴンス、キャメロン・ブロンディ、ニック・シュマイカー
2017 年/アメリカ/英語/105 分/カラー・モノクロ/16:9
配給・宣伝:CURIOUSCOPE
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